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青空のパレット  作者: あるみゃ
悲しみの青
11/29

運命の最期

その予言書の続きが白紙なら……俺が……代わりに……

  その後も少女は成長した。

  俺も全国百位以内には入れるぐらいの実力は持てた気がした。

  あれからもう六ヶ月は経ち、冬のコンクールを控えた二ヶ月前。

「そう言えば名前聞いてなかったな……」

  いつも通りの昼休みの庭園。

  少女は絵を描いていたが、俺は芝生に寝そべっていた。

  出会ってから六ヶ月。名前のことなど完全に忘れていた。

  別に名前を呼ばなくてもあまり困らなかったからだろう。

「知らない人に名前を聞かれたらまずは聞き返せってお母さん言ってた……」

  そこら辺はしっかりしてるんだな。てか知らない人じゃないし……

「俺の名前は桜 蒼太だ」

  まあ、先に名乗るつもりだったのである意味丁度いい。

「十六夜 葵……よろしく……」

  名前を聞いた瞬間。庭園の屋根を支えている鉄骨に白いワンピースを着た少女が目に写った。

  即不思議に思ったことは、この庭園は大ビニールハウスみたいものなので、室内で鉄骨に座ることは絶対に出来ない。ということは、外に座っているということのなる。

  だがしかしここは屋上なので、登る所なんて一つもないはずだ。

  まあ学校なので幽霊の一人や二人は居るだろう。と思ったが、あの少女は不自然にも笑いながらこちらを見ていた。

  まあ偶然だろう……

「何て呼べばいいかな……」

「葵でいいと思う……」

  気まずい。名前を知って一分も経ってないのにどうしてこんなに気まずいんだ。

  何か話題を出さなければ……

「葵はどうして絵を描こうと思ったんだ」

  今頃! 出会ってから六ヶ月も経って今頃そんな事を聞くのか俺はっ!

「それは……」

  葵は俯いて深刻そうな顔をする。

「あ、あー。話したくなかったら別にいいよ」

  どんだけ重い話なんだ……

「昔……死んだお婆ちゃんが私に絵を描いてくれたの……大好きなお婆ちゃんだったから絵を大切にしようって決めた」

  死んだお婆ちゃんが出て来ちゃったよっ!

「お婆ちゃんが私に絵を渡してこう言ったの絵は人の心を掴むって……」

  合ってるよその心。

「でもお婆ちゃん次の日に死んじゃったの……」

「それで絵を描こうと思ったのか……」

  涙が出そうだ……

「うん……」

  お婆ちゃん……ありがとう……

「……嘘だよ?」

「嘘なのっ!」

  返して……俺の涙……返してっ!

「うん……今はお婆ちゃんピンピンして絵を描いてる」

  それも最初から嘘なのか……

「お婆ちゃんも絵を描いてるのか?」

「柴田 陽光って言う有名画家」

  ヨウコウ……ようこう?

「陽光っ! 陽光ってあの?」

  今頭の中で大分迷ったけど、陽光って言うのは世界中を駆け回る有名画家で俺にとって憧れの人だ。

「うん……で絵を始めた理由がお婆ちゃんのさっき言った言葉……」

  さっきとなると『絵は人の心を掴む」か……

  流石大の画家一つの言葉で人を変えてしまうくらいの実力を持っている。

「それなら葵は一流の画家になれそうだな」

  そんな事を笑いながら言う。

「……うん! 頑張る!」

  葵は満面の笑みで頷いた。

  それから丁度良くチャイムが鳴り俺は起き上がって伸びをした。

「さてと行くか!」

  歩き出そうとすると葵にまたしても服を掴まれた。

「ちょっと待って……そのまましゃがんで欲しい……」

「……え?」

  そんなびっくりした声で言うも俺は言われるがままにその場で屈んだ。

  すると葵は俺の頭の上に手をやった。

「ちょっ!」

「動かないで……葉っぱが付いてる……」

「葉っぱ?」

  俺の目の前に取った葉っぱを見せる。

「あ、ありがとう……」

  機から見たら何をやってるんだと思われそうで少し恥ずかしかった。

「てか早く行かないと遅刻するぞ!」

  時すでに遅し。と言わんばかりにチャイムがもう一度鳴り響いた。

  急いで道具などを仕舞いそのまま持って走る。

  なんとなく思うが、絵の具は結構重たい。

  それに台や画板も付いているのでで非常に手が疲れる。

「……少し持とうか?」

  何てことは聞かれるが。

「い、いや大丈夫だ」

  と軽く返す。

  本音は、ここで女子に持たせると男の名が廃る何て事を思っている。

  何て事を思っていたのがつかの間。

  階段に足を滑らせ思い切りこけてしまった。

  怪我などは一切ないがこっちもこっちで大分廃っている気がする。

「……大丈夫? ……やっぱり持とうか?」

「お願いします……」

  廃った。

  やっとの事で教室に着く。

  そして堂々と教室に入るという本物の男だと見せびらかそうと教室の扉を開けた。

「すみません! 遅れますた!」

『すた』だけに廃った。

  教室内は笑いの渦になった。

  先生は俺に近寄り出席簿で頭にクリーンヒットさせる。そしてクリティカル。半端なく痛い。

「二人とも早く席につけ!」

  その後何故か俺だけ叩かれ先生は教卓へと戻って行った。

  翌日の昼。

  いつも通りの屋上。いつも通り芝生の上でおやすみタイムを満喫しようと欠伸をしながら再奥まで歩くと葵が居る。それだけなら別に違和感がなかったのだがその隣には。

「何やってるんだ?」

  絵を描く白髪の学校の花がそこの居た。

  左手を曲げて膝の上に置き、右手で筆を持ち慣れた手つきで何度見てもムカつくような上手な絵を描く優。

「絵が描きたかっただけだもん!」

  いつもはお淑やかな優は何故か今日はご立腹のようだ。

「昨日ここで何やってたの?」

「ここでって……寝ながら話してただけだが……」

  今日は漁師が鯛を獲る絵を描いているようだ。見ると何やら波などが凄く荒っぽく本当に動きそうな勢いだ。

「嘘だよ! ここでイチャイチャしてるの見たもん!」

  昨日の見てたのか……

「頭に付いた葉っぱ取ってもらってたんだ」

  何とか誤解を解かねば……

「それに……この頃一緒に帰ってくれないし……」

  まさかの嫉妬っ!

「いや、その、あれだな! えーっと」

  ダメだ。頭の中がゴチャゴチャで言葉にならない。

「ほらその……葵に絵を教えてたんだ!」

  よし! やっと言えた。

「蒼太が絵? ふーん蒼太が……」

  何そのじとーとした目。俺に絵の才能が無いと言っているような目じゃないか……

「まあ。別にいいや! 蒼太のこと全く好きじゃないし!」

  あ……好きじゃ、無いんだ……

  てか何で怒られたんだ……俺……

「それはそうと蒼太。コンクールの絵は出来てるの?」

  忘れていた。コンクール事態を忘れていた訳ではなく、葵の絵を完成させるために俺は付きっ切りで教えていたので自分の絵を完全に忘れていた。

「まあ。いいか。別に私さえ出来てればいいし」

  今日の優なんか怖いっ!

「じゃ、私は教室に戻るね。ここの絵描き終わったし!」

  優はそう言いながら荷物をまとめ屋上から去って行った。

  ここの絵じゃ無いよね?

「……知り合い?」

  葵は首を傾けながら不思議そうに聞いた。

「あれが知り合い以外の何に見えるんだ……」

  そう言いながら疲れた表情を隠しきれず頭を下げてしまった。


「えっと……その……」

  それからしばらくして俺たちは昨日と同じ行動をしていた時、葵が恥ずかしそうに言った。

「どうした?」

  俺は天井を見ながら答える。

「その……空いてたらでいいんだけど……これ……一緒に言ってくれないかな……」

  俺はそれを確認する為に横を向く。

  するとそこには顔を赤くして俯く姿の葵がいた。その手には何かのチケットが二枚あった。

「その……日曜日なんだけど……いいかな……」

  チケットをよく見てみると美術館の物だった。

  少女に上目遣いで頼まれたらもう行くしかないでしょっ!

  理由はただ一つ。

  可愛いから。

「ああ。喜んで行かせてもらうよ」

  喜んでは余計だね。喜んでは。

「ありがとう! 一人じゃ不安だったから……」

  葵はほっと一息という感じで胸を撫で下ろす。

  なんて可愛い笑顔なんだろう。と思い浮かべると何故か優の顔が頭に浮かんだ。笑える。


  これが最後の葵との学校だった。とは思いもしなかった。


  待ち遠しいので視点を太陽に向けてそのままハイスピードで一直線に走る。

  そして視点を戻すとあら不思議日曜日の午後九時半待ち合わせの駅にだーいへーんしーん!

  笑える。


「ごめん……待った?」

  葵は待ち合わせ時間を少し遅れて到着した。

「ううん。待ってないよ!」

  本当にこの子小学生ですか?

  てかこの時代本当に少年時代ですか? てなほど可愛いです。

「そう言えば何の美術館なんだ?」

  交差点の横断歩道を渡りながら俺は後ろから付いて来ている葵に聞いた。

「うちのお婆ちゃんの展覧会……」

「陽光さんのっ!」

  またしてもテンションが大幅にアップする。

「うん……そうだよ? お婆ちゃんに桜くんのこと話したら二人で行って来なさいってチケット貰ったの……」

  お婆ちゃん。ありがとう。

  交差点の車道の後少しのところで、俺は目の前に立ち尽くしている少女に気付いた。

  あの時屋上の天井を部分に座っていた白のワンピース少女だった。

  それからいきなりのことだった。

  後ろの方でキュインという鉄に何かがこすれるような音が俺の耳に爆音のように轟いた。

  それと同時に背中から左頬にかけて生暖かい液体がかかった。

  すると横断歩道を渡っていた一人の女性が鉄音のような悲鳴をあげる。

  俺は振り向かせたくない体を全ての力を使って振り向かせた。

  そこには––––


  絶望しか見ることが出来なかった。

  軽トラックの周りには血が流れていた。

  そのタイヤ部分に葵の手が挟まった状態で横たわっていたのだ。

「嘘……だろ……」

  声にならない声で俺は一言そう言った。

「なぁ……お前は……葵じゃ……ないよな?」

  そう言って葵を抱きかかえる。

「何か言ってくれよ……答えないと……分からないよ……?」

  頬に付いた血が涙によって薄まる。そのまま葵の頬に落ちる。

「葵ぃぃぃぃぃっ!」

  俺は体全体の力を使って上を向き叫んだ。

  そこからのことはよく覚えてない。

  ただ一つ覚えているところは––––


  ワンピース少女がこちらを見て笑っていたことただ一つだ。


  その後奇跡的に葵は一命をとりとめた。理由は俺が抱きかかえた時にずっと傷口を抑えて血を止めていたかららしい。だが左手には麻痺という後遺症が残ってしまったらしい。

  事故原因は機械の誤作動だった。

  俺は一年くらい家に引きこもった。


こんにちは! あるみゃです!

今話も読んでくれてありがとうございます!

みゃんたろうさんにも相談したんですが……

「よし! このままで通そう」って怒った表情で言われました(泣)

それでもあるまさんはがんばって書きました。

まあ横に居るんですけどね。

と言うわけで次話でまた会いましょう!

続けば……

でわまたいつか!

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