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想造世界  作者: 玲音
第三章 一時の休息
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ついに来てしまった最悪な出来事

それを知ったのは、神羅達が帰って直ぐに起きた。


突然、血だらけの妖怪が家の窓を破って入って来ると、

俺と二人の間に割って入り、二人に武器を向ける。


「なっ、なに??」

「族長、魔界に来て、我々に援助をお願いします!」

「・・・・」


そう言われて、自然と悟った。


ついに、本格的な種族争いが起きたのだと。

今までの中途半端な戦争の時とは違い、俺を守ろうとしている妖怪の顔は、

恐怖、怒り、憎しみ。その全てを含んだ戦地にいる者の顔をしていた。


「・・・・わかった。お前はもう戦うな。血だらけだ」


「そんなことは出来ません。

私は、族長を無事に魔界に送り届けることを任されて・・・・」


その時、不意に背後から殺気を感じ、

自然と妖狐の姿に戻ると、烈火闘刃で飛んで来た何かを弾き返す。


俺が弾いたのは、猛毒の塗ってあった毒針らしく、

もし気づくのが遅れていたら、俺は今頃猛毒によって死んでいたことだろう。


すると、針が飛んで来た方向とは別の窓を蹴破り、妖怪が入って来た。

そして、そのまま桜木を抱える。


「なっ、なんですか!?ちょっと、やめて下さい!」


そう叫んでいる桜木の言葉を無視して、窓から飛び降りて逃げる。


そいつも血だらけだった。きっと、桜木を連れて来る様に言われたやつだろう。


「族長、このように、人間界にも妖怪どもの手が回っております。

急いで魔界の砦に向かって下さい」


「・・・・わかった。俺は一人で行ける。お前は先に魔界に帰っていろ」


「それは出来ません。こいつは戦闘種族の族長です。

こいつが襲って来ない可能性はありません」


「・・・・わかった。一緒に行く」

「えっ、何?どう言うこと?」


「・・・・短い間だったが、お前達と過ごした日々は楽しかった。

だが、ここでさよならだ。一生な。ありがとう」


俺がそう言ったと同時に、妖怪が俺の腕を摑み、突如出現させた歪に入った。


これで、もう二度とあいつらには会えない。


そう思うと何とも言えない気持ちになるが、その気持ちを抑えて目を瞑った。









「・・・・短い間だったが、お前達と過ごした日々は楽しかった。

だが、ここでさよならだ。一生な。ありがとう」


その言葉が、なぜかとても怖かった。


いつも、ふざけて言われたことがある。

その時は、「何言ってるのさ!」って怒鳴り返してやることが出来た。

でも、今は、そう言い返すことすら出来なかった。

なぜか、本当の別れなんだと思った。

なんでそう思うのかは自分でもわからない。でも、わかったんだ。


その時、突然背後から襲いかかられて、何とか犬神の姿に戻ると、その攻撃を避ける。


そして、その妖怪の方を向く。

そこにいたのは、きっと他種族の妖怪だろうね。襲って来たんだから。

しかし、その姿を見て驚いた。


血だらけになって、狂命状態になっている。


狂命状態と言うのは、普段の妖怪は戦闘モードになっても

最高の力を出し尽くすことはない。

妖力を出し尽くすことは、破滅を意味するからね。


でも、物凄い極限状態の時には別だ。

自らの妖力がなくなるのなんて気にせず、ただ、定められた誰かの命を守る為、

その人以外の生きとし生ける者の命を全て奪う狂命状態になる。


その状態になるには、極限状態以外の他にも

なんらかのスイッチがあると言われてるけど、それは未だにわかっていない。


そして、狂命状態に陥ると、守るもの以外のものを全て破壊する。


と言うことは、友達も、親も、同種族も何も関係なく殺す。

だから、同種族同士の争いが起こっている可能性もある。


そんなことを考えていると、不意に襲われて、何とか避ける。


普段の力は、出してもせいぜい60%ぐらいだ。でも今は、100%の力。

全力を出しているから、それなりに強い。


どうしようと思っていると、

不意に目の前に影が現れて、僕を守るように立ちふさがる。


「族長、早く安全な場所に向かって下さい」

「錬賭君!・・・・でも、君は大丈夫かい?血だらけだけど・・・・」


「俺は大丈夫です。族長が早く避難していただければ結構ですので」

「わかった!」


僕は、錬賭が心配だったけど、目を瞑って魔界に向かうことにした。


何が起こっているのか全くわからない。

でも、本能が告げてる。とても恐ろしいことが魔界で起こっている。

僕らはそれを阻止しなくちゃいけないんだってね。


亜修羅は、もしかしたら知っていたのかもしれない。


もう、僕らが会えないって知らなかったら、桜っちみたいに何も告げないと思う。

ただ、亜修羅の場合は、言っていた。だから、知ってたんだ・・・・。


どうして教えてくれなかったんだろうって思った。でも、直ぐにその理由がわかった。


きっと、どこかでそのことを知ったけれど、その悲惨な情景も知っていたから、

僕らに言わなかったのかもしれない。不安な思いをさせない為に・・・・。


なんだかんだで優しいと思うけど、苦しかったんじゃないかと思う。


そして、わがままとか言っていた自分が情けないと思うけれど、

また、三人そろって楽しく過ごせるように頑張ろうとも同時に思った。

どうか、みんなが無事に助かりますように・・・・。








「なんなんですか!?」


僕は、無言で腕を摑んでいる人を見上げる。そして驚いた。血だらけだ。

そして、その人の血で僕も血だらけだった。


びっくりして悲鳴を上げそうになったけど、その人が視線を落として、僕に言った。


「お前、妖怪退治屋養成学校に行っていたんだろう?血ぐらいで悲鳴を上げるな」


「でっ、でも!どうしたんですか!

何があって、僕をどこに拉致しようとしてるんですか!」


「お前は人間だが、俺達の族長でもある。俺達は、人数が圧倒的に少ない。

だから、隠れている。吹雪さんからお前を守るように言われた。

砦にお前を連れて行く。目を瞑っていろ」


そう言われると、突然目隠しをされて、目の前が真っ暗になる。

何で目隠しをするのかわからないけれど、真っ暗な視界が、余計不安をかきたてる。


「なんで目隠しするんですか!」


「お前、他種族の族長と仲がいいらしいな。

だから、俺達の砦のありかを教える可能性がある。だから、目隠しをする」


「あっ・・・・そうですか」


信じてもらえてないんだと思うと、自然と高ぶっていた感情が落ち着いて、

ため息をついてしまった。


まさか、同種族の人達にここまで信用されてないとは思わなかった。

でも、疑るのは確かだよね。うん、仕方ないことだよ。

妖怪退治養成学校に通っていたと言うのもあるし、行動を共にしている訳でもない。

そもそも、妖怪ですらないのだ。当たり前と言ったら、当たり前なんだろうね。


そう思うながらも、少し悲しくなった。


しばらくしたら目隠しを外されたけど、

一番最初に見た風景は、薄暗い建物の中だった。


「ここはどこですか?」

「地下に作った砦だ。この上では、激しい戦いが繰り広げられている」

「えっ!?大丈夫なんですか?」

「地上の様子を確認して、危なくなったら移動をする。地上の様子を見るか?」

「あっ、はい!」


僕は、魔界の地上がどうなっているのか見たかった。


それにしても、なんか、雰囲気が怖い・・・・。

みんな気を張り詰めて、どうも自分が場違いの人間に思える。


「よぉ、族長。そんなに固まった顔するなよ」


そう言って話しかけて来たのは、冬眞だった。


「あっ、冬眞!」

「こいつは俺が面倒見る。お前は安全を確保して来てくれよ」

「ああ」


冬眞は、僕を連れて来た人を追い払うと、どこかに連れて行く。


「どこにつれて行くんですか?」


「お前、さっき、地上の様子を見たいいって言ってただろ?だから、見せてやるのさ。

ただ、かなりショッキングな絵だぜ」


「・・・・どれぐらい?」


「妖怪のほとんどが狂命状態に陥っている。

だから、同種族同士争うことにもなっている。

だから、多くの屍がそこらじゅうに転がっていて、異臭を放ってる」


「うっ・・・・」


話を聞いただけで吐き気がして来た。それって、なんて酷い・・・・。


僕はそう思いながらも、見なくてはいけない気がした。

自分はこうして守られているけれど、僕を守る為に戦っている人達がいる。

だから、その光景を見なくてはいけないと思ったのだ。


「おう、ちょっと退いてくれ。族長殿が地上の様子を見たいらしい」


「ああ、でも、いいのか?

人間の目には、ちょっとショッキングすぎるんじゃないか?」


「大丈夫だ。一応、こいつも妖怪に近い立場にいる」

「・・・・はい。見せてください」


僕がそう言うと、その人は場所を譲ってくれた。


ドキドキするけれど、僕は、穴の開いている壁に目を近づけてみた。

すると、僕の知っている魔界とは全く違う光景が見えた。


燃えて黒くなった木に、焦げた死体・・・・。

そして、血だらけになって死にそうになりながら、

あちこちで戦いを繰り広げている妖怪達。


その時、突然画面が真っ暗になった。


突然のことに驚いて、思わず飛び退いてしまった。

心臓が早く脈打っていて、走った後みたいに息が苦しい。


「お前、大丈夫か?」

「えっ?あっ、はい・・・・。大丈夫です・・・・」

「お前、休んだ方がいいぞ。顔が蒼いぜ」


そう言うと、冬眞は僕の腕を引いて、その場から離れた。


「顔が蒼いですか?」

「ああ、休め」


冬眞は、救護室みたいな場所に僕を連れて来ると、

カーテンを閉めて出て行ってしまった。


僕は、本当は眠りたくなかったけど、仕方なく眠ることにした。

眠れるはずがない。あんな光景を見た後では、絶対に悪夢を見てしまうだろう。

だけど、僕は、眠るしか出来ないとわかったんだ。


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