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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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寿司のネタは何が好きですか?

「二人とも仲良しだね!」

「うるさい。こいつとは仲良しじゃない」

「そうかな?凄く仲良く見えるんだけどな」


「早く入れよ」

「こっ、ここは、回転寿司ですか?」

「そうだよ。桜っちがお寿司が憧れだって言ってたからさ」


「いいんですか?修さん!」

「ああ、取りあえず、少なからず金は持ってる」


さっきの怒った時とはまるで違い、子供に戻ったようなはしゃぎぶりの桜木に、不思議な感覚を覚える。


「ゆっ、夢が叶いました!」

「よかったね。桜っち!」


「はい!」

「・・・・はぁ」

「何だよ、ため息なんかついて。この場に合わない行動するなよ」


二人が喜んでいるのを裏目に、冬眞が深いため息をつく。その理由は全くわからない。突然ため息をつかれては、わかるはずもないだろう。


「・・・・寿司に憧れているって言うのは可哀想だなって思ってな」

「そうか」

「それだけか?」


そのまま冬眞を置いて行こうとすると、声をかけられる。こいつが話しかけて来るから凛に仲がいいと思われたんだ。


「じゃあ、何て答えればいい?」

「・・・・先に入っちゃったぞ」

「そうか」


「お前、本当にあっけないと言うか、無愛想だと言うのか、つまんねぇ奴だな」

「そうか」


そんなことは言われ慣れている為、差ほど気にもしないで冬眞を置いて店に入る。


「お寿司が回転してますね」

「そりゃ、そうだろう。回転する寿司なんだからな」

「便利ですね」


「そうだな」

「ねぇ、何皿まで食べていい?」

「・・・・好きにしろ」


少し考えてみたが、一皿がいくらなのかも知らないし、最悪、持ち金が足らなかったら、凛に持って来てもらおうとも思っている。


「いいの?お金足らなくならない?」

「なったらお前が取って来い」

「何でさ!」


「食後の運動だ」

「えーー、やだなぁ~」


ぶーぶー言いながらも、食う気まんまんの凛をほおっておいて、店の外を見る。


「・・・・何で入って来ないんでしょうか?」

「お前が怖いんだよ、きっと」

「・・・・そんなに僕って怖いでしょうか?」


「さあな。自問自答してみろよ」

「ちょっと呼びに行ってきます」


そう言って桜木は店を出て行き、外で立ち往生している冬眞と何かを話している。


数秒後、桜木に連れられて入って来た冬眞は何ともなかった。


「丁度席が開きましたので、こちらへどうぞ」


店員の後について行き、六人ぐらいが座れる椅子に座る。席順は、俺の隣が凛で、向かいが桜木、斜め右が冬眞だ。


凛が、桜木に回転寿司の説明をしている間、俺はずっと回って行く寿司を見ていた。


座ってから思ったのだが、説明をするなら、隣か向かいの方が話しやすいだろうに、なぜ斜めに座ったのかが不思議だ。


「えーっと、取りあえずは食べよう」

「でも、その前にすることとかないですか?」

「何をするのさ?」


「よくわかりませんけど・・・・」

「あ、亜修羅、お茶作って!」


そう言って、俺の目の前に茶葉が入った入れ物をドンと置く。


作れって言われても、作ったことがないし、桜木と同様に回転寿司など来たことがない。


「作るって、どうやって・・・・」

「ここからコップを取って、そこにそれを入れて、このレバーにコップを押し付ければお湯が出るから」


それとかこれとかの言葉が多すぎて、あまりわかりににくかったが、取りあえず寿司が回転しているところの上から湯のみを四個取り、適当に茶葉を入れて行く。それから、、湯のみを突き出ているレバーみたいなものに押し当てると、煙を立てて湯が出て来た。


「ほら」


四人の前にそれぞれ湯のみを置き、何とか茶を入れ終わる。あんなレバーを押すと湯が出て来るなんて、便利だと思ったことは口にはしない。


凛と桜木はとっくに食べているが、何だか食う気になれない。隣でドンドン食べられると、こっちの食欲が失せて来る。それに、魚はあまり好きではない。しかも生だ。焼いてすらいない。未知の味を、人間はよく平然と食えるものだ。


「あれ?食べないの?」

「お前が食ってるのを見てると、食う気が失せる」


「そうかな?僕はまだまだ大丈夫だけど」

「まだ食うのか?」


平然と言う凛の目の前には、すでに皿が山になって積まれている。たった短時間でここまで食べられると、むしろ吐き気まで呼び起こされる。


逆に桜木はと言うと、あそこまで喜んでいた割にはやっと一皿完食と言った様子だ。


「・・・・よく、そんなに食えるな」

「えっ、だってお腹空いてたもん」

「だからって、そんなに普通は食わないぞ」


周りのお客も、凛の食べっぷりに驚きを隠せないようだ。そんなことはお構いなしにどんどん食べ続ける凛は、ある意味凄い。


「亜修羅も食べれば?」

「俺はいい。食うものがない」

「どうして?」

「寿司は食えないし、他は甘いものしかない」

「じゃあ、ご飯だけ食べれば?ネタは食べてあげる」


「・・・・それって、ただ単に酢飯を食ってるだけじゃないか」

「わさびもあるよ」

「そう言う問題じゃない!」

「だって、食べないとお腹空いちゃうよ」

「まあ、そうだな」


そう言う訳で、酢飯だけを食うことになった。


ネタと酢飯の間にあるわさびがネタを取られたことで、一番上に来ているから、わさびがネタのような感じがして、少し寂しい。


「そう言えば桜っち、あんまり食べてないね。それもサビ抜きだし」

「辛いのは食べられないんです。だからサビ抜きのを。だって、わさびの部分だけ取るのって汚いでしょう?」

「うん。一理ある」


一人は大食いで一人は小食。一人は食べずに、一人は酢飯だけを食う。なんだか変な連中だと思われても仕方がないだろうが、そんなの関係ない。大勢の注目を集めているようだが、別にいい。


結局俺は酢飯だけを十四皿、桜木は三皿、凛は数えるのが面倒だったが、店員が数えたのを聞くと、四十三皿だったらしい。意外と少なかった。


「意外と少なかったな」

「まあね。遠慮したんだ。本当は倍以上いけたけどさ」


「遠慮するならもっと遠慮しろよ」

「まあまあ、ご馳走様でした♪」


席から立ち、入り口の隣にあるレジで会計をする。


「九千四百二十七円です」


案外安いことに驚き、これなら余裕だったな、なんて思いながら一万円札を渡し、お釣りを受け取る。


「何でそんなに金を持ってるんだよ?普通の高校生なんか、一万円をサラッとなんか出せないぞ?」

「色々と事情があるんだ」


「特にバイトとかしてるようにも見えないけどな」


その時、閃いたものがあった。雷光銃を返してもらう方法を思いついたのだ。


「さっきの一万円札を一万枚集めるといくらになる?」

「・・・・一億だけど?」

「それの倍は?」

「二億?」


「俺は、夜に何でも屋をやってる。実は、今大変な依頼が来てな。合計よっつあるんだが、それの一つだけで一億がもらえるんだ。そのよっつの依頼と言うのは、『雷光銃』を探し出す。その持ち主をみつけること。それから、『烈火闘刃』を探し出す。その持ち主を見つける。このよっつが条件なんだ。

それで、今、お前が雷光銃を持っている。それをこっちに渡してくれたら、雷光銃分の報酬をやろう」


「本当か!?」

「ああ、金なんか腐るほどある」

「いくらぐらいあるんだ?」


「さあな、随分溜まったんじゃないのか?いろんなこともして来たしな」

「・・・・おい、お前、懸賞金の奴じゃないか!」

「今更気がついたのか?」


「ああ。でも、いいのか?こんな呑気に人間界での生活を堪能してて」

「大丈夫だ。襲って来た奴は片っ端からねじ伏せる」

「・・・・真顔で恐ろしいことを言うなよ」


呆れと疲れが一気に出たような感じでため息をつく冬眞。しかし、そうでもしないと生きてはいけない。


「いいのかよ?俺だって、いつお前のことを襲うかわからないぞ」

「そうだな。しかし、何となくやらない気がする。まぁ、来たらこっちも死ぬ気で抵抗するけどな」

「げっ・・・・」


「そう言うことだ。寝首をかくようなことはするなよ」

「しねぇよ」


ブツブツ小声で言っているところからすると、そんなことも考えていたようだが、俺に釘をさされて諦めたらしい。


「あっ、テレビ!もう始まっちゃってるよ!亜修羅、鍵!」


急に鍵を出せと言われて少しうろたえたが、鍵を渡すと、凛はさっさと先に走って行ってしまった。よっぽど見たいテレビだったのか。


「あいつ、いっつもどんなテレビを見てるんだ?」

「そうですね・・・・。ドラマとか、アニメとか、バラエティーとか。色々見てるみたいですよ」

「アニメとか・・・・まだ見てるのか」


「そうですね。主題歌とかノリノリで歌ってたりしますし、踊りとかがあると一緒に踊ってますし」

「・・・・あいつの精神年齢、いくつだよ?」

「大丈夫ですよ、同じクラスの子でもアニメを見てる子がいますから」


現代の中学三年生がそんなに子供じみているとは思ってみなかったから、新しいことを知ってよかったのだろうけど、あまり特した気分にはなれない。


「それで話は戻るが、それでいいよな?」

「何だっけ?」

「だから、雷光銃の話だ」


「ああ、その話だけどな。やっぱり無理だ。それを渡しちまったら、俺達の種族は滅びることになるだろうしな」


「・・・・依頼主は、魔界の王族の奴だ。そいつはきっとに種族争いごと抹消するらしい。それぞれ種族の持ち合わせている武器を奪えば、そう大きな戦争にはならないだろうと考えていると思うんだ」

「要するに、戦争のダメージを小さくするってことか?」


「そうだ。ただでさえ三種族が争いを起こすと言うのに、それに魔界の国宝まで関わって来ると、さらに被害は大きくなる。もしかしたら魔界をも越えて、人間界にまで害が及ぶかも知れない。無意味な奴らを巻き込む訳にはいかないだろう?」


「そうだな。でも、そうなったら俺等は勝ち目がないぞ。頭脳種族や戦闘種族と違って、人数が大幅に少ないんだからな」


「そもそも、何で種族争いなんかなるんだよ?仲良くしておけばいいだろう?」

「さあな、俺にもよくわからない。ただ、種族の族長同士の争いが・・・・」

「ちょっと待てよ、国宝の使い手がボスじゃないのか?」


「それは、今までの年寄りの族長どうしでの戦いだ。国宝の使い手は、新しい族長ってことだ」

「・・・・ああ、めんどくさいな」


聞いているだけでめんどくさくなりそうな説明を受け、余計に種族争いが必要な理由がわからなくなって来そうだ。なぜ、種族争いの理由も知らないのに、冬眞は自分の種族のために行動するのか。


「お前は、何で種族争いの意図も知らないのに、そこまで自分の種族のために行動するんだ?」

「そりゃ、自分の種族を助けたいと思うのは当たり前だろう?」


「俺は自分の種族がどうなったって関係ない」

「ひっでぇな」


冬眞の言葉を無視して家のドアを開けようとしたが、鍵がないことを思い出し、インターホンを押す。


「開いてるよ?」


家の中から凛の声が聞こえる。手が話せない状態(いや、目が放せない状態なのかもしれない)なのか、そのまま声をかけられた。


ドアを開けてみると普通に開いた。無用心にも程があるが、とりあえず中に入った。


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