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青空のパレット  作者: あるみゃ
夏休みの後半で
17/29

招かざる客

「パパぁ」


少しぎこちない歩き方の少女。


少しぎこちない歩き方の少年。


二人は物心も無く、上手に喋る事もままならない小さな乳幼児。


この翌日に起こることなど考えもできなかったであろう。


この世に運命は存在する。そうでなければ、君とは出会えなかったから――

「暑いな……」

  まだまだ暑い日が続く夏休み。今日は昨日ほど暑くはないが、それでも暑い。

「アイス買いに行かない?」

  優が一つ提案を出した。

  それ昨日俺が言って却下したやつだろが……

「外に出たくない……」

  あいにく俺の心は暑さでストレスが溜まっているので何もしたくないのだ。

「じゃあ。私一人で行ってくる」

  待て待て待て待て!

「それなら俺も付いて行くよ」

  何せ外出先で汗に濡れて透け透けの服の優を狙いに来る人間なんてこの世に沢山いるからだ。

  そんな所に優を出せない。

「蒼太……目がエロい……」

  うん。考えすぎか。


「おばちゃん。アイス二本ください!」

  駄菓子屋に着いた俺たち、まず目的のアイスを頼む。

「はいよ。いつもありがとね蒼太くん」

  棒アイスと料金を交換し、俺は貰ったアイスを優に渡す。

「冷たいから気をつけろよ?」

  駄菓子屋内のベンチに腰掛け、並んでアイスを食べる。

「頭がぁっ!」

「だから言っただろうが……」

  優は足踏みして頭の痛みをこらえていた。

  冷たいものは原理は知らないが何故か頭が痛くなる。

  夏の風物詩といえばそうなるのだろう。

「おばちゃん! ガムちょうだい!」

  十円を手に持ち、走って駆け込んできたシャツ姿の小さな子供達。

「結構繁盛してるねここ」

  俺はおばちゃんにそう言った。

「ああ。あの時蒼太くんが宣伝してくれたおかげでお客さんが増えてくれてねぇ。本当に感謝してるよ」

  宣伝と言うより、棒アイスをいろんなところで食べていただけだが。

  それにここのアイスはおばちゃんお手製で結構美味しかったりする。

「冷たい……」

  優がそう呟いた。

  まあ。アイスだからな。

「って! こらっ! お前誰の食ってる!」

  あろうことか優は俺のアイスにかぶりついていた。

「溶けてたから……」

  そう言うとまたしても俺の持っているアイスにかぶりつく優。

  まだ俺一口も食ってないのに……

  優は俺のアイスを奪い去った。



「ただいま……」

  暑さに耐え、玄関のドアを開ける。

「ただいま!」

  絶望に浸っている俺とは裏腹に、優はすごく幸せそうだった。

「二人ともおかえり。お客さんが来てるわよ?」

  お茶の乗ったお盆を応接室に運んでいたおばさんはそう言った。

「お客さん? 俺たちに?」

  俺は自分に指を差しながら首を傾げる。

  少し期待が走った。

  この世界に生まれてきて、一度も見ず知らずのお客様なんて来たことがない。

「ええ。まあ、優ちゃんにだけど」

  俺は除け者か……

  そしてまたしても絶望の底に落ちる。

「……私に?」

「ええ。男の人よ」

  ま、まさか! お見合いか……?

  いやいや、落ち着け俺。お見合いは考えすぎだろ。

  俺は一人でそう思いながら首を振っていた。

  と、とにかく、応接室に場所を移そう。



「……こんにちは」

  優は応接室に入り、軽く挨拶した。

  座っている男性はよく見ると、中年のおじさんだった。

  少しホッとした。

「君が優か?」

  男性は第一声に馴れ馴れしく優を呼び捨てにした。

  何者なんだこの男……

「あなたは?」

  優が聞き返す。

  この後、俺はすごく聞きたくない言葉を耳にしてしまう。

「僕か? 僕は……」


「君の父親だよ……一緒に帰ろう……」


  俺の心の中はものすごい胸騒ぎでいっぱいになった。

  目の前に優の父親。優を捨てた張本人が居る。

「…………ふざけんなよ」

「は? なんか言ったかな?」

  俺の心は怒りでいっぱいだった。

「どんな大層で立派な会社のスカウトかと思いきや、父親宣言で一緒に帰ろうだ? ふざけんなっ!」

「何だっ! 年長者に向かってその口の聞き方はっ!」

「うるせえよ! 一度捨てた人間がどのツラ下げて子どもの前に来てんだよっ!」

「これは僕たちが決めたことだ! 第一、君に家庭内のことをあれこれ言われる筋合いは無いっ!」

  ブチっ! と言う音が何故か俺の耳に聞こえた。

「…………関係、無いだと。あんたそれ本気で言ってんのか? 一度捨てた人間が……家庭内だと?」

「なにっ?」

「優は紛れもなく俺たちの家族だっ! あんたは赤の他人なんだよっ! さっきあんたが言ったことをそっくりそのまま返してやるっ!」

  師匠に拾われた時から俺と優は兄妹なんだ。家族なんだよ。

「何も分からないくせに何を言う……」

  男性はそう呟いた。

「また出直そう。優、さっきの事は考えておいてくれ」

  男性はそう言い残すと、さっそうと去っていった。

「二度とくんなっ!」

  俺は狼の様に去っていく男を睨みつけていた。

「優。あんな奴には付いて行くなよ」

「………………うん」

  優は深く頷いた。

  しかし、何故か優の声の調子がおかしかった。

  久しぶりにあんなに吠えたような気がする……



「まあ、そんな事はどうでもいいんだが」

「くちゃんっ!」

  優が可愛い声で小さくくしゃみをする。

「優。何故――」

  俺は、タライの上でおしぼりを強く絞る。

「風邪を引いた……」

  俺は絞ったおしぼりを優しく優の額に乗せながら絶望に浸っていた。

「くちゅんっ!」

こんにちは! あるまです! 第二章(仮)に突入しました!

え? 何故(仮)なのかって? 章設定なんて全く考えてなかったからです。

今日から改めて作ることにするのでよろしくお願いします!


今話を読んでくれてありがとうございました! まだまだ続きますが、面白くない所とかあったら教えてくれると助かります。

応援よろしくお願いします!

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