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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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対峙、そして再び闇の底へ

城の中に入ると、その異様な空気に思わず足を止めた。

なんとも言えないけれど、なんだか、外の空気よりも悪い気がする。


ため息をついて、やはり、一人で来なければよかったかと思ったが、

慌ててその考えを振り切る。

俺は、自分の身は自分で守れる。

だが、今のあいつらは、自分の身を自分で守ることが出来ない。だから、いいんだ。


いや、何がいいんだ?・・・・わからなくなって来た。

どうやら、空気に汚染されて、頭までおかしくなったらしい。


ため息をついて城の中を歩いていると、不意に、目の前の四つ角から殺気を感じて、

自然と壁に身を寄せると、大きく息を吐いた。


そして、烈火闘刃を握り直すと壁から出て、鞘から烈火闘刃を抜き、相手を見据える。


しかし、相手を見た途端、思わず顔が引きつった。


「お前・・・・何やってるんだよ?」

「・・・・関係ない。邪魔をするな。裏切り者」

「なっ!?」


躊躇いもなく襲われ、思わず怯んで、刀が頬を掠める。


「何すんだ!」

「答える必要はない」


その時、フッと思い当たる節があった。

あの時は桜木に襲われたが、今は、凛と言うことなのではないのか?と。


「もしかして、お前が桜木をやったのか?」

「・・・・フン、知らん。あいつは裏切り者だからな」

「あいつが何を裏切ったって言うんだ!」


俺がそう聞いても、もう、凛は何も答えずに、俺のことを襲って来る。


いつもの凛と全く違い、容赦がない。

何より、刀を振るうことに躊躇いが見えず、凛の本気を受けているようだった。


それにしても、物凄く強い。俺だって、そこまで弱い方ではない。

いや、むしろ、強い方の部類に入るぐらいだが、

凛は、そんな俺では手の届かないぐらい遠い場所にいる。

攻撃をすることなんか全く出来なくて、防御をしていることが精一杯だった。


「なんだ。攻撃をして来ないのか?」

「・・・・」


俺は、無言で息をする。思い切り息が上がっていて、しゃべるどころではない。

しかし、凛はと言うと、全く息が上がっておらず、余裕そうだ。


きっと、空気に汚染されているのも、

異常に疲れたりする理由の一つになっているのだろう。

いつも、勘を頼りに攻撃の先を読んでいるのだが、それが今は、出来ないのだ。

だから、瞬時に相手の動きを読み、避けるしかない。


普通はそれが当たり前なのだが、俺は、いつも勘で攻撃を避けているから、

それは、結構きついことなのだ。


肩で大きく息を吐きながらも、凛には絶対に攻撃をしないと決めていた。

血迷ったって、仲間を傷つけるようなことはしないと決めたんだ。


その時、不意に後ろに回られて、思い切り背中を蹴られる。


「クッ・・・・」


そのまま吹っ飛ばされるが、なんとか体制を立て直し、次に来た攻撃を止める。


しかし、そのまま回し蹴りをしようとする為、何とか横に転がって場所を移動すると、

二、三歩後ろに下がって構える。


しかし、そんな動作も無駄で、

直ぐに攻撃をしかけて来る為、なんとか刀で攻撃を抑える。


「お前・・・・ほんとに強いな」

「言っておくけど、まだ、本気のこれっぽっちも出してないけど」


そう言われて、凛の底力が恐ろしく思える。


確かに、今のところ体術しか使って来ない。

だから、本気なんて出していないのだろうが、俺は、既にかなり息が上がっている。


・・・・こいつが本気で俺を襲っていたら、きっと、一溜まりもないだろうな。


「・・・・」

「そんな顔をするな。直ぐに地獄に送ってやる」


そう言われたかと思うと、瞬時に冥道を開き、そこに蹴り込まれそうになるが、

何とかそれを避ける。

しかし、変な体勢で避けた為か、足をくじいてしまった。

それでも、何とか顔をゆがめるだけで、声を上げずに立ち上がる。


足がズキズキと痛み、動きが今まで以上に鈍るが、

何が一番危険って、凛に俺の足の具合が悪いと言うことがバレると言うことだ。

そんなことがあったら、今の凛は、絶対にそこを突いて来る。

今の凛はいつもの凛じゃない。温厚でも優しくもない、ただの狂人と化した化け物だ。


しかし、俺の勘は鈍る一方だが、凛の勘は冴え渡っているようだ。


「お前、足に怪我をしてるな?」

「・・・・チッ」


「いつもの運動不足が祟っているんだな」

「ふざけるなよ。運動不足なんかじゃない」


「なら、なんなんだよ、そのざま。ボロボロじゃないか。

殺し屋の頃のお前の方がいい戦いが出来たと思うぜ。

でも、もうお前に用はない。地獄へ行け」


そう言われた途端、腹に痛みが走ったかと思うと、

ポッカリと口を開けている冥道の穴へと落ちて行った。


俺が入ると、冥道への穴が閉じられたのが確認出来たが、

それ以降の記憶はなくなっていた。

腹に衝撃を受けて、気を失ったんだろうな、きっと。








「・・・・あっ、あれ?」


僕がゆっくりと目を開けると、一番最初に見えたのは、

僕の顔を覗きこんでいる大勢の人の顔だった。


「うわぁっっ!!!?」


僕はとても驚いて、とっさに顔を布団で隠す。


すると、僕の叫びに驚いたようで、

向こうもガシャンッとか、ドタドタッとかいろんな音がして喚いているから、

きっと、僕が脅かしてしまったんだと思う。


僕は、しばらくの間布団にもぐっていたけど、騒ぎが落ち着いてから、

再びゆっくりと辺りの様子を伺う。

すると、さっきと同じような光景が映ったけど、

事前に知っていたから、今度は驚かなかった。


しばらくキョロキョロしていると、一人の妖怪が走って行って、

誰かともめているようだったけど、

しばらくしたらその声が止んで、歩いて来る音が聞こえた。


「おっ、お前が俺の真上に落っこちて来た奴だな!」

「神羅さん!?」


「おおっ、覚えててくれたんだな」


「あれ?と言うことは、ここはどこですか?」

「ここは、頭脳種族の砦だ」


そうサラッと言われて、自然と顔が蒼ざめるのがわかった。

と言うことは、僕は、敵陣のド真ん中にいると言うことだ。でも、どうして・・・・?


「と言うことは、みなさん、僕の敵ですよね?それなのにどうして?」


すると、神羅さんを連れて来た妖怪が、気に食わなさそうに言った。


「族長様の命令だからな。お前を砦に連れ帰って、看病しろと言うことだ」

「修さんはどうしたんですか?」

「そう言えば、族長はどうしたんだ?」


僕に続いて聞く神羅さんの顔を見て、みなが凍りついたように黙り込む。

そして、自然と嫌な予感がした。


「お前ら、族長を一人にしたんじゃないだろうな?」

「・・・・すいません、神羅さん、族長様がどうしてもと言うので・・・・」


「お前ら、何やってんだよ!あの人は、人がいないと無茶ばっかりするんだぞ!

一人にするなっつったろ!!」


そう怒鳴ると、神羅さんは部屋から出て行こうとするけれど、

頭を押さえてしゃがんでしまった。


そう言えば、さっき神羅さんが、「俺の上に落ちて来た」と言っていた。

それって、僕が怪我をさせたってこと?


「あの・・・・その怪我って、僕が?」


「まぁ、お前と言うか、実は、お前が落ちて来たのは族長の上だったんだが、

俺がそれをかばって、下敷きになったと言うか・・・・」


「すっ、すみません!」

「ああ、気にすんな。大した怪我じゃないからよ」


そう言って立ち上がる神羅さんだけども、頭には包帯をグルグルに巻いており、

服の隙間から見えた体にも、包帯がグルグルに巻かれていた。

とても、大丈夫と言える体じゃない。


「神羅さん、そんなに無茶をしないで下さい。

骨だって折れてる状態ですし、手術をしたばかりで、

今さっき麻酔から目覚めたばかりじゃないですか」


「えっ・・・・」


その言葉が、僕の心に突き刺さる。どうしよう?って思う。

修さんの護衛の人に、思い切り怪我をさせてしまった。

それに、もしこの人が躊躇っていたら、

僕は、修さんに怪我をさせていたところだったんだ・・・・。


僕の表情を見てか、神羅さんが力なく笑う。


「大丈夫だ。お前のせいじゃない。

話を聞くと、お前も俺を踏んだ後気絶したらしいな。

だから、わざとじゃないとわかる。

それに、落ちて来た時、窓を破って飛んで来たから、

誰かに吹っ飛ばされたんだろうとわかった」


そう言われて、今まで忘れていたことを思い出した。


「そうだ!僕、凛君に襲われて、そのまま意識を失ったんです!」

「そうか。お前を襲ったそいつは、滅茶苦茶強いのか?」


「・・・・はい、修さんもかなり強い方ですが、

凛君は、なんせ、戦闘種族の族長ですからね。

比べ物にならないぐらい強いと思います」


そう言う僕の言葉を聞いて、周りにいた妖怪達の顔が歪む。

それを察知したのか、神羅さんがため息をついて立ち上がると、

フラフラしながら歩き出す。


「神羅さん、どこへ?」

「決まってんだろ?族長のところに行くんだ」

「しかし、まだお体が・・・・」


「お前らが族長を一人で行かすようなことをしなければ、

俺だってここまで無理をすることもなかったんだ。そう考えろ」


「あっ、あの・・・・僕も行きます!」

「・・・・ああ、わかった。ついて来い」


神羅さんはそれだけ言うと、今にも倒れそうなくらいフラフラしていると言うのに、

部屋の外に出て行ってしまった。


僕は、慌ててベットから出ると、立ち尽くしている妖怪達の間をすり抜けて、

出て行った神羅さんの後を追った。


最悪な事態が起こってないといいけど・・・・。


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