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青空のパレット  作者: あるみゃ
悲しみの青
12/29

過去の思い

誰かを好きになるって……幸せ?

  蜩と蝉の音が鳴り止まない日の落ちた夕方の玄関で俺は葵の靴を見つめていた。

  それにしてもどうして葵が居るのだろうか。それとこの女性用の靴は何なのだろうか……

「これ……やっぱり葵のだよね……」

  優も葵の靴だと気付き始めた。

「蒼太……行くの?」

  優にそう言われると身体中に緊張感が走ってしまった。

「でもちゃんと会って話した方がいいよ……私も辛いから」

  優も俺と同じ辛さを味わってくれているようだ。

「ああ……行こう……」

  覚悟を決め、リビングへのドアノブに手を掛ける。

  深呼吸して一気にドアを開けた。

「おばさん。ただいま」

  普通にして行こうと俺は通常通りにおばさんに挨拶する。

「あらおかえり。丁度いいわね。夫のお友達さんが挨拶に来てるのここに座らない?」

  おばさんは自分の隣をポンポン叩く。

  テーブル越しには同い年くらいの少女と八十代くらいの女性が座っていた。

「この二人は夫が育てた子供達です」

「桜 蒼太です」

「柏木 優です」

  俺たち二人は一礼する。

「桜……くん?」

  少女はそう呟いた。

「葵だよ……覚えてる?」

  やはり葵だった。

「えーっと……人違いかと……」

  玄関で覚悟は決めた。なのに何故か自然とそんな言葉がこぼれてしまった。涙と供に。

  優は少しだけこちらを見たが、何も言わず前を向いた。

「そんな事ないよ……優ちゃんだってあの時から優しくしてくれたから……」

  葵は目に涙を浮かべそう言った。

「ごめんね……やっぱり人違いだと思う……」

  優も俺の話に合わせてくれた。

「そんな……」

  そう言いながら顔を下に向ける。

「ごめんなさいね……この子事故にあってから少しだけ記憶が消えてるの……」

  俯いている少女の左手を見てみるとやはり吊るしていた。

  その瞬間気付いた時には葵に抱きついていた。

  居ても立っても居られなくなったのだろう。体が「動け」と言っているかのように体が勝手に動いた。

「ごめん……本当は会いたかった……」

  後悔を吐き出すかのように俺は心の中の声を全て出す。

  自分でもあの一年間は逃げていたとしか思えなかったのだ。

  五年生のクラス替えを境に俺は登校したが、すれ違っても無視。屋上で話しかけられても寝ている振りをして全てから逃げていたのだ。

  目の前で友達が死にかけているのを助けれずに見ている自分から逃げていた。それが葵から避ける一番の理由だろう。

「ごめん……葵……」

  泣きながら震えた声で俺はそう言った。

「お礼を言うのはこっちだよ……あの時桜くんが抱きかかえてくれなかったら死んでたかもしれないから……ありがとう……」

  葵の声も震える。

「よかったわね……二人とも……」

  おばさんは俺たちより泣いていた。

「私の孫の胸をそれ以上触るのなら結婚させますよ?」

  葵の隣に居たお婆さんは笑いながらそう言った。

  俺は手の部分を恐る恐る見てみる。

  丁度膨らんだ部分に手が乗っていた。

「ち、違う! 違います! これは気付かなかっただけで……」

  俺はすぐさま後ろに下がり土下座する。

  あれ……ちょっと待てよ……

「そう言えば……葵の……お婆さん?」

「いかにも! 私が葵の祖母の柴田 陽光です」

「握手して下さいっ!」

  俺はすぐさま近寄り陽光さんの手を両手で握った。

  ちなみにもう握っちゃってます。

「始めまして。君が蒼太くんかい? 話は孫から毎日聞いてるよ」

  陽光さんは手を握り返してくれた。

「毎日?」

  そう言うと葵の顔がぼふっと燃え上がるように赤くなった。

「ちょっ! お婆ちゃんっ! それ言わないでよ!」

  葵が慌てふためく。

「どうしてだい? あんなに自慢してたじゃないか。『蒼太くんが凄く絵が上手いんだよ!』って」

「蒼太……くん……?」

  いや、確か葵は俺のことを『桜くん』と呼んでたような……

「わあああぁぁっ!」

  葵は今までで無いぐらいの大声で叫んだ。

「うぅ……お婆ちゃんの意地悪……」

  っは! 誰かっ! カメラをっ! カメラを持って来てくれっ! この可愛い顔をショットするぞっ!



「そう言えば、お婆さんって師匠の知り合いだったんですか?」

  数分間の雑談が続きやっと聞きたいことが聞けた。

「ああそうだよ。昔はいつも絵の才能を競ってたもんさ」

「師匠と陽光さんが?」

  なかなかに上位レベルの戦いだな。

「あの人は昔から負けず嫌いでね。私に負けると言い訳してもう一度勝負するんだよ。でもほとんど私が勝つんだけどね」

  俺は師匠に似たのかもしれない。特に負けず嫌いの所が。

「もしかして……陽光さんって師匠の恋人さんだったんですか?」

  おばさんの前で言うのは悪いけど聞いてみたかった。

「ええ。まあそうね」

  おばさんが信じられないような顔をしている。

「でも別れて、今の奥さんが出来た時私に一番に言って来たわ。『この奥さんを絶対に大切にする』って」

  おばさんが安心した顔色に変わった。


「さてと。私らはもう帰るよ」

  ちょうどいい場所で話が止まったぐらいで陽光さんは立ち上がった。

「どうするんだい、葵? まだいるのかい?」

「……え? あ、うん。もう帰るよ?」

  少しだけ迷った葵は決断したようにそう言った。

「そうかい……じゃあ。帰ろうか……失礼しました」

  陽光さんは俺たちに一礼して部屋から出て行った。

「ねえ……桜くん!」

  部屋を出る陽光さんの後ろに居た葵が俺を呼んだ。

「何だ?」

  いきなりだった––––

「––––んっ!」

  俺が葵の方見た瞬間の一秒間の時間で。

「ななな、何を!」


  葵にファーストキスを奪われた。


  口を抑える俺を訴えるように信じられない目で見つめる優。

  俺も何が起こったにか上手く掴めず頭が混乱する。

  そんな俺を見る葵はその後に

  ––––こう言った。

「……ずっと好きでした」

  笑ながらそう言い残した葵は家から去って行った。

  過去形の告白だった。

  恋愛感情など一切無かった俺にとって痛恨の一撃だったのか、俺は頭がパンクして気絶してしまった。

みなさん! 久しぶりです! あるみゃです!

長らくお待たせしました! 次話を更新しました! いやー久しぶりですね

ちなみに前回の投稿作品を見てみると悲惨なことに誤字・脱字が多かったです。誠に申し訳ありません。今度からはちゃんとします。

ちなみに祝ブックマーク二人。二人……(泣)

ブックマークしてくれた人ありがとうございました!

あと、見てるか分かりませんが、キリタニさん通販サイトありがとうございました! いい手袋が買えたおかげでおかげで冷え性の手がかじかまずにすみます。


今話を読んでくれた皆様! ありがとうございました! まだ続きますがよろしくお願いします!

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