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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 烈火闘刃編 桜乱華の真実

「さぁ、またこうやって話が出来るようになりましたね」

「俺は眠っているはずだが・・・・」

「そう。今は、夢の中にいます。さっきは体ごと持って行きましたけどね。さて、どうして私があなたを呼び出したのか、わかりますか?」


「呼んだと言うか、あんたが俺の夢の中に入って来てるんだろ?」

「まぁ、そうですけど、細かいことは気にしないで下さい」


俺はため息をつくと、その場に座り込んだ。


夢の中だからか、体がいつもよりは軽い。ただ、感覚がないから、夢なんだと思う。


「それで、何を言いに来たんだ?」

「あなたは、まだ察していなかったようですね。『桜乱華』と言う技の真実を。私はてっきり、それを理解していて了解していただけたのだと思って喜んでいたのですが、頭脳種族と言っても、そこまでではないようですね」


ため息をつきながらそんなことを言われて、思わずムカッとする。


何が「頭脳種族と言っても、そこまでではないようですね」だ。お前は一体何様だ!俺は、こんなに疲れてると言うのに、そんなことを言いに来たなら、さっさと帰れ。俺の睡眠を悪夢でかき消そうとするな!


「ふざけるな!俺は寝る。これ以上俺の睡眠を邪魔するなよ」

「だから言いましたよね?ここは夢の世界。あなたは、現実の世界では眠っているのです。そして、ここで眠っても、夢の中で眠っている自分の夢を見るだけでしょう。そんなの、バカみたいです」


「じゃあなんなんだよ!俺の夢にまで潜り込んで来て。そこまでして伝えなきゃいけないことがあるのか?大したことじゃなかったら怒るからな」

「だから言ったじゃないですか。『桜乱華』と言う技の真実を教えに来たと」


そう言われて、ため息をついた。睡眠中に邪魔をされて、かなり興奮していたから忘れてしまっていた。


そう言えば、バカにされて怒ったんだった。思い出すと、バカみたいに思えて、恥ずかしくなる。


「とっ、とにかく、用件を話してくれ」

「わかりました。あなたがわかっていないようなので、率直に真実を言います」

「言えるなら、初めからそうすればよかったんじゃないか?」


俺が小声でボソッとつぶやくのが聞こえているだろうけれど、烈火闘刃は無視して話を続ける。こいつは、自分の過ちを認めたがらないタイプだ。そう言う奴の態度はどうもムカつく。


「『桜乱華』は、受けると幸せな気持ちになります。その理由を教えに来ました。この世の中には沢山の技がありますが、人を幸せな気持ちにするものは少ないです。なぜなら、刀を通して自らの気持ちを伝えることが出来ないからです」


烈火闘刃の説明を受けて、俺は、短くても一分近くは口を開かなかった。なぜなら、意味がわからないからだ。


刀を通して自らの気持ちを伝える?それはどう言う意味なんだ?率直に言うなら、もっとわかり易く言ってもらいたい。


「まだわからないのですか。あの技は、あなたの心です」

「・・・・心?」

「はい。あなたの心次第で、相手を幸せにするか、傷つけるかが決まるのです。そして、そのどちらにしても、あの技は多くの妖力を使い、心を使うのです」

「・・・・」


随分と面倒な技のようだ。しかし、心を使うとはどう言うことなのか。そこがさっぱりわからない。


「幸せや憎しみ。その全てが心で感じるもの。それが技として出て行くと言うことです」

「つまり、幸せを放ってるようなものか?」

「ええ。なので、あまり多様すると、自ら幸せを手放していることになりかねません」

「なんで、そんな面倒なことを早く言ってくれないんだ。おかげで、死ぬように眠る羽目になったんだ」


「だから、あんなに疲れていたのです。純粋であればあるほど、刀・・・・私と繋がることができ、威力が大きくなるのです。だから、純粋なあなたを選んだのですが、あなたは純粋な上に、無茶をしますからね。私が威力を抑えていなかったら、あなたは帰らぬ人となったでしょう」


そう平然と言い切る烈火闘刃を、俺はまじまじと見た。


こいつは、何て最悪な技を俺に託したんだ!あまり強く放ったら死ぬって、何なんだ?


ため息をついてその場に寝転がる。いつもなら、人の前で寝るなんてことはほとんどしないが、そのまま目を瞑った。


「現実逃避をしようとしたって無駄です。なぜなら、ここは夢の中でありますし、託した後ですから」

「そんなんじゃない。ただ、疲れたんだ」

「そうですか。それなら、後もう少しだけ言わせて下さい」


俺は、その問いには答えず、烈火闘刃に背を向ける。これで、話は聞かないと主張したつもりだが、通じていなかったらしく、平然と話し出した。


「『桜乱華』の威力は、気持ちを込めれば込めるほど大きくなります。あなたは、心の容量が普通の人の四倍近くあるので、その全てを込められたら、魔界の国宝と言われる私ですら耐え切れなくなります」

「まて、俺の心が普通の奴の四倍だって?」


「ええ。私が耐え切れなくなると、あなたは一気に心と妖力を使い果たし、二度と目を覚ますことはありません。だから、あまり心を込めないで下さい」


そう言って歩いて行こうとする烈火闘刃に背を向けたまま起き上がると、小さくつぶやいた。


「・・・・わかりずらい」

「あなたも素直なのはいいですが、面倒な人ですね」

「あんた、地獄耳って言われるだろ?」


俺の問いに、肩を軽くすくめると、再び話し出す。


「通常、私に込められた気持ちは、その人に支障が出ない程度に私が調節をして放ち、余った分は返しているのです。だから、正常でいられる。ただ、調節役の私が壊れてしまうと、壁がなくなり、込めた思いが全て出てしまう。と言う訳ですね」


そう言うと、「わかったか?」と言うように首を傾げて来る。


俺は、ため息をついてうなずくと、立ち上がった。


理解したのなら、こいつといる理由はない。さっさと一人になれる場所をさがさないとな。


「あなたが仲間と出会うまでは、あなたの心は、普通の人の二分の一でした。しかし、仲間と出合ったことで四倍にまで増えたのです。仲間に感謝して、これからも仲良くしなさい」

「・・・・ああ」


俺は、小さく返事をすると、歩き出した。


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