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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 月下遊蘭編 自分を好きになることは、とても大切なことです。

「だからって、殺したりなんかしない!誰よりも命の大切さはわかってるはずだ!そんなことはしていない!」

「いや、お前が全員殺したんだ。自分の気がつかないうちにね」

「!!!?」


そんなことはないはずだ。絶対にない。憎んだからって、殺すようなことは・・・・。


「お前は自分が殺したことにショックを受けて、自らの身を守る為に、記憶を書き換えたんだ。不慮の事故だってな。だから、親戚が引き取ってくれないのは当たり前だ。一人もいないんだからな。全員、お前が殺したんだ」

「違う!!」


取り乱して、影の方に突っ込んで行くけれど、簡単に弾き飛ばされてしまった。五メートルぐらい吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる。けれど、それよりも、心が動揺していて、対して痛みも感じない。


「違うって言っても、僕は記憶している。裏の感情の僕は、全ての記憶を覚えているんだ。ちゃんとな。お前は、二十五人を自らの憎しみの為に、見知らぬうちに殺してたんだ」

「そんなことはない!」


「現に、自ら近寄らない親戚だけは生き残っているじゃないか。それに、今のお前のダチも死んでいない。それどころか、事故すら起こらない。その理由は、満足してるから。そうだろ?」

「・・・・」


何も言えなくなる。僕は、本当に親戚の人達を殺して来てしまったんだろうか?そんな最低なことを無意識のうちにやっていて、平然と命のことを語ってたりしたんだろうか?


そう思うと、自分自身が更に嫌いになる。最低だよ、人のことを沢山殺して来たくせに、命を語るんじゃないよって言われちゃうよ。


「だから、お前は生きていない方がいいんだよ。あいつらのことを無意識のうちに殺したくないだろ?」


涙が出そうになる。あの人達のことは殺したくない。今までの人達のことみたいに、殺したくない。


よく思えば、親戚と言っても、あまりよくしてもらえなかった。だからって、殺していいはずがない。


「だから、ここで闇に溶け込んでしまえばいい。そうすれば、傷つけずに消えることが出来る」

「・・・・」


そっちの方がいいんじゃないかと言う気持ちが段々大きくなって来る。こいつの言っている言葉が事実かはわからないけれど、万が一のことがあるのは嫌だ。


僕みたいな最低な人間を笑顔で迎え入れてくれた人達を殺してしまいたくない。


「・・・・わかったよ。殺していい」


僕がそう言うと、影は満足そうに微笑んだ。


影とは言え、これは僕自身だ。と言うことは、僕は、死を望んでるのか?いや、それは違う。今の僕は、精一杯生きたいと思ってる。


凛君が帰って来て、「生きててくれてありがとう」って言われて、自分は生きてていいんだって初めて思えた瞬間から、精一杯生きようって決めたんだ。


そう思って影の自分を見た時、微妙にその表情が悲しみを帯びているのがわかった。


いや、表現がおかしいかな?影だから表情はあまり見えないんだけど、オーラと言うか、何と言うか、自然と悲しみの感情があるってわかったんだ。


「・・・・やっぱりダメだよ」

「どうして?お前は死を望んでるんだろ?」


そう言う影の表情が、怒りでも悲しみでもなく、焦りのように感じた。どうしてかわからないけれど、焦っている。


「違う。今、僕は幸せだ。だから、死なんか望んでない」

「でも、あいつらのことを殺したくはないだろ?」

「僕は、絶対そんなことはしていない。そう言いきれる。お前の方が記憶を書き換えてる。自らの罪悪感を晴らす為に、死を望んだ。でも、それだけじゃ、後一歩を踏み切れない。だから、そう思い込み、記憶すらも書き換えた」

「嘘だって言い切れるのか?」


僕の言葉に、影がうろたえて後ずさる。だけど、僕はその影に近寄った。


「言い切れる。僕は、自分自身を信じる。だから、やってないって思ったら、やってないんだ!」


僕の言葉に、ハッとした表情を浮かべるけれど、直ぐに表情を戻して、平気そうな顔をするけれど、明らかに僕を恐れている。


何だか、今ならわかる気がする。戦わずとして、自分自身を説得する方法。


影と言えど、僕自身なんだ。だから、僕自身を理解して、認めて、好きになればいい。自分を卑下して嫌っていたら、ダメに決まってる。認めてあげなきゃいけない。


「だから、もうやめよう、自分から逃げるのは。素直に好きになろうと思う。ごめんね、今までずっと嫌いだって言って跳ねつけちゃってて。苦しかったよね、だから、記憶を書き換えてまで、もがこうと思ったんだよね」


影の自分に近付いて行って、ギュッと抱きしめる。


すると、今まで強張っていた影の力が抜けて、フッと消えてしまった。


でも、最後に一瞬だけだけど、微笑んだような気がして、自分も微笑み返した。


その時、再び世界が光に包まれて、花畑に戻って来た。


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