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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 月下遊蘭編 試練

しばらく歩いたけれど、一行に何かが見える訳でもなかった。


そもそも、前に進んでるのかわからない。ちゃんと歩いてるって言う感覚はあるけれど、よくわからない。


多分、時間にして一時間以上は歩き続けていたと思う。そろそろ疲れて、その場に座り込もうとした時、今まで真っ暗な洞窟みたいだったのに、急に辺りが真っ白になったかと思ったら、花畑に一人ポツンと立っていた。


この突然の出来事にも驚いていると、不意に後ろから声が聞こえたものだから、僕は叫びそうになった。


情けないってわかってる。でも、やっぱり一人だと、平静でいられなくなるんだ。みんながいると、何だか安心して平静でいられるけど、一人になると、やっぱり不安だから。


《転生種族の族長か?》

「・・・・誰ですか?」

《雷光銃の対として作られたもう一つの国宝と言われるものだ》


そう言われて、あの話は本当だったんだと思う。


あの話と言うのは、もう一つの国宝の話だ。凛君を信じない訳じゃないけど、とても信じられる話じゃなかったんだ。だって、実は、もう三つあったなんて・・・・。まるで付け足すみたいにあるから。


でも、凛君の言ってたことは正しかった。凛君に、ふざけて、「桜っちのところにも、もう一つの国宝から呼び出されるかもよ?」と言われて、その時はないだろうなって思った。


なぜなら、僕は人間だから。妖怪のことは普通の人間よりは知ってるけど、一応人間と言う肩書きがあるから、魔界の国宝と言う大層なものが、僕なんかを呼んだりしないって思ったんだ。


凛君が言うに、あの冥道での出来事は、天華乱爪が自分を見つけさせる為に起こしたことなんじゃないかって言ってたけど、今なら、そう考えるのが妥当だと思う。


僕だって、ここがどこかはわからないけれど、完全に魔界とは違う空間にいるんだと思う。だから、呼び出されたと思った方がいいのかもしれない。


「・・・・そうですか。確かに、転生種族の方に族長だって思われていますけど、僕は人間です。それでも、僕を呼びに来たんですか?」

《そうだ。私は、種族争いが起こった時に、転生種族の族長を呼んで、力を試している》


「なんでそんなことをするんですか?そもそも、魔界の国宝と言われるようなものが、どうしてこんなところに・・・・」


《無駄話はいい。私がお前のことを認めれば、力を貸してやろう。しかし、お前が私を扱うにふさわしい力を持っていないとみなせば、お前をこの場で殺す》

「えっ!?」


僕は、かなり慌てた。だって、向こうから呼び出しておいて、認められなければ殺すって、酷くないかな?もしかして、今まで族長がいなかったのって、このことが原因?


《私を扱うのは、死を覚悟した者のみしか不可能だ。そんな生半可な気持ちで扱おうものなら、自ら死を招く。私に認められる自身がないのならば、この場を去るがいい。しかし、元の世界には戻れないけどな》


とても理不尽な話だ。急に自分のところに呼び出したかと思ったら、力を試すと言われて、認められなかったら殺すと言われ、自身がないならここを去ってもいいって言うけど、魔界には帰れない。


本当に理不尽だし、意地が悪いよ。


でも、そんなことを言おうものなら、力を試される前に殺されてしまいそうだ。


この・・・・そう言えば、名前を聞いてなかったな。


「あなたは、何と言う名前なんですか?」

月下遊蘭(げっかゆうらん)だ》


さっき言いたかったのは、この、月下遊蘭は、修さんみたいなタイプだから、怒らせると怖いと思う。だから、そんなに怒らせるようなことを言ったら、認められるも何も、その前に自滅しちゃいそうだよ。


「・・・・わかりました。どのみち、この試練は受けなくてはいけないようですね。だから、受けます」

《それでいいか?後戻りは出来ないぞ》

「はい。意を決めました。絶対に認めてもらいます」


姿を見せないから、声が聞こえた方向に、力強く言った。


《それなら、さっそく試練に向かってもらおう》


そう言われたかと思うと、周りが再び暗闇になって、しばくすると、再び明るくなったけど、僕が立っていた場所は、さっきの花畑ではなく、焦げくさいにおいのする山の中だった。


とりあえず歩き出すと、再び周囲が闇に包まれて、後ろから物凄く強い妖力の弾が飛んで来た。


それを慌てて避けると、今度は刀を振り下ろされて、これは何とかガードをする。


そして、二、三歩後ろに下がってから前に向き直り、驚くこととなった。なぜなら、自分自身がいるんだ。


影のように色はないんだけど、僕みたいにちゃんと動いてる。


「どうしているのかって思うんでしょ?」

「そんなこと・・・・」

「心が読めるのかって思ったよね」

「・・・・」


思った直後にズバズバと言い当てられるから、思わず目を逸らす。


「目を逸らしたって、僕には君の心が手に取るようにわかる。だから、攻撃なんてしたって無駄だよ。どこを攻撃しようとしているのかが読めるからね」

「やってみなきゃわからないだろ?」


そう強がるものの、心の中では怯えていた。


それを振り払うように、雷光銃を自分に向かって撃つけれど、軽々と避けられた。そして、反撃を食らう。


何とか着地に成功したけど、間もなく攻撃を繰り出されるから、避けることが出来なくて、何とかガードをするけれど、弾き飛ばされた。


「情けないね。沢山の人に見捨てられて、可哀相に」

「・・・・くっ」


うつぶせになったまま、こぶしを握り締める。そして、立ち上がると、自らを睨みつける。僕は、こいつが嫌いだ。自分自身が嫌いだ。


「見捨てられたと知って、沢山のやつ等を殺して来たんだろ?」

「そんなことしない!」

「嘘つくなよ。お前は、周りのやつらを憎んでた」


段々と、影の方が昔の僕の口調に戻っていることに気づく。だから、容赦がないんだなって思った。ならば、僕も本気で行こう


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