表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
83/591

思った以上に酷い現状

「ここは?」

「・・・・魔界です」

「嘘だろ?」

「いいえ、本当です」


目の前に広がっていた光景は、まさに、烈火闘刃に見せられた悪夢と重なっていた。

それが、今は幻想ではなく、現実として目の前に広がっている。


「では、行きましょう。俺達の砦に」

「戦わないのか?」

「族長が死ぬと言うことは、我ら、頭脳種族の敗北が決まると言うことです。

と言うことで族長、これからワープをします」


そう言うと、勝手に俺の腕を摑み、ワープを開始してしまった。


それから数秒後に見えた景色は、さっきの焼け野原ではなく、建物の中のようだった。


「おう、族長!こっちだ」

「神羅、ここにいる以外の奴らはどうしたんだ?」

「みんな戦場に向かっています。そして、その四分の一の奴らが既に戦死しました」

「・・・・ちっ」


「族長、座ってて下さい!どこに行くつもりなんですか!」

「俺も戦いに行く」

「やめて下さい!」


俺が椅子から立ち上がろうとすると、周りにいた妖怪が一斉に俺のことを止める。


確かに、こいつらの言い分はわかる。

しかし、自分だけ戦わずに守られていると言うのは、一番嫌だったのだ。


「他の奴らは死ぬまで戦い続けていると言うのに、

なんで俺だけ守られてるだけなんだ!」


「それは仕方ないことです。族長なのですから」

「・・・・そんなんで、理が適う話じゃない。俺は戦場に行く!」

「お待ち下さい!それでは・・・・・」


そこまで話していた時、今まで固く閉ざされていた扉がバンッと勢いよく開いて、

慌てた様子の妖怪が入って来た。


「大変です!我が族の砦のありかを嗅ぎ付けられたようです!

急いで族長を安全な場所に移動させてください!」


その言葉を聞いて、隣に立っていた神羅の顔つきが変わり、

今までの、のほほんとした顔からは想像もつかないぐらいな真面目な顔になると、

指揮を始めた。


「一番隊、二番隊、三番隊は、外に出て守りを固めろ。

四番隊、五番隊、六番隊は、戦闘準備をしておけ。

八番隊は、俺と一緒に族長を守れ。以上!」


神羅が言った途端、大勢の妖怪がバタバタと動き出す。


俺は、神羅の物凄く意外な一面を見て唖然としていると、

神羅に腕を引かれて、部屋の隅にある通路に連れて行かれる。


「お前、単なるバカじゃなくて、指揮も出来たんだな。見直したぞ」


「・・・・全く、族長も素直になればいいのにな。

俺だって、族長がいなかったら、一番偉い立場にいるんだぜ?」


「そうなのか?」


「ああ、族長の護衛と言うことは、国王の次に偉い大臣となる・・・・。

あれ?大臣が偉かったんだっけな?」


「まぁいい。つまり、俺がいない間は、お前が指揮を取っていたと言うことだな?」


「そう言うことになる・・・・うん。

だからって、俺に指揮を任せる・・・とか言わないでくれよ?」


神羅の言葉を、耳を塞いで受け流す。聴かなければ、無効になる。


「族長、そんなガキみたいなことをしないで下さいよ~。

耳を塞いだって、聞こえてるんでしょ?」


「・・・・いいや、さっぱり聞こえない。と言うことで、ここで族長命令だ。

お前が指揮を取れ。以上」


「そんな道理が通る訳ないだろ!」


神羅が怒って怒鳴るけれど、俺は、再び耳を塞いで聞こえないふりをした。


「そうだ!お前、俺と入れ替われ」

「・・・・は?」


「だから、俺が族長と言うことを伏せて、お前が族長と言うことにしておけ。

そして、俺が護衛として戦場に行く」


「なっ!?」


「それが一番無難な線だろう?よく考えてみろ。

普通のやつらは、守るべき族長を戦場に駆り出すことは絶対にしない。

その心理を突くんだ」


「・・・・」


俺の言葉に、真剣に考え込む神羅。


それには思わずうろたえた。なぜなら、俺は、ふざけて言ったつもりなのだ。

ただ、戦場に行きたいが為に言った言葉を、そこまで鵜呑みにされたのだ。

うろたえないはずがない。


「それ、いい考えだな・・・・」

「・・・・本当に言ってるのか?」


「ああ、囮作戦だよな?それならいい。

ただ、護衛の俺は族長を守らなくちゃいけないから、

囮は俺ではなく、九番隊の隊長に任せる。いいな!」


突然話を振られた八番隊の奴らは、多少返事が遅れたものの、

慌てて、勢いよく返事をする。


「では、九番隊の隊長に伝えてまいります!」

「おう、頼むぜ!」


一人の隊員が敬礼をすると、足早に来た道を戻って行く。


どうやら、確実に、俺の言った作戦は実行されるようだ。なんだか拍子抜けする。


「と言うことは、俺は戦場に出向いていいんだな?」

「・・・・まぁな。その変わり、俺が死守する。それを拒むなよ?」


「ああ、わかってる。

そうでもしないと、お前は俺を戦場に出すつもりはないんだろう?」


「わかってるじゃないか!」


神羅の反応に、俺は大きくため息をつくと、ふと感じたことを聞いた。


「そう言えば、俺をどこに連れて行くつもりなんだ?」


「最初は、第二の砦に連れて行く予定だったんだけど、戦場に行くんだろ?

だから、そのまま地上に出るんだ」


そう言うと、今までずっと立ち止まることなく歩き続けていたのだが、

急に止まって、右の壁にあるドアを開けた。

そこには上り階段があって、上へと続いている。


「ここ、どこに繋がってるんだよ?今までも何回か見て来たぞ」


「ここは、砦と砦を繋ぐ簡易隠し通路って言うのかな?

そして、この上を行けば、地上に出られる。

途中にも何個かあった理由は、一個じゃ不便でしょ?だから、何個も作ってるんです。

では、行きますよ」


そう言って、神羅は階段を上り始めるも、かなり混乱した。


なぜなら、今までの隠し通路は横幅が広かった為、

俺を守るように周りを囲んでいたのだが、

その階段は、人一人が通るのがやっとの幅しかなく、

一人ずつ階段を上って行くしかなくて、かなり混乱したのだ。


階段は結構長い間続いた。それだけ深いところに砦は作られていたらしい。

地上に出るのに、三十分近くかかったのだ。


「さぁ、ここを開ければ戦場だ。準備は出来てるか?」

「おう!」


八番隊の威勢のいい返事を聞いた後、神羅が上についている扉を押し上げた。


それと同時に、なんとも言えないにおいが狭い通路に充満して、みなで咳き込む。

そして、それと同時に、赤い光りが差して来た。


今まで結構暗いところにいた為、突然の明るい光りに目が眩んだのだ。

しかし、それに物怖じせず、みなが地上に這い登る。


遂に俺の番が来て、地上に上る。そして、地上の光景に目を疑った。


そこら一体に死体が無造作に転がっており、

普段は緑色の草は、真っ赤な血を吸って成長し、赤黒いような色になっている。

空気は目に見えるぐらいに淀み、においは強烈だ。

足元の土は慣らしたようにフカフカしているが、その色が赤黒い。

これで、どうしてそうなったか言わなくてもわかるだろう。

おまけに、普段は綺麗な青色の空も、今では真っ赤に染まってしまっている。


・・・・これが、種族争い。


そう感じた時、自然と体が震えるのを感じた。

ここまで恐ろしいものだとは思っていなかったのだ。

いつも青く、快い陽の光を与えてくれた空の色さえも変えてしまうだなんて・・・・。


こんな状況で戦っていたら、いくら温厚な奴、喧嘩や争いが嫌いな奴でも、

気が狂ったかのように戦うだろう。


こんな光景を目にし、この場に立っていて、戦わないでいられる奴なんていない。


どんどんこのよどんだ空気に汚染されて、戦闘の鬼と化す。

そして、全てのものを殺し、やがて、自分の身をも滅ぼす・・・・。


こんな状態にいる奴らを、俺は、本当に救うことが出来るのか・・・・?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ