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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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ついに動き出す!

次の日の夜、ついに鍵が開けられる時が来た。


あれから俺達は、今日の夜のことについて長々と話し合いをしてリハーサルまでした。

だから大丈夫だと思うのだが、かなりドキドキしていた。


「大丈夫だ。百年もずっと考え続けて来た計画だ」

「・・・・のわりには、かなり簡単だな」

「ふんっ、今更生意気を言うな。ガキが」


「お前にガキなんか言われる筋合いはない。

こんなことがなかったら、お前なんかを頼らないのにな」


「準備をしておけ。もう直ぐ警備員が来るぞ」


俺は、深いため息をついて座った。

なんだか落ち着かなくて、ずっとウロウロしていたのだ。


瑛雅の言葉どおり、数秒後、警備員がやって来て自然と手を握る。


瑛雅から色々聞いたのだが、

神の世界は、地獄のように苦しい魔界の牢獄よりも酷いらしい。


しかし、どんな酷いことをするのかはわからないらしい。

なぜなら、神の世界の罰を受けて、生き残った者はいないからだ。


そう言うことを聞かされると、自然と体が強張る。もし、捕まったら・・・・。


そんなことを考えている間に鉄格子を開けられて、警備員に腕を摑まれる。

そして、そのまま外に連れ出されると手錠をかけられ、

腕を引かれて瑛雅の閉じ込められている牢屋の方に連れて行かれる。


右腕でしっかり俺の腕を摑んで、左手で鍵を開けている。

普通なら抵抗をするから、最低でも一人につき一人を付き添わせるだろう。

しかし、警備員は一人だ。

なんでこんなに余裕があるかは、きっと監視カメラにあるのだろう。


監視カメラからは、常に数人の警備員が見張っていて、

少しでも不審な動きをした場合は警戒モードに入る。

警戒モードになった途端、部屋中に毒ガスが発射されて、死に至る。


その場にいる警備員はどうなるのかと言うと、それは、警備員の実力次第だ。


いくら神と言えど、不可能なことをしようとするバカはいない。

だから、警備員が一人で来たのだろう。


「下手な抵抗はするなよ。下手な動きをした途端、お前らは毒ガスの餌食になる」


「それを言うなら同じことだろうよ、警備員さん。

その様子だと、強がってはいるが、ペーペーのようだな。

だから、お前も俺達と一緒に死ぬのさ」


「くっ・・・・」


警備員の表情が引きつる。さすが、百年も警備員を見続けて来た奴だ。

直ぐに初心者かベテランかわかるようだ。


「いいのか?そんなことを言ったら、すぐさま毒ガスを出すぞ」

「ふんっ、勝手にしろ」

「クソ生意気な奴だ」


俺がそんな風に会話をしている間に、瑛雅が警備員を襲う。

と同時に、サイレンのような音が鳴って、

廊下が騒がしくなったと同時に、ガスが噴射された。


「おいっ、話が違うじゃないか!

毒ガスは噴射されないように細工をしておいたんじゃないのか!?」


「何か手違いが起こったようだ。この足音の数だと数百人はいるぞ。

そんなに沢山の相手をしている間に死ぬぞ?」


「仕方ない・・・・俺は、そう言う技術がないから、お前に任せる。

俺は、お前の邪魔をしないように、この場で警備員を倒す」


「しかし、この毒の中だぞ?どうやって切り抜ける?」


「バリアを張るしかないだろうな。今もバリアを張っている。早く解除してくれ」

「何分持つ?」

「知らん!」


俺は、防護マスクをして迫って来る神を、俺達の部屋に入れまいと思っていた。

絶対に、こんなところでは死んでいられない。そう思っていた。

だから、絶対に生き延びる。その為に、あいつに託したんだ。


大きく息を吐くと、神達に向かって突進して行く。

殺さない程度に倒していくけれど、無限に湧いて出て来るようで、尽きる事がない。


なにより辛いのは、妖気のバリアで自分を守りながら、

何百と言う敵に立ち向かうことが一番の苦痛だった。


息が苦しくなって来て、体が鉛のように重い。

何人の神を倒したかはわからないが、無限に出て来るのは事実だ。


そろそろ倒れそうになった時、瑛雅が走って来て、俺の襟を摑み、引きずりながら走る。


「解除に成功した。今すぐ天井窓から出るぞ」


「これって、意味があることだったのか?

解除しなくても出て行くことは簡単だったんじゃないか?」


「・・・・それを言うな」

「随分リハーサルと違ったな。おかげで死にそうだ」


引きずられながら、後ろから追いかけて来る神達を眺める。

視界がボヤけて見えにくいけれど、何とか相手は見えている。


「・・・・悪いな、ガキに無理させて」

「ガキガキ言うなって言ってるだろ?それに・・・・」


俺がそう言いかけた時、突然、瑛雅が俺の襟から手を離した為、

思い切り地面にぶつかる。しかし、大した痛みもなかった。

きっと、体が麻痺しているんだ。そう感じた。


「おい、どうした?」


「あれは毒ガスと言うより、痺れ薬のようだな。足が急に動かなくなった。

俺のことはいいから、お前だけ行け!」


「・・・・」


俺は無言で、地面に倒れている瑛雅を肩に担ぐと、走り出す。

俺の体だって限界に来ている。だが、ここでこいつを置いていけない。


「どうして・・・・」


「『助けるのか?』なんて、当たり前のことを聞くな。

こんなべたな展開で、そう聞く愚か者はいない」


「ふんっ、生意気なガキだ。だが・・・・」


俺は、天井窓から出ることは不可能だとわかっていた為、

廊下の突き当たりの大きな窓に体当たりをして、そのまま落下した。


ここは、人間界のビルに例えると、八階ぐらいの高さだろう。

そんなところから落ちたら、打ち所が悪かったら妖怪と言えど死ぬ。

しかし神は、まだ俺が死ぬことを認めていないようだった。

地面にぶつかる直前に、何かに服がひっかかり、宙吊りになったのだ。


「お前、運がいいんだな」

「違う。運が悪いんだ。こんなところで助かったって、ろくなこともない・・・・」


「助かっただけ感謝しろや」

「・・・・来る」


俺は、とっさに神の気配を感じて地面に飛び降りると、動けない瑛雅の前に立つ。


「迎えうつ気か?」


「お前は先に行け。お前なら、幸明の居場所を知っているだろう?

だから、魔光霊命を助けることが出来る。だが、俺はそれが出来ない。

なら、それが出来る奴をサポートするしかないんだ」


「・・・・チッ、ガキに助けられるとはな」

「助けたつもりはない。ただ、絶対に魔界を救え。でないと、死んだ時に呪うからな」


俺は、神達が迫って来る方向を向いたままそう言うと、大きく深呼吸をする。


あいつはもう、あんまり動けない。

だから、あいつがここから出るまで、俺がここで時間稼ぎをするしかないんだ。


最初はあそこで死ねないと思ったが、今なら死んでもいいと思った。

いや、俺の意思が死にたくないと言っていても、この状況では死ぬしかないだろうな。

朦朧とする意識の中で考えられたことは、一つだけだった。

とにかく、あいつがここから出ることを手助けすること。それが一番大事だ。


それだけを思って、死にそうな体を動かすけれど、相手は何百人。

そして、ピンピンの奴だった為、いくらこちらが強かろうが、不利だ。


突然、腹に激痛が走る。何をされたかはわからない。

ただ、もう、動けないことはわかっていた。


全く動かない俺を見て、神達は何を思ったのか、俺のことをどこかに運び出す。

きっと、これからが本当の地獄の始まりなんだと、俺の勘は告げていた。


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