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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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一生役に立ちそうにないことでも、極限状態だと、大いに役に立つことがある。

「全く、本当に最低だわ、本当」


僕は、ため息をつきながら、倒れている神達を見下ろす。


「これ、当然の報いだよね?

君達は、僕らが殺しあってるのを平気で見てるのに、

自分達がやられるのは耐えられない。それって、最低じゃない?」


「なっ、なぜ、戦闘種族の族長が・・・・今すぐ幸明様に・・・・」


僕は、すぐ近くに立っている司会者からマイクを奪うと、思い切り怒鳴った。


「ふざけんなっっっ!!!!」


僕の声に、今までザワザワしていた雰囲気が静まり返り、僕は笑みを浮かべる。


ここで少し、僕のいる場所を詳しく説明しよう。

僕は、亜修羅と別れてから、ドームのような場所に入って羽交い絞めにされた。

そして、その羽交い絞めにして来た奴らを倒して、

追いかけて来る神達から逃げるべく、暗い奈落のような場所に逃げ込んでたんだけど、

突然地面が持ち上がり、照明を当てられた。それはまさに、ステージの上かのように。


そして、僕の想像は当たっていた。

なぜなら、僕の直ぐ近くにマイクを握って唖然としている司会者の姿があったんだ。


僕は、上にあるスクリーンを見て、亜修羅の言っていた言葉を認識し、

走ってステージに上って来た神達をKOしたと言うことだ。


そして今、司会者のマイクをふんだくり、怒鳴ったと言う訳だね。


みんなが静まり返り、僕のことを恐れた目で眺める。当たり前だろうね。

僕は、妖怪の中では一番強い妖怪。神ですら手に負えないことも多いと思う。


「って、言ってもいいかな?みなさん!」

「なっ、なっ・・・・」


「みなさん、今までずっと見て来たでしょ、僕のこと!

サインなら書いてあげますよ~」


「いっ、意味がわからない、とにかく、幸明様に・・・・」

「そうだな、怒っていない時に・・・・」


そう言うボソボソと言う声が聞こえて、僕はそちらに目を向ける。


はっきり言うと、怪我を負わせるだけじゃ物足りない。

それだけ物凄い怒りが僕の中で渦巻いてる。

でも、ここで殺しちゃったら、自分の決めたことに背くことになる。

それは嫌だった。だから、我慢してふざけてみた。


決して怒ってない訳じゃない。怒りを表に出さないだけなんだ。


「怒ってないって、誰が言った?」


突然の声の変化に、会場の空気が凍りついたのがわかった。


ふざけんな!って叫んだ時よりも、会場の雰囲気がまずくなったのがわかった。

当たり前かな?少し怒りを表したから。


「お前らの自分勝手に付き合わされて死んだ人のことを思うと、とても悲しくなる。

そして、神なんてクソだと思う。どうだ?反論出来るか?」


「・・・・」


「そうだよな。そう言うことだ。もう、種族争いなんて二度とするな。

・・・・いや、今年でこの行事をやることが不可能になるだろう。なぜなら・・・・」


僕は、そこで言葉を切ると、考え込む。どうしよう?何もわからないのに。


「とっ、とにかく!もう、やめさせる!もう、この戦いは繰り返させない!

覚悟しとけ!以上!!」


僕は、半ば逃げるようにその場から離れると、そのままドームの外に出た。








「ん?」

「・・・・いたたたたっ、ああっ、体が悲鳴上げてますよ・・・・」

「そっ、そうだな・・・・ギシギシ言ってるぞ」


僕らは、コンクリートのような冷たい床の上に倒れてるんだけど、

体を思い切り打ちつけたようで、起き上がるのも一苦労だ。


「ここ、どこなんだよ?」

「ここは、神域と言う、神のみが住むことの出来る世界です」


突然後ろから聞こえて来た声に、僕らは体が痛いことを忘れて飛び退いた。

けれど、その人物の正体を知って、大きくため息をついた。


「あっ、魔光霊命様!」

「お前、知ってるのか?こいつの正体」

「ええ、魔界の神様ですよ!」


「そっ、そうなのか?」

「ええ、だって、そうですよね?」


神羅さんは、魔界に住んでいるのに魔光霊命様のことを知らなかったようで、

僕は逆に驚いた。


だって、普通は知ってると思わない?

僕が魔光霊命様に話振ると、魔光霊命様がうなずいた。


「私は今、閉じ込められているのです」

「ああ、知ってるぞ。見てもわからない奴はいないだろ?」


「神羅さん!神様なんですから!

そんな失礼なことは言ってはいけません!」


「いいえ、今の私は、神でもなんでもありません。

この牢屋の中に閉じ込められてしまっては、意味がないのです」


「なるほど・・・・鍵ですか」


僕はそう思って、不意にポケットの中を探す。今の僕の姿は、制服のままだ。

だから、もしかしたら入っているかもしれないと思ったんだ。


「あっ、ありました!」

「なっ、何があったんだ?」

「これで、魔光霊命様を外に出すことが出来ますよ!」


「鍵でも持ってるのか?」

「いえ、ヘアピンです!」


僕が取り出したヘアピンを見て、神羅さんが首をかしげる。


「なんだ、それ?」


「これは・・・・まぁ、説明はどうでもいいです!

僕、閉じ込められた時に出られるように、鍵開けの技術を持ってるので、

きっと大丈夫です!」


「出来るのか?そんな細い棒みたいなので?」

「大丈夫です!・・・・あっ、よいこのみんなは、真似しないでね!」


僕は、一応そう言うと、

ヘアピンでは開けるのに時間がかかりそうな鍵をガチャガチャやりだした。


「おい、変なことをしない方がいいと思うぜ?」

「そうです、お名前は分かりませんが、人間さん」

「あっ、僕の名前は、桜木明日夏と言います。よろしくお願いします」


僕は、鍵をじっと見たまま魔光霊命様に挨拶をすると、再び口を閉ざす。


これは、本当に究極の場合にしか出来ない。

なぜなら、僕の教わった方法は、一回手段を間違うと、

本物の鍵ですら開けられなくなってしまうんだ。

そんな方法あるのか?って思うと思うんだけどね、

世の中には、色んな不思議がうずまいてるんだよ。


「おい、まだ・・・・」

「神羅さん、静かにして下さい」


僕の言葉に神羅さんが黙り込む。自然と殺気立ってしまっていたようだ。

だって、それぐらい難しいことなのに、他から色んな言葉を言われたら、

イライラするんだもん。


それから三十分後、カチッと言う音がして扉を引くと、鉄格子が開いた。


それには、今まで半信半疑だった神羅さんも驚いたようだ。

開かれた鉄格子と僕を見比べては、首をかしげている。

魔光霊命様も信じられないのか、動き出そうとしない。


・ ・・・そんなに信じられないでしょうか?

僕がため息をついていると、魔光霊命様が微笑んで、牢屋から出て来た。


「ありがとうございます。人間、桜木明日夏」


「はいっ、僕は、みなさんみたいに戦闘能力がないので、

これぐらいのことが精一杯なんです・・・・」


「いいえ、大した能力だと思いますよ。本当に助かりました。ありがとうございます。

それでは早速、魔界を助けに行きましょうか」


「あっ、あの・・・・それってどう言う?

それに、修さん達を探してた途中なんですけど・・・・」


僕がそう言い出した途端、魔光霊命様がハッとした顔をして、僕の顔を見た。


「その二人なら、私が神域に呼びました。

直ちにその二人を助け出さねばなりませんね」


「そうなんですか?それなら、早く探し出しましょう!」

「ええ、それでは、早速行きましょうか」


魔光霊命様はそう言うと、意気揚々と外に出た。


「こうして日の光を浴びるのは二十日ぶりですね。ありがとうございます」

「いえいえ、魔光霊命様、お礼を言われるまでのこともございません」


「神と言っても礼儀は必要です。何か、して欲しいことはないでしょうか?

私は一応神ですから、なんでも出来ますよ?」


「それなら・・・・」

「あの・・・・魔界の時間を止めて下さい!」

「なっ、なんだよ、それ?」


意味のわかっていない神羅さんを遮って、僕は続ける。


「こうしている間にも、幾多の命が奪われます。

だから、時間を止めてさえいただければ、その時点で時間が止まり、

殺し合うことがありません。だから!」


「それで満足なのですか?」

「はい。ですよね、神羅さん!」

「あっ、ああ、そうだな!」


やっと僕の言葉の意味がわかったようで、神羅さんが大きくうなずいた。


そんな僕らの様子を見て、魔光霊命様は微笑むと、歩みを止めて一言言った。


「天命様、どうか、魔界の神、魔光霊命の言葉に耳を傾けて下さい。

そして、その願いを聞き入れて下さい」


そう言って、魔光霊命様は手を合わせると、深く礼をした。


僕らは、何が起こっているのかわからないけれど、とりあえず黙る。

何かが行われているのかもしれないと思ったんだ。


それから数秒後、魔光霊命様は頭を上げて、大きくため息をついた。


「これでもし、私の願いが聞き入れられたら、魔界の時は止まります。

どうか、祈って下さい。私と一緒に・・・・」


そう言われて、僕らも手を合わせると、深くお辞儀をした。

どうか、魔界の時を止めて、これ以上多くの命が奪われませんように・・・・。


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