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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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とりあえず、魔界へ

部屋の中に入ると、そこにはテレビに釘付けになっている二人の人物がいた。一人は凛だとわかるが、もう一人は誰だか知らない。


「おい、凛。そいつ誰だ?」

「ああ、なんかね。僕を連れに来たんだってさ。でも、これを見終わるまで待っててって言ったら待っててくれてるから」


「いや、そうじゃない。誰だ?と聞いてるんだ」


「だから、この人も同じ戦闘種族の人なんだって。それで、国宝の使い手の僕を、戦闘種族のボスにしようってことで、魔界に行こうって話になってるんだ。それから、この人も冬眞と同じで、僕の護衛も兼ねてるんだってさ」

「名前は?」


「名前は?」

「錬賭」

「だって~」


テレビに夢中になっていて、ほとんどこっちの話は聞いていないであろう凛は、尚も目を離そうとしない。


「やっと終わった!じゃあ、行こうか」

「準備は?」

「大丈夫。じゃあ、ちょっと魔界に帰って来るよ」

「おい、ちょっと待てよ!」


出て行こうとする二人を慌てて止める。


「何さ?もしかして、僕がいないと寂しいとか?」

「そうじゃないが・・・・」

「じゃあ、ちょっと行って来るよ。敵になっちゃうかもしれないけどさ、お互い頑張ろうね」


そう言ってさっさと家を出て行こうとする凛を、なぜだか腹ただしく思えて来る。そんなにあっさり行くものなのか?


「そうだな、俺達もそろそろ行くことにする。族長、行こうぜ」

「でっ、でも、僕は人間なんですよ?」


「ああ。そんなの関係ない」

「えっ、あっ、あの・・・・。修さん、また!」


あっと言う間にみんながいなくなり、テレビの音だけが聞こえる。昔はそれが当たり前だったが、今は少し心細い。誰かと一緒にいることが当たり前になっていて、逆に一人になってみると強がってみるが、やはり寂しい。


無言で流れているニュースを見ていると、不意に窓が開いた。普通なら窓が開くなんて不自然なことが起これば驚くものの、俺は妖怪だから、差ほど驚かなかった。


「お~い、君。一人ぼっちで寂しくないですか?」

「・・・・」

「なぁ、聞いてるか?」


「・・・・」

「ふぅ」


そいつは初対面にも関わらず、普通に窓から部屋の中に入って来る。ずうずうしい奴だと思うが、何か訳があるような気がしてならない。とんでもないことに巻き込まれそうな感じの。


そいつはそのまま俺の横に立ち、座る。と言うのは、隣に座っていると言うことだ。


「誰だ?」

「俺は、神羅」

「何の用だ?」


「え~とですね。とりあえず、魔界に来てもらいましょうか」

「なぜだ?」

「まぁ、色々と事情があってな。いいか?」

「無理だ。俺はそんなに暇じゃない」

「族長~、そんなに俺のことを拒否らないで下さいよ~」


「やっぱりか。じゃあ、お前は俺を連れて魔界に行く。それと、護衛を任されたと言うことか」

「なんだ、わかってるじゃないか!」


神羅の言葉に思い切り気が沈む。俺は、自分の種族の族長になんかなりたくもないし、第一、種族争いなどに加わりたくもない。


「俺は族長になんかなりたくないし、それに、種族争いに加わる理由もない。しかも、俺は国宝なんて持ってないぞ?」


「・・・・俺だってよくわからないけどさ、今の族長が言うには、烈火闘刃の波長と族長の波長が似てるんだってさ。でも、まだ似てると言うところまでしかわからないから、一応確かめる為に俺をこっちに寄越したって訳さ」


「俺は、魔界には行かないぞ。色々と人間界でしなくちゃいけないことが沢山ある。それに、懸賞金をかけられている身でもあるしな」


妙に馴れ馴れしい態度がしゃくに触る場合もあるが、むしろそっちの方が俺にとっても楽かもしれないと言う結論がこの時初めて出た。


まぁ、話の内容とは全く関係ないけどな。


「大丈夫!俺が護衛するって言っただろ。ちゃんと守ってやるって!」


そう言って、バシバシと背中を叩く。


護衛の奴が守る奴のことを叩いてどうする?守られる奴から信用なくされると思わないのか?


「誰かに守られるのは好きじゃない。だから、魔界には行かない」


「それじゃあ困るんだよな。まだ本番ではないっぽいけど、結構本格的に戦争が始まっちゃってるんだ。だからさ、頼むよ!」


「・・・・もし、烈火闘刃と同じ波長でも、俺は、お前らの族長にはならないからな」


やっぱり、俺は弱いな。いや、甘いのか。頼み込まれると、やはり引き受けてしまう。これはいいことだとは思うが、何となく嫌だ。


「よし!じゃ、早速」


言うが早いか、神羅は俺の腕をつかんで立ち上がらせると、丁度目の前のテレビが置いてある方に手を向ける。すると、何とも不思議な、例えると異空間への入り口みたいなものが目の前に現れた。


「族長、しっかりつかまってて下さいよ!」

「お前が俺の腕をつかんでるんじゃないか」

「ああ、そうだった。異空間は流れが激しいからな。変な方向に流されるんだ」


「お前、妙に変なしゃべり方するな」

「気にしない、気にしない」


上手く受け流され、背中をドンと押されて異空間に無理矢理つっこまれる。


「おい、押すな!転んだらどうするんだ!」

「だから、異空間は宇宙みたいにフワフワするから大丈夫なんだって!」


神羅の言う通り、異空間の中は宇宙のようにフワフワと浮くし、銀河系まで見える。本当の宇宙じゃないのかと思う。しかし、異様なまでに変な方向から風が吹いて来るから、宇宙じゃないのかもしれない。それに、宇宙では呼吸が出来ないからな。


不意に何かを当てられる。すると、呼吸は出来たものの、ちょっと呼吸がしにくいと思ったが、呼吸が楽になった。


「それ、付けといてよ。呼吸が苦しくなっちゃうから」

「じゃあ、もっと早く出せよ」

「忘れてたんだよな~」


神羅につかまれている右手じゃない左手で、その不思議な細長いプラスチックみたいなものを鼻と口に押し当てる。


「ああ、それから、魔界についたらそれは必ず外してね。でないと窒息しちゃうからね」

「何だよ。これってそんなに危険なものなのかよ?」

「そうだよ。その中の空気は、この異空間の空気とは調和するけど、人間界や魔界では逆に反発しあうからね。つけてたら、一分で即死だよ」

「危険だな」


「こっちだよ。風に流されないように上手く体を傾けろ!」

「そんなこと言われてもな、簡単じゃないんだぞ!」


神羅に言われて反論するが、決して負け惜しみを言っているんじゃない。本当に横風が凄いのだ。頑張って体を前に直そうとしても、床がないから、体が上手く方向を変えなくて、右に流されて行きそうになる。


「頑張れ!」

「お前と違ってここに来たことがないんだよ!」


「俺が支えてるから向こうに行かないだけだな。しっかりつかまってろよってことだ。でないと変な方向に飛ばされるぞ。これでわかったか?」

「ああ、わかった」


神羅の言っていることがようやくわかり、突っ張ってつかまなかったら、きっと変な方向に飛ばされてただろうと痛感した。


「よし、飛び込むぞ!」

「どこに?」

「決まってんだろ!魔界じゃあ!!」


神羅が言った途端に、急に風の流れが横風ではなく追い風になり、目の前に大きな渦が見える。そして、そこにそのまま突っ込んで行く。


「空気マスクを外せ!」

「何だよそれ!」

「そのマスク!」


「ああ、これか!」

「ああ、それだ。返してくれ!!」


なぜ大声で話しているのかと言うと、風の音と言うのか、ゴウゴウと言う音が凄くて、近くにいるはずなのに、相手の声が聞こえない。スカイダイビングのような感じだ。


神羅に空気マスク(?)を返しても、もう息は苦しくない。あの異空間の世界を抜けたからかもしれない。


「もう直ぐ外に出るから、覚悟しといてよ」

「何で外に出るのに覚悟なんか・・・・」


そう言いかけた時、滑り台とウォータースライダーから滑り落ちたような感覚が起きた。


と言うのも、急に追い風が止み、景色も見えない程のスピードで下に落ちて行った。そして、そのまま何かの上に思い切り落ち、バキッボキッと音を立てて最後に地面に体を打ちつけた。


「うっ」


余りの痛みに中々立ち上がれない。背中から地面に落ち、背骨が折れたかと思った。地面は手触りからすると土のようだ。そして、今まで俺が落ちて来たのは雑木林のようだった。


隣で同じように地面に背中を打ち付けてうめいている神羅を見ると、あいつもどこに落ちるのかわかっていないようだった。それか、落ちる前に言った言葉からすると、覚悟とはこのことだったのか・・・・。


しばらく痛みにうめいていたが、動けるようになったので、まだ痛む体を無理矢理起こして隣でぶっ倒れている神羅に声をかける。


「おい、起きろ」

「起こして、体が死んでる!」

「自分で立て!護衛だろう」

「無理、背骨が折れた!」


「嘘付け、俺だって無事なんだぞ?」

「いや、マジ。本当。まずいって真っ二つになってる」

「じゃあ、起こさない方がいいだろう」

「いや、折れてはいないかもしれないけど、ヒビは絶対入った!」


辺りを見渡しても建物らしいものがないし、人気もない。随分と奥に落ちて来たようだ。


仕方なしに、うるさく喚く神羅を起こして背中を調べる。確かに変だ。折れてはいないものの、ヒビは入っている。


「確かにヒビは入ってるな。動けるか?」

「だから、無理だって!」


「大声を出すと、骨に響くぞ」

「はい・・・・」


確かに、動けるか?と聞く俺もおかしいと思い、神羅を担ぎ、とにかく歩き出した。どこに里や村があるかわからないが、とにかく進むしかない。


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