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想造世界  作者: 玲音
第三章 一時の休息
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バトルの結果は・・・・

「もし俺が勝ったら、凛は何をするんだ?」

「だから、凛じゃないって!もし、僕が勝ったら、何でも言う事聞いてあげるよ」

「生意気だな。後で泣いて謝ったって許さないからな」

「どうだろうね。ほら、余所見してると・・・・」


亜修羅が余所見をしているうちに、その場にいる標的を撃ち、次のステージへと進む。だから、まだ向こう側は一点ももらっていないのだ。


そのまま亜修羅のチームが負けたまま、石村さんと桜っちの番になった。


「桜っち、頑張って!亜修羅におごらせるんだ」

「おい、負けるな!巻き返せ」

「えっ、でも・・・・私、ゲームは全く知らないし」


石村さんが戸惑っているうちに、桜っちがドンドン容赦なく撃っていくから、残り二ステージだけになった。


僕らは笑顔でいるものの、まだ一点も取っていない二人の表情は引きつっている。


「どうしよう、私・・・・」


石村さんは、なぜか物凄く震えていて、画面に銃が向いていない。向いていたとしても、ガタガタゆれているので、狙いが定められない。


それを見ていた亜修羅は、痺れを切らしたように行動に出た。


「違う、こうだ!」


石村さんの手をつかみ、銃口を画面に向けて、震えている手を押さえつけ、そのまま銃を撃つ。


この突然の行動に、僕も想定外だった。これを期に仲良くなってくれたらなって程度のものだった。でも、この格好は、石村さんの背が低いから、亜修羅が覆いかぶさるような状態になってるんだ。見てるこっちが、なんだかはずかしくなって来る。


しかし、当の本人は何とも感じていないようで、と言うか必死にやっているようで、こっちの行動にも気がついていない。


石村さんはと言うと、顔が真っ赤になって失神しかけている。後ろに亜修羅がいるから倒れていないけど、いなかったらとっくに後頭部を強打してるだろう。


そんなこんなで想定外のことも起こったけど、無事勝利を収めることが出来た。だから、夕食は外食だ。


「ちっ、負けたか。まぁ、約束は約束だしな。金取って来る」

「あっ、行ってらっしゃい」


あっけに取られて見送った後、一斉にみんなで輪になる。


「結構攻めるタイプだったんだね」

「いや、多分、修は自分が勝ちたいがためにやった動作だと思うんだけど。凄いドキドキしちゃったよ」


「わっ、私、失神しそうになって・・・・」

「嬉しくて失神?」

「うん。このまま死んでもいいと思ったんです」

「大胆だね。本人は全く平気な顔をしてたけど」


「見てるこっちもびっくりしたわよ。本当」

「僕らもびっくり。これを通して仲良くなってくれたらよかったなってぐらいの気持ちだったからさ」


そんな話をしていると、ゲームセンターの外が妙に騒がしい事に気がついた。


「どうしたんでしょう?」

「じゃあ、ちょっと見てくるよ。変な奴らだったら困るしね」

「あっ、はい。お願いします」


小走りに外に出て行ってみると、想像通り、不良と言うか、チンピラと言うか。そんな人達が、誰かさんを恐喝していた。それを見て、僕は助けようと言う気を起こさずに笑っていた。


理由は、その襲われている人物だ。不良達は、機嫌を損ねたら重傷を負わされることになる。


「どけ、バカ共」

「あっ・・・・」


不良達が怒らせる前に誰かさんが喧嘩を売る。不良達はそれにのせられてボコボコになった。


「やり過ぎだよ、このままほっといたら凍っちゃうよ」

「襲って来たこいつらが悪い。ただでさえイライラしてるんだ。雑魚の相手をしている暇はない」

「ほら、みんなが待ってるよ」


「本気か?」

「本気」

「はぁ・・・・」


ため息をついて嫌がるけれど、そんなのを無視してスキップをする。これは決して嫌味じゃないからね。


僕が亜修羅を連れてゲームセンターの中に入ると、さっきのメンバーともう一人、車椅子に乗った男の子がいた。


「その子は?」

「さっき反対側のドアから入って来たんです。名前は、悟琉君だそうです。あっ、読みは「さとる」だそうです」

「こんな雪が降っている日に来る人なんて珍しいな・・・・」

「あっ、迷惑だったら出て行くからさ」


「いや、気にしなくていいよ。ところで君達、未成年だよね?保護者がついてないといけないって教わらなかったのかい?」

「いるよ、保護者なら。この人だよ」

「・・・・なんだか曖昧だけど、仕方ないか」


「悟琉君こそ一人じゃないか」

「僕はここの見張りを頼まれてるんだ」

「ふ~ん」


まだ成人ではないと思うけど、僕らよりはちょっと年上かもしれない。そんな大人っぽい感じがする。亜修羅と同種だ。


「おい、行かないのか?あんまり遅くならない方がいいと思うぞ。校則でだって、子供だけで店に行っちゃいけないんだからな」

「校則なんてよく覚えてるね。僕なんか忘れちゃっててさ」


「おい、仮にも生徒会長だろう?しっかりしろよ」

「じゃあ、悟琉君。バイバイ!」

「ああ、バイバイ」


ここは亜修羅とは違うな。亜修羅なら、無視をするか、やっても無言で手をあげるくらいだろう。


「で、どこ行く気だよ?」

「ファミレス」

「ああいうところに教師がるかもしれないぞ。生徒がいないかって」

「大丈夫だよ」


「あのさ、どこに向かってるの?」

「ファミレス」

「えっ、ダメなんじゃないの?」

「大丈夫」


「それに悪いし」

「ゲームで僕が勝った時の条件だからね。気にしなくていいよ。亜・・・・じゃなくて修はそれを承知でやったんだからさ」

「でも、やっぱり先生とかが見回ってるかも・・・・」

「その時は上手くごまかせばいいんだよ」


生徒会長が校則を破りまくっていると言うことはあまりよくないことだけど、生徒会長だからって校則をきちんと守っている人なんていないんだ。だから僕も、大丈夫だと自分で思ってる。先生達がどう思ってるかは別だけど。


そんなこんなで店員さんにも怪しまれずに中に入ることが出来た。結構ギリギリだったけど、何とか切り抜けたって感じ。


幸い先生はいなかったけれど、隣の席の人達が、未成年っぽいのに平気で煙草を吸っている。でも、注意する気にはなれない。自分で吸ってるんだから、早死にするのは自分のせいだもん。


「そんなに持ってないからあんまり食うなよ?」

「嫌だよ。せめて八分目までは食べさせてよ」

「いや無理だ。いくらかかると思う?自分が大食いだって自覚してないのか?」


「そんなに食べるの?」

「ああ、この前、寿司四十皿食ったのに、まだ食えたって言ってるぐらいだ」

「羨ましいな、そんなに食べても太らないなんてさ」


石村さんは、問いに答えてくれたことが嬉しいらしくて、満面の笑みだ。ここは話の中に入らない方がいいと思うんだけど、一応さっきの問いは僕にして来たんだし、一応答えないと嫌な気持ちになるよね?


「うん、もとからあんまり太らない体質らしくてさ。もっと太れって言われたんだけどさ、僕は一杯食べてるのに太らないんだ。だから、先生もしつこく言うのをやめたんだ」

「そうだね、丘本君って華奢だもんね」

「力は凄いけどな」

「今のことは聞かなかったことにしてよね?」

「そっ、そうなの?」


まずい、思い切り話が脱線しちゃって、いい方向に向かってた電車が線路切り替えで悪い方向に走って行っちゃった。


しかも悪い事に、もう線路の切り替え地点はない。完全に電車は変な方向に走って行っちゃった。


それから二人が話をすることはなかった。石村さんが話しかけても亜修羅の返事が、「そうか」か、「ああ」だから話が途切れちゃうんだ。


「お前、八分目って言っただろう?」

「えっ、まだ六分目・・・・いや、五分目かもしんない」

「もう食うのはよせ。お前のほかにも払わなくちゃならないんだぞ」


「じゃあ、後五品頼んだら!」

「・・・・」


呆れてものも言えなくなっている亜修羅を無視して、さっさと決めて頼んでしまった。


「本当に凄いですね」

「育ち盛りだからね」

「育ち盛りで言い訳出来る量じゃないぞ。それに、もう成長止まってるだろう?そのチビのまま」


「うるさいな!これは人間の姿。本当はもっと大きいの」

「?」

「あっ、今のは、えっと・・・・。意地張っちゃっただけで・・・・」

「そっか。急に人間の姿とか言い出すから驚いたよ」


何とかごまかすことが出来てほっとしたが、向かい側にいる亜修羅に足を思い切り蹴られた。思わず顔をしかめるも、自分が悪いのだから、言い逃れは出来ずに我慢していた。


僕が食べ終わり、出て行こうとしていた時に、突然扉が勢いよく開いたかと思うと、さっき亜修羅にボコボコにされた不良達が、新たな仲間を引き連れて仕返しに来た。


「どうするのさ?」

「どうもしない。あいつらの相手をしていられるほど、俺は暇じゃないんだ」


「とか言っちゃってさ、本当は殴りたい気持ちなんでしょ?」

「まあな。でも、ここで乱闘を起こすのは迷惑だ」


亜修羅は野次を飛ばす不良達の言葉に耳を傾けずに、捕まれたら睨んで回避した。こう言うところは頭脳種族かもしれない。僕だったら戦いを途中でやめるのは結構きつい。そこで思ったのが、戦闘種族は、身体能力も他の種族より高いけれど、より好戦的だと言うことがわかった。


そのまま会計を済まして無言で外に出る。僕らも一言も口を聞けなかった。他のお客も、亜修羅に睨まれた不良達も、みんな同じだ。


「あっ、あのさ、今日はありがとうね。じゃあ!」


石村さんが言ったかと思うと、友達を引き連れて走って帰ってしまった。


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