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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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神域

「全く、なんなんだ!」


イライラしながらびしょぬれの体を振るわせる。

やっぱり、ここは動物性が出てしまう。

誰もいなかったりすると、体を震わせて水を飛ばしてしまうのだ。


前に湖に落ちた時にそうしてしまって、

変な奴を見る目で見られた為、気をつけていたんだ。

しかし、今は誰の気配も感じない為、ついやってしまったのだ。


さて、まずは何が起こったのかと言うと、

あの意味不明な草原を歩いていると地面に飲まれて行き、何も見えなくなったのだが、

突然足が宙に浮いたかと思ったら、体まで全て宙に出て顔が外に出た時、

自分がでかい湖の上に落ちてるんだなって知った。


しかし、その時になってはもう抵抗の出来ない高さまで来ていて、

有無を言わさずに落下したと言う訳だ。


ため息をつきながら湖から陸に上がった時、

何かの気配を感じて、俺は直ぐ近くの樹に身を潜めた。

息を止めて自分の気配を殺しながら、そっと様子を覗いてみた。


「どうした?」

「いや・・・・聖なる泉に何かが落ちる音がしたんだ」


「そんな訳ないだろ?神域の中でも、最も聖なる力が強い場所だ。

誰も踏み入ることはしないだろう。

例え、そんな無礼な者がいるとしても、幸明様が正体を突き止めて抹殺するだろう。

大丈夫だ。気にすることはない」


「そうだな。よく思えば、カンテス湖は聖なる者しか受け付けない。

例え入っても、害のない者なのだろう」


そう言う話が聞こえた後足音が遠退いた為、

俺はゆっくりと息を吐いて、そのまま奴らの後について行く。


それにしても、奴らの風体は変わっていた。

なんだか、白色を基準とした色使いの、長めな服をまとっている。

あれは、ローブと言うのか?あんまり人間界で着ている奴を見たことがない。

そして、足にはサンダルのようなものを履いていて、武器に槍を持っている。


そして何より、あいつらの気が不思議に思ったのだ。


人間のように何も感じない訳ではないが、妖怪のような気を感じる訳ではない。

妖怪の気とは違う気をまとっているのだ。


それにしても、奴らの言っていた言葉が気になる。確か、神域とか言っていた。


・・・・神域?


その時、急に後をつけていた奴が振り向いた為、慌てて茂みに隠れる。

そして、答えを出した。


ここは、神の住む世界なんじゃないのかと思った。

神域って、そんな意味じゃなかったか?それだったら話がわかる。

神だったら、妖怪とは違う力を持っていて当たり前だ。

そして、その異様な風体にも話がつく。


「どうやら、後ろから誰かに付けられているような気がするんだが・・・・」

「そうか?私は何も感じないぞ?」


「いやいや、絶対そんなことはないぞ。

なんだか、我々とは違う気を持つ者の気配を感じる」


「そんなことある訳ないだろう?

神域は、我々神に仕える者と、神しか入ることが出来ない。

もし入ることが出来たとしても、その時点で幸明様にバレてしまうだろう」


「だよな」


そんな話をしながら、目の前の大きな門のインターホンを押した。


いや、インターホンとは言わないんだろうが、

俺が知っている言葉では、インターホンが一番近かったのだ。

そもそも、名前は違っても、意味は同じものだろう。なら、そんなのはどうでもいい。


しばらくすると、大きな門が勝手に開いてそいつらは中に入って行く。

俺も、慌てて茂みから出ると、その門の中に入って行った。


なぜ、こいつらについて行くのかはわからないが、

こいつらについて行けば、何かがわかる気がしたんだ。

何も知らない世界で一人動くよりも、

少なくともこの世界のことを俺よりは知っている奴らを追った方がいいと思ったんだ。


門の中に入って一番最初に見えたのは、屋敷ではなく、大きなドームだった。

まさかとは思ったけれど、つけている奴らがその中に入って行く為、

俺も中に入ったのだが・・・・。


「そこの者、しばし待たれよ」


そう呼び止められて、慌てて止まる。

こいつらの気と俺の気が違うのは、いくら鈍感な奴でも気づくはずだ。

そして、服装も違うのだから・・・・。


「なぜ、そのような風体をしているのだ?」

「・・・・」

「怪しい奴だな。少しこっちに来い」


俺は、仕方なくそいつに従う。下手に抵抗して、困るのは俺なんだ。

相手の強さがわからない以上、下手に抵抗するのはよした方がよさそうだ。


そいつに連れられて入った部屋は、

拷問部屋みたいな雰囲気が漂っている、いかにもマズそうな感じの部屋だった。


その部屋の真ん中に、人間界の警察官に似た服装をした奴がいて、

俺のことを見ると、何か変な機械で俺の検査を始めた。


何をされているのかわからないが、とりあえずまだ抵抗をしない。

本当にマズそうになったら、暴れればいい。


一分ぐらい、俺の体全体にその機械を当てた後、何かボタンを押した。


すると、その警察官が驚いた顔をして、慌てて俺の横に立って、

しっかりと腕を摑んでいる奴の方にその機械を見せる。


すると、俺のことを今まで物凄い力で摑んでいたそいつの手から力が抜けて、

慌てて俺の目の前に回り込むと、勢いよく謝り出した。


「申し訳ございません!」

「・・・・何がだ?」


「私としたことが、上級神者様の腕を摑み、

風体が異様だからと言って、このような貧相な場所に連れ込んでしまいまして・・・・

申し訳ございません!」


「いや、別にいいんだが。それより・・・・」


俺が、そいつに上級神者と言うものの意味を聞こうとした途端、

勢いよくそれを遮られる。


「ありがとうございます!しかし、このままでは私の面目が立ちません。

どうか、付添い人にしていただけないでしょうか!」


「あ・・・・ああ」


「ありがとうございます!それでは早速、お召し物をご用意いたします。

そのままの格好では、上級神者様とは思えませんので、

私のような無礼者が出る可能性がございます。

ですから、是非、着替えることをお勧めいたします」


「ああ。じゃあ、そうしてくれ」


俺がそう言うと、そいつは足早に去って行った。

俺は仕方なく、残された警察官に話しかける。


「どうして俺は、その、『上級神者』とかに分類されるんだ?

そもそも、この世界はどうなってるんだ?全てを詳しく教えろ」


俺のあまりにも不自然な質問に、その警察官は顔色を変えることもなく話し出した。

今さっきの様子とは、全くの正反対だ。


「この世界は、神域と言います。

神域とは、その名の通り、我々のような神に仕える者、

そして、神のみが住む場所でございます。

当然、他の世界に住まう者・・・・人間界に住む人間や、魔界に住む妖怪などは、

神域に入ることが出来ません。

ですから、この世界にいるのは、

全て神や神に仕える者だけと言っても過言ではないと思います。


そして、我々神に仕える者は本当の神になるべく、現在の神である人に仕えるのです。

その人に認めていただければ、無事、初級神者になれると言う訳です。

このように、初級神者の者は中級神者の者に。

中級神者の者は、上級神者様に認められるのです。


そして、一番偉いのが、上級神者様と言うことになるのですが、

上級神者様以上になるには、今現在、神として世界を守っていらっしゃる方に

認めてもらう必要がございます。

認めていただければ、最も位が高い特級神者様になれると言うことでございます」


俺はその説明を聞いて、自分は物凄く偉い奴の一歩手前にいると言うことがわかった。

それなら、あの慌て振りもわかる気がする。


「しかし、その特級神者様の中でも偉いお方が決まっており、

一番下は、草花や生き物を司る神。

その中でも沢山いるのですが、省かせていただきます。


上から三番目に偉いのは、人間界を守る神、遥光様。

二番目に偉いのは、魔界を守る神、魔光霊命様。

そして、神の中でも頂点に立っているのが、

神域の秩序を守る神、幸明様と言う訳でございます」


「なるほど、大体わかった。ありがとう」


俺はさっさと礼を言うと、警察官から離れて考え込む。


と言うことは、魔光霊命を閉じ込めているのは幸明の指示と言うことになる。

それにしても、魔光霊命が二番目に偉いなんて知らなかった。

まさか、あいつがそうとは思わなかった。


しかし、今はとりあえず、魔光霊命を助けることを優先しなければならない。

こうしている間にも、魔界は崩れて行くんだ。


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