十二月のゲームセンター
「・・・・おい、本当に行く気なのか?」
「当ったり前じゃん。僕は、言った事は必ず遂行させる性質だからね」
「前、約束を破ったことがあるじゃないか」
「あれは特別♪」
「『あれは特別♪』じゃねぇよ!」
嫌がる亜修羅を引っ張り出し、ゲームセンターに向かっている道で亜修羅に殴られる。亜修羅がいつも、こう頭を叩くから頭が悪くなっちゃうんだよ。その前だって、よかったとは言えないけど、今よりはマシだったと思うよ。
「頭が悪いのを俺のせいにするな」
「じゃあ、叩かないでよね」
「叩かれるようなことをお前が言うからだろう」
「そんな嫌味ばっかり言ってるから友達が出来ないんだよ」
「・・・・」
本当のところはよくわからないけど、言い返して来ないってことは、図星なんだろう。
いつも、誰に対しても、あんな態度だから好かれないんだと思うんだけどな。でも、そうなると僕はどうなるんだろう。変人?
「ねぇ、伊織君とはいつもこんな感じなんですか?」
「うん。いっつも年がら年中嫌味ばっかり言うからストレスも溜まるんだよね」
「学校では話しかけられても無視ですよ、ほとんどが。多分、丘本君だからあんな風に普通に言い返せるのかもしれません。だから、丘本君は、伊織君に認められてるってことですよ。羨ましいです」
「認めてるからあんな風に憎まれ口を叩くの?それって、好きな女子にちょっかいを出したくなる男子の気持ちかな?」
「・・・・あはははは」
僕の例えに、石村さんは苦笑いをした。当たり前かもしれない。石村さんは女の子だし、僕だってそんな経験がない。だけど、よく言うじゃないか。だからそんな感じなのかな?って。ちょっと方向はずれてるけど、似たような感じかなって思って。
「そう言えば、桜っちを修の彼女と間違えたんだって?この間、桜っちから聞いたよ」
「はい。総合的に見て、と言うか容姿が中性的だから、そうなのかなって。その時は灰になって飛ばされたい気持ちでした。でも、間違いだって気がついてよかったです」
「だってさ、桜っち!」
「はっ、はい?」
隣を歩く桜っちに話を振ると、聞いていなかったように戸惑っていた。本人的にもあまり思い出したくないものかもしれない。
「何でもない!それで、どうしようか、作戦」
「・・・・立ててませんよ。どうしましょう?」
「一か八かでやろうと思う」
「何をするんですか?」
「決めてないよ」
「あっ・・・・そうですか。じゃあ、アドリブでやるんですね」
「そう言うこと」
とにかくその場に応じて行動するしかないんだ。下手に作戦を考えても、亜修羅は絶対にその作戦を踏みにじると思うしね。だったらこっちも、作戦なしで行こうと思ったんだ。
そして、ついにたどり着いた。ゲームセンターに。休日だけれど、外は雪が降っている為、あまり人がいない。いや、人は全くいなかった。これは好都合だと思う。
「じゃあ、各自やって下さい。解散!」
何を言う訳でもなく、一応それだけ言って、みんながバラバラに散る。普段のゲームセンターならもっとにぎやかだろうけど、今はゲームセンターを貸切状態にしたような感じだ。とても気持ちがいい。
みんなそれぞれゲームをやっている中、一人だけその輪から外れてベンチに座っている人がいた。それは、言わずと知れている亜修羅だ。
「君、青少年が楽しまないでどうするんだね?」
「うるさいな。ゲームでもしてればいいだろ?」
「いや、亜修羅がしてくれないと意味を成さないんだって!」
「だから、俺はゲームは好きじゃないって言ってるだろう?」
「だって、亜修羅がゲームの方がマシって言ったんじゃないか」
「ものの例えだ」
「じゃあ、僕と勝負して勝ったら、もうしつこく迫らないから」
「・・・・内容は?」
さすが賭け事好き。と言うか勝負好き。やっぱり、相手の性格をわかってると操りやすいよね。
「カラオケで点数が高かった方が勝ち」
「あんのか?」
「もちろん。あるから言ってるんだよ」
「・・・・だからって、なんでカラオケなんだよ」
「亜修羅がどんな風に歌うのか聞いてみたかったから」
「・・・・断る」
ベンチの背もたれに寄りかかってしまった亜修羅を無理矢理立ち上がらせ、また無理矢理引っ張って行く。毎回引っ張ってて思うのは、亜修羅って、身長に比べると、体重が軽いなってこと。
「俺は断固として嫌だ」
「だめだよ、亜修羅に断る権利はないんだから」
「何でだよ?」
「色々事情が込み合ってるんだよ」
「・・・・おい、何でそんなに軽々しく引っ張ってるんだよ?」
「だって軽いもん」
「お前よりは重いけどな」
「ごちゃごちゃ言わん!」
変な口調になってしまったけど、あえて何も言わずに引っ張る。体重、いくつなんだろうか?物凄く気になる。
「ねぇ・・・・」
「そんなことは、どうでもいいだろう。お前よりは重いってだけだ」
「ねえねえ、石村さん。体重、いくつぐらいだと思う?」
「誰のですか?」
「修」
「なっ、何でそんなことを聞くんですか?」
「身体測定とかやってるかもしれないから」
「わかりませんよ。私は・・・・」
そのまま、友達達に視線を向けたところから、友達は知っているのかもしれない。不思議なことだよ、全く。
「そんなことより、やらないのか?」
「ああ、はいはい。じゃあ、まず僕からね。修は後から」
と言うことで、なぜだか置いてある機械で出た結果は六十二点。まだいい方だと思う。じゃあ、悪い時は?って聞きたいと思うけど、それは秘密だよ。情けないほど点数が悪いからね。
「じゃあバトンタッチ」
「・・・・本当に歌うのか?」
「もちろん」
みんなにはあえて聞いていないという素振りをしてもらっている。本気で聞こうとすると、絶対断られることは普通にわかる。
「・・・・歌う事に、何の意味がある?」
「聞いてみたいって言う立派な理由があるよ?」
「・・・・はあ」
僕の堂々とした態度に圧倒されてか呆れてか、ため息を付いた後、僕が出て来た扉の中に入って行った。その部屋は不思議で、扉を完全に閉めてしまえば音が全く聞こえて来ない。
防音と言うことだろうけど、僕には関係ない。ほんのわずかな音だけど聞こえた。まだまだ防音って言っても、ダメだね。
亜修羅は機械から吐き出された紙を普通にちぎると、外に出て来た。
「ほら、俺の勝ちだ。だから、とやかく言われる権利もなくなったぞ」
「でも、それが、亜修羅が出した結果だって言う証拠はないよ」
「まだ言ってるのか?お前、そこで聞いてただろう?防音って言ってもお前には聞こえたんだろう?」
「まあね、悔しいけど丸聞こえ。僕とは比べ物にならないくらい上手かった。それは認めるよ。数字も物語ってるしね」
「そう言うことだ。俺は好きにさせてもらうぞ」
「やっぱ、ちょっと待って!」
ベンチに戻ろうとする亜修羅の腕をつかんで止める。頑張って説得し倒せば大丈夫だと思う。
「何だ?」
「・・・・やっぱり、いいや」
約束は約束だから、やっぱりしつこく言うのをやめた。バカな賭けなんかしなければよかったんだけど、好奇心が先走っちゃったんだよ。
どうしようかと思いながらも射撃ゲームを始める僕。何かしら、好きなものがあると思うんだけど、僕にとってはそれがゲームなんだよ。
「凛君、さっき修さんと何かをやっていたようですけど・・・・?」
「ごめん。チャンスを逃しちゃった。せっかくのチャンスを泡にしちゃった」
「あの・・・・そんなにゲームが好きですか?」
「何でさ?」
「何だか、凛君がやっていると、ゲーム事態が面白そうに見えるんで。ゲームを楽しんでやってくれる人の影響だと思ったんですよ」
「そうなんだ。でも、僕は本当に楽しんでるから楽しんでるだけだしね。桜っちもやってみる?これ、対戦プレイが出来るんだよ」
「そうなんですか?じゃあ、ちょっとだけ」
それから何回かやっているうちに、こっちに向けられる視線を感じた。最初は誰かと思ったけど、目の片隅で捉えた時に、思わず笑ってしまった。なんだかんだ言ってはいるけど、やっぱりやりたいらしい。
「そんなにやりたいならさ、一緒にやろうよ!」
「いや、違う。俺はただ・・・・音がうるさいからそっちに目が行くだけだ」
「いくら言い訳しても無駄!一緒にやろう?」
今なら無理矢理押しても大丈夫だろうと思い、亜修羅を引きずって来て、桜っちには石村さんを連れて来てもらった。これで二対二のチームを作るつもりだ。
「これは二人の対戦プレイが出来るんだけど、それを二人ずつ。合計四人でやるんだよ。ステージは十ステージがあるから、五ステージずつやっていけばいいんだよ。それで、チーム分けは、僕と桜っち。修と石村さんでね」
「おい、それじゃ、あまりにも不公平じゃ・・・・」
「ちゃんとやれば僕らに勝てるよ。ああ、負けたら夕食は外食にしてね。みんなの分もおごってもらうから」
「おい!それじゃ、いくらかかるんだよ?」
「その為にがんばれ!」
まだぶつぶつ言いながらも、亜修羅は取りあえず僕の隣りに立ち、銃を構える。僕もそれに習って構える。
さぁ、バトルの始まりだ!