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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 烈火闘刃編 初めての実践

「族長、どこに行ってたんですか!?急に消えたと思ったら、急に現れて!」

「そう怒るな。俺だって、わざと消えた訳じゃない。烈火闘刃に呼ばれたんだ」

「と言うことは、もう一つの武器をもらったのか!?」


「いや、俺の場合は、技をもらった。これで平等にしているんだろう」

「どんな技だ?試しに、こいつに使ってみて下さいよ」


そう言う神羅の方を見ると、羽交い絞めにされている敵種族の奴がいた。転生種族はほぼいないから、こいつは、九十九パーセントの確率で、戦闘種族だろうな。


「ああ。しかし、お前の期待には百%答えられないだろうけど、それでもいいんだな」


神羅が、こいつを俺に倒させようとしているのはわかっていることだった。


しかし俺は、その期待に答えるつもりは一切ない。烈火闘刃と約束したのだし、何より、この技は、人を傷つける為の技じゃない。


「どう言う意味だ?」

「見ていればわかる」


俺はそう言うと、不満げな神羅を無視して、妖狐の姿に戻ると、俺のことを思い切り睨みつけている奴を見下ろした。


「殺すなら、さっさと殺せよ!」

「動くな!」


自棄になった戦闘種族の奴は、暴れ出して、危うく、俺じゃない奴に殺されそうになる。


俺がやめさせようとした時、暴れている男のケータイが落ちて、電話が来たことを知らせている。きっと、暴れたのと、バイブの効果で地面に落ちたんだろう。


俺は、男を羽交い絞めにしている奴がケータイを拾おうとしたのを手で制すると、それを拾い、電話に出る。


「誰だ?」

「・・・・あんたこそ誰なのよ」


そのケータイの声を聞いた途端、男の表情が驚きに変わり、慌てている。


俺は、その様子を確認して、男に聞いてみた。


「この女は誰なんだ?」

「俺の嫁だよ」

「そいつはどこにいるんだ?」


「あいつらは関係ないだろう!殺すなら、俺だけを殺してくれ!あいつらは関係ないだろ!」

「どこにいるのか。そして、何人家族なのかと言え」

「そんなこと、言えるかよ・・・・」


男が口を閉ざして違う方向を向くと、羽交い絞めにしている一人の方が男を殴った。


「やめろ。殴れとは言っていない」

「しかし・・・・」


反論して来る奴を、俺は睨みつけてやった。すると、おとなしく言うことを聞くようになった。


「俺は、出来るだけ乱暴なことはしたくない。だから、素直に言うことを聞け」


俺が間合いを詰めるように問いただすと、そいつは思い切り顔をしかめる。


「安心しろ。俺は、女や子供に手を上げるほど、最低な奴じゃない。お前が素直に言うことを聞いたらな」


そう言うと、そいつはため息をつくと、俺の目を真剣に見て来た。遂に、覚悟を決めたようだ。


「わかった。教える。その変わり、殺したら、お前らのことを一生恨んでやるからな」

「ああ、勝手にしろ。そして、どこにいる?」

「子供が二人と嫁がいる。場所は、ここの直ぐ近くだ」


そう言われて、思わず顔をしかめる。ここは頭脳種族の村。敵である戦闘種族が、よくこんなところにいられるものだ。


「この村の中か?」

「ああ、ここの建物の裏路地にいる」

「・・・・そうか。今から、そいつらをここに連れて来い」


「お前、やっぱり殺すんだな!」

「殺さない。それは約束したはずだ」

「うるせぇ、死ね!」


そいつは、脅威的な力で二人の妖怪を振り払うと、刀を構えて走って来る。


そして、そのまま突きを放って来る為、俺はそれを横に避けると、刀を蹴り上げた。


刀は宙を舞い、やがて、神羅の目の前の床に落ちた。


「これは、俺が預かっておくからな」

「大丈夫だ。こいつにもう、俺を襲う気力など残っていない。それに、俺は、もともとこいつらを救うつもりなんだ。それなのに、何を勘違いしているのか・・・・」


「族長、救うって、どう言うことだよ?」

「見てればわかると言っただろう」


俺はもう、全く抵抗をしない男の方を横目に見て言った。


それから直ぐに、出て行った男達が、女と子供二人を連れてやって来た。そして、体を縄で縛ろうとする為、俺はそれを止める。


「なぜですか、族長?さっきも襲われかけていたのに・・・・」

「俺は言ったはずだ。傷つけないと」


そう言って女達の方を見ると、女は、子供を守るようにしっかりと抱いている。


「嘘を言いなさい!あなたは私達の敵なの。そんなことを信用する訳ないでしょ!」

「ママ、来夢はどこに行ったの?」

「えっ?」


女がしっかりと抱いていた子供が言った途端、俺の足を何者かがつかんだ。一瞬驚いたが、そいつを持ち上げると、女の方を見る。


女が抱いている子供よりも幼くて、ハイハイがやっと出来るぐらいの年齢だから、種族争いのことなんて知らないのだろう。


「今だって、こいつのことを殺すことはいくらでも出来る。だが、殺していない。それでも信用出来ないか?」

「お願いだから、子供達だけは助けて!私は犠牲になってもいいから!」

「そんなことは言うな!!」


今まで冷静沈着だった俺が、急に怒鳴った為、周りの奴らが黙り込む。


俺はため息をつくと、取り乱してしまった自分に喝を入れた。


「とにかく、こいつはお前に返す」


何とか平静を取り戻すと、女に子供を返した。最初は警戒していたようだったが、ゆっくりと子供を受け取ると、泣き出した。


「これで、俺がお前らを殺すつもりがないとわかっただろう。だから、言うことを聞いてもらう」

「・・・・わかったわ。でも、この子達は殺さないで」


「俺が言った意味がわかってるのか?『殺すつもりはない』と言ったんだぞ?」

「信用できないわ」


ここまでやっても信用を得られないのは仕方がないことだ。なら、無理矢理やらせてもらう。


「わかった。そこを動くな」

「子供は・・・・」

「子供には幸せになってもらいたいだろ?」


俺はそう言うと、烈火闘刃を素早く振った。


こいつらを救えると言う確証はなかった。ただ、落ち着いていたのだけは確かだ。


しかし、それ以外は自分を信じるものがなく、目を瞑っていた。もし殺してしまったらどうしようと思った。


しばらくの間動かないでいたが、血の臭いがしない為、ゆっくりと目を開ける。


女達も、殺されると思って目を瞑っていたようだが、目を開ける。


風が部屋の中に吹いて、桜の花びらが部屋中に散らばっているのが見えるけれど、それ以外は、なんともなかった。


「族長、一体何をやったんですか?あいつ達が抵抗をやめましたよ」


近寄って、小声で話しかけて来る神羅の言葉にうなずく。


成功したようだな。


そう思うと、大きく息を吐いて、その場にしゃがんだ。なんだか、物凄く体調が悪い。


体に力が入らないと言うか、力が全て抜け出てしまったような感じだ。


「族長、大丈夫ですか?」

「・・・・」

「とりあえず、休みましょう」


神羅に肩を貸してもらい、何とか足を動かすけれど、体が物凄く重い。情けない話、一人じゃ立ってもいられないほどだ。


俺は、何とか布団まで連れて行かれると、そのまま、布団も被らないで目を瞑った。


物凄い睡魔が途端に襲って来て、布団を被ると言う単純な動作すら出来なかったのだ。


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