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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 月下遊蘭編 不思議な道

「ここが魔界ですか?」

「まぁ、そうだな」

「随分と雰囲気が変わりましたね・・・・。僕がいた頃とは別物です」

「それはきっと、田舎にいたんだな。普通だぜ?これぐらいは」


僕は、目の前に広がる人間界と同じような風景に、目を疑った。


なぜなら、僕が魔界にいた頃は、

一面が木や緑に囲まれてて、山の中と言う感じだったんだ。

僕らの学校以外は、周りに何もなかった。


それぐらい山奥のような場所がずっと続いてるのかなって思ってたから、

目の前に広がるデパートや高層ビル、ネオンなどに驚いていた。


「ほら、行くぞ」

「あっ、はい」


目の前の光景に驚いたいた僕に、冬眞が催促して来るから、慌てて走った。


僕とすれ違う人は、必ず僕の方を振り返って首を捻っている。

きっと、人間が魔界にいるから驚いているんだと思う。

普通は、魔界に人間がいることはないからね。


しかし、こうやって見ると、本当に人間界にそっくりなんだよね。

まるで、人間界と対の世界になってるみたいで。


区画の分け方が町じゃなくて村とかの違い以外、

人間界のものを全て持って来たような感覚だ。


そんなことを思って歩いていると、

前を見ていなくて、立ち止まっていた冬眞に思い切りぶつかった。


「いたたた・・・・。どうかしたんですか?急に立ち止まったりなんかして」

「そんなに余所見ばっかりしてると、スリを働く奴の標的になるんじゃないか?」

「そうですよね。魔界がずいぶんと変わってたからって、浮かれ過ぎですよね?」

「それから、これ」


そう言って投げ渡されたのは、雷光銃だった。


そう言えばこの人、僕達がデパートで追いかけてた人だと今気がついた。


「いいんですか?あんなに逃げてまで他の人に渡さないようして来たのに、

僕なんかにすんなり渡してしまって」


そう尋ねると、冬眞は少し考え込んだ後、

僕の腕を引っ張って路地裏まで連れ込み、声を小さくして話し始めた。


「種族争いのことは知ってるよな?」

「・・・・・はい。凛君から聞きました」


「そうか。なら、話は早い。

俺は、雷光銃を俺達の族長に渡す為に盗み出したんだ。

と言うことは、お前が族長だろ?だから、渡されるってことだ」


「でも、見た限りでは、

種族争いなんて起きているような兆しは見えないのですが・・・・」


道行く人々を見ても険悪な雰囲気になる訳でもなく、ただ普通に通り過ぎて行く。

これを見て、種族争いがどうのこうのなんて言われても、全く想像がつかない。


「見ただけじゃわからない。妖怪って言うのは、怒りを『勘』で感じるんだ」


・・・・難しい。勘で怒りなんて感じるのかな?


僕は妖怪じゃないから全くわからないけれど、一応冬眞の言葉を信じることにした。


「それに、こう言う便利な店が立ち並ぶ村とかはそんなことないが、

一部の村では、既に規制が始まってる」


「それって、どう言う?」

「まぁ、聞くより慣れろってことだ」


そう言われたかと思うと、冬眞は路地裏から出てしまったから、

僕もその後をついて行くと、さっきまでのにぎわった場所とは違い、

僕の知っている魔界の風景に変わった。


木が沢山あって、どこかの山奥にいるような感じ。


「しゃがめ」


どうして隠れなくちゃいけないのかはわからないけど、一応、言う通りにしておく。


「あそこを見てみろ」

「あっ、衛兵みたいな人がいますね」

「ああ。ここは、戦闘種族の領域。いわば、敵陣のど真ん中だな」


そう言われて、思わずうろたえる。


この人は、守るべき族長を敵陣の真ん中に連れて行ったんだ。

信じられないよね、普通。


そんな僕の心を察してか、冬眞が首を振った。


「大丈夫だ。護衛として族長についた時から、

俺達は本気で族長を守らなければならないからな。

自分の命を落としてでも守りきらなきゃいけないんだ」


「・・・・命をかけて守ってもらわなくても、僕だって戦えます。

元々は、妖怪退治の養成学校に行ってたんですから」


そう言う僕の言葉を聞いて、冬眞は驚いきの表情を見せた。


もともと根本的に敵だったと知ったからだろうね。

人間と言うだけで生き物が違うのに、

その上、自分を退治する為の学校に行っていたと聞かされるんだもんなぁ、

命をかけて守れと言われた族長に。


「そうなのか・・・・。じゃあ、もしかして、あの、有名な奴か?」

「有名って程でもないですけどね・・・・」


冬眞はゆっくりと僕の方を見ると、少しずつ距離をとる。


「なんで離れるんですか?」

「いつ退治されるかわからないだろ?」


「でも、君は僕の護衛をしなくちゃいけないんでしょ?

そんなこと許されないんじゃないかな?」


僕に言われて冬眞は苦しそうな顔をしながらブツブツと何かを言っていたけれど、

仕方なくうなずいてくれた。


「大丈夫ですよ。

もう卒業してますし、養成学校に行っていたと言っても、

今更妖怪退治の職業に就こうとは思ってないですからね。

今までだって、一度も妖怪を殺したことはないです」


「でも、俺のことは殴ったじゃないかよ・・・・」


ボソッと言う冬眞の言葉をあえて無視して話題を変える。


「あの衛兵がいる先には、戦闘種族がいるってことですよね。

それ以外の種族は門前で倒されて」


「いや、殺されてる」

「えっ?」


「一人でも人数が減れば、楽になるからな」

「そんな・・・・」

「それに、種族争いって言っても、あいつらだけの話だ。俺達のことなんか忘れてる」


「あいつらって、戦闘種族と頭脳種族だけってことですか?」


「ああ。俺達は人数も少ないし力もないし、頭も働かないから、

戦争以前に、存在すら忘れられてる。

だから、そんなやつらに俺達の存在をわからせる為ってのもあるんだ」


「・・・・そうなんですか」


それでも、種族争いなんてばかげてると思う。

その為に殺された人達はどうなるんだろうって。

殺された人の家族とかは悲しむと思うし、

何より、そんなことで命を落とすなんておかしいと思う。


「まぁとにかく、俺達の基地へ行こう」

「あるんですか?そんなの」

「ああ、一応あるんだ」


そう言って、身をかがめて後ろに歩き出すから、

僕も同じように身をかがめて歩き出す。


その時、視線を感じて見つかったかな?と思って振り返ったけれど、

そうではなかったらしくて、誰もいなかった。でも、視線は続いている。


何だか嫌な気分になってため息をついた時、不意に地面がなくなった。


「えっ!?」


一瞬何が起こったのかわからなくなって、気がついた時には真っ暗などこかにいた。


状況が全く飲み込めなくて辺りを見渡していると、

不意に持っていた雷光銃が光ったかと思うと、

ある一点を目指して光の道が出て来た。


よくわからないけれどここから出る術もわからないから、

とりあえず、その光りの道をたどって歩き出すことにした。


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