種族が違っても、仲がいい奴はいい
結構気まずい雰囲気だったなぁ~と、今更ながら反省する。
「あいつ・・・・」
五時になって結構暗くなった道を歩いていると、亜修羅がさっき出て来たゲームセンターを見てつぶやいた。
「どうしたのさ?」
「・・・・」
僕らも亜修羅に習ってゲームセンターを覘いてみると、悟琉君がチンピラに囲まれていた。(今日は、なんでこんなにもチンピラや、不良に会うんだろうか。そんな運勢なのかな?)
「だから、もう少し待ってくれって言ってるだろう?親父も母親も倒れ込んでいるんだから、それしか払えないんだ。だから帰ってくれ」
「・・・・」
「足が使えない僕は雇ってもらえないんだ。もうちょっと待ってくれ」
「・・・・」
「何だかまずい様子じゃない?もしかして、借金抱えてるのかな?」
「ああ、そんな感じだな」
「助けなくてもいいの?」
「だからって、あいつがいくら借金してるのかわからないと、払う分にも払えないだろう」
「えっ!?まさか、払うつもりなの?」
「乱闘は、もううんざりだ。なら、金を削った方がいい」
「貧乏になっちゃうよ。そしたら、今度は僕らが借金を抱えることになるんだよ」
「気にするな」
気にするよ、思い切り。貧乏になったら食べられないんだしさ。そんなの嫌だよ。
「僕が言った助けって言うのは、襲われてるのを助けてあげなよってこと」
「そんなことしたって、また戻って来るだけだ」
「あっ、こっちに来る!」
チンピラ達がそろってこっちに向かって来る為、寸でのところで近くの電信柱に身を潜めてやり過ごす。
「ふぅ、何とかやり過ごしたね。ちょっと事情を聞いて来ようよ」
「貧乏になりたくないんじゃないのか?」
「まぁ、一応ね」
ゲームセンターの中に入ると、悟琉君がガバッと振り返ったけど、僕らだと気づくと表情が緩んだ。
「どうしたのかな?」
「あのさ・・・・」
「お前、借金取りに追われてんだろ?」
僕は順序を立てて聞こうとしたのに、亜修羅がいきなり本題を切り出したから、逆に何も言えなくなってしまう。
「見てたのか?」
「まあな。いくらなんだよ?」
「一億。父さんと母さんは過労で倒れて病院に行っている。僕はこの通り、足も使えないし、まだ働ける年じゃないからね。毎日うんざりだってこと」
「・・・・そうか。大変だな」
「まあ、それでも生きているだけで幸せだと思うから」
「そうか。また来る」
「もうダメだよ、君達は未成年者だからね」
「じゃあな!」
悟琉君の言葉を無視して、無理矢理さよならを言うと、僕達を引き連れてゲームセンターから出た。
「どうしたのさ?」
「いや、王族の奴に烈火闘刃を渡す」
「えっ、何か・・・・それってまずくない?」
「いいんだ」
「そのお金を上げるの?」
「嫌、さっきのは嘘だ。家計は苦しいからな」
どっ、どっちなんだろう?貧乏じゃないのか。それとも貧乏なのか?
よくわからないけど、一応亜修羅に従うことにした。(何を従うんだろう?)
とにかく家に帰ってみると、三人仲良くそろって待っている人達がいた。無論、僕らを連れ戻しに来た模様だ。
「勝手に帰られちゃ困るよ、君達」
「だって、こっちの世界が家だからさ、仕方ないんだよ」
「いや、そうじゃなくてさ。帰って来てよ、族長。いきなり帰っちゃったからみんな大騒ぎなんだ!」
敵同士のはずなのに、そんなことを言って言いものか。相手にそこを突かれるとは思ってないのかな?僕達は結構長い間友達だったから相手のことは信用してるけどさ、この人達はお互いが敵同士だし。
「関係ない。もう、うんざりだ」
「じゃあ、出直して来る」
そして、三人は仲良くそろって出て行った。本当に三人同時に。
「あの三人、敵方同士なのに仲がいいよね?」
「敵方同士だからって仲が悪い訳じゃない。仲がいい奴だっているさ」
「それって僕らのこと?」
「とは言ってないぞ!」
「へへん」
あまり言うと怒られるので、取りあえず黙っておく事にしたが、絶対に僕の勘は当たっていると思うことにした。だって、違ったらあんなにムキにならないもん。
「ちょっと、出て来る」
怒らせちゃったのかと思ったけど、そうじゃないらしい。取りあえずはほっとした。
しかし、それが最後の微笑みになることに、まだ俺達は気づいていなかった。
魔界では、本当に恐ろしいことが起こり始めていたことを。