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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 烈火闘刃編 第一試練・・・・?

「おっ、騒ぎは収まったようだ。そろそろ外に出てもいいかもな」

「そうか」


神羅の後に続いて外に出ると、周りの景色が急に変わっていて、とても驚いた。

しかし、直ぐに思い当たる節を見つけて納得する。


きっと、凛の時と同じような国宝の試練なんじゃないかと思ったのだ。

しかし、烈火闘刃は手に入れたはずだ。それなら、何が俺を誘っているんだ?


不思議な思いをしながら、とりあえずは前に向かって歩く。

ここは暗闇の空間ではなく、普通の森だった。それだけなら、なんの問題もない。


しかし、一つだけ問題がある。それは、幼少期の自分に戻っていることだ。

これが現実なはずがない。だから、試練か何かだと思えたんだ。


《妖狐亜修羅よ、私はまだあなたを認めた訳ではありません。

ですから、試練を受けてもらいます。

もし、その試練を乗り切ることが出来たのなら、私はあなたを認め、

桜乱華(おうらんか)』を伝授します》


「・・・・それは、もう一つの国宝なのか?」

《いいえ。とにかく、試練を開始します》


「いや、俺は受けないぞ。

そんな変な名前の武器なんか使いたくないし、

何にしても、人の言うことを聞くのは嫌だ」


《問答無用です》


何だかとてもイラつく。しかし、少々意外だとも思った。


何が意外かって、烈火闘刃が女だってことだ。

そもそも、刀に性別なんてあるのか・・・・?

いや、そんなことはどうでもいい。とにかく、早く元の姿に戻りたい。


とりあえず、小さな体のまま森の中を走っていると、不意に森が燃え始めた。


突然の出来事に俺は全速力で森から脱出することしか出来なかった。

別に、誰が燃やしたと言う訳でもないのに、急に木が燃え始めたのだ。

しかも、物凄い業火だから、必死で逃げるしかない。


「くっ・・・・」


何とか出口が見えた時、直ぐ後ろまで迫って来た炎が近くにあった木をなぎ倒して

俺を押しつぶそうとした為、

何とか最後の力を振り絞って前に向かって飛ぶと、森の外に脱出した。

そのまま前転をして後ろを振り返る。


後ろでゴウゴウと炎が燃えているはずなのに、

なぜか森の外に出ると、熱さを感じなかった。


変だとは思いながらもとりあえず大きく息を吐く。

小さな体だと、いつも普通にやっていることが大きな負担になる。


さっきの動作でも、腕を思い切り打って、捻挫をしたようだ。


ため息をつきながら立ち上がると、どこへ行くともなしに歩き出す。

しかし、警戒は怠らない。また、いつ燃え出すかわからないからな。


しばらく歩いた時、不意に声をかけられた。


「ちょっといいかい?」

「ん?」


振り返ってみると、何だか不思議な雰囲気の奴がいた。


黒くて長めな髪にマントを着ていて、白いYシャツと黒いネクタイをしている。

わかりやすく言うと、洋風の格好だな。


普通の妖怪は着物とかをよく着用しているのだが、

こいつの場合は、どこかの貴族みたいな服装だ。


それにしても、体が小さいのに偉そうな言い方だ。本当に貴族なのか?


「お前は誰だ?」

「トップシークレット」


そう言って奴は笑う。


姿は子供なのだが、俺みたいに本当はもう少し大人のようだ。


それにしても、なんかムカつく。こいつは、一体なんなんだ?

トップシークレットってイラつく。随分かっこつけてるじゃないか。


「なぜ?」

「だって、君の名前も知らないから」

「じゃあ、俺の名前を教えたら、お前も教えるのか?」

「まぁ、いいよ。でも、僕に勝ったらね」

「なっ・・・・」


俺は、最後まで言葉を話すことが出来なかった。


なぜなら、一瞬の間に直ぐ目の前まで来ていて、

俺の方に刀を突き出して来たからだ。


その速さが尋常ではなく、避けるだけで精一杯だった。


「お前・・・・何が目的なんだ?」

「うーん、名前を教えないのが目的?」

「本気を出してるのか?」

「まぁ、そこそこかな?だけど、君は大変そうだね」

「うるさい!」


いつもと同じような口調で話しているのに、

小さいだけでここまで迫力がないとは・・・・呆れたものだ。


「と言うことで、僕の名前は教えない。でも、君の名前は教えてもらうよ」

「そんな理不尽が許される訳ないだろ!」

「でも、許されちゃうんだよね。僕って偉いから」

「なっ・・・・」

「それとも・・・・」


俺がそいつを睨みつけると、不意に真顔になって、目の前から消えた。

そう思ったら、不意に耳元で声が聞こえた。


「もう、この時点で殺されたいかい?」


耳元で言われたからかどうかは分からないが、

自然と悪寒が走って、そいつのことを突き飛ばす。


「おっと・・・・」

「近付くな!」

「よっぽど僕のことを嫌ってるんだね」

「当たり前だろ?理不尽な奴は嫌いだ」


「まぁ、いいけどね。どっち道、君と僕が仲良くすることは不可能だから」

「・・・・は?」

「そんなに教えて欲しいなら、僕の名前を教えてあげよう」


その言い方が生意気で、決してうなずくことはしなかったが、

あいつは勝手に教えて来た。


「僕の名前は、ケイ」

「そうか。なら、俺の名前も教えておこう。亜修羅だ」


俺がそう言うと、ケイは俺に近付いて来て、手を差し出して来た。


最初はどんな意味かわからなくてじっとその目を見ていたのだが、

ケイはチラリとこっちを見るから、やっと握手なのだとわかった。


俺は手を差し出すと、その手を払った。


「なっ、何するんだよ!」


「お前なんかと握手したくない。

そもそも、仲良くなるのは不可能だって言ったのはお前だろう。

だから、俺は仲良くなんかしない」


「そんなこと言っていいんだ~~。へぇー、後で困るのは君なんだぞ!」


急にガキっぽく怒り出す。

どうやって怒るのかと言うと、頬をこれでもかとぐらいに膨らませて、

そっぽを向いたのだ。・・・・アホらしい。


「何に困るんだ?」

「色々苦労するよ。可哀相に・・・・僕は偉いから困らないけど!」

「お前、敵なんだろ?そんなに友好的でいいのか?」

「敵とは言ってないよ。ただ、仲良く出来る運命じゃないってこと」


こいつの言っている意味は不明だ。敵ではないのに仲良く出来る訳じゃない。

・・・・それって、どう言う意味だ?敵だから仲良く出来ないんじゃないのか?


「それに、次に会った時には、こんなこと出来ないからね」


そう意味深に言って再び手を差し出して来る。

どうしても、握手をしたいらしい。


仕方なく握手に握手に応じると、直ぐに手を引っ込めた。


なぜなら、その手は、この世のものとは思えないぐらい冷たくて驚いたのだ。


「お前・・・・どうしてこんなに手が冷たいんだよ?」

「亜修羅君には関係ないよ。じゃあね、また会う時まで!」


そいつはどこかに行くのかと思ったが、不意に目の前から消えてしまった。


俺は驚いて、しばらくの間辺りを見渡していた。


いくら妖怪と言えど、一瞬で消えることなんて不可能だ。

それなのに、あいつは一瞬にして消えて見せた。どう言うことだ?


随分不思議な奴だった。


しかし、一番印象に残っているのは、その手がとても冷たいと言うことだった。


しばらくその場で考え込んでいたものの、

首を横に振ると、あいつのことは忘れることにした。


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