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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 雷光銃編 族長と護衛

「さぁ、行こうか」

「どこにだよ?」

「決まってるじゃん。回転寿司!」

「なんで今なんだよ?」


「いいじゃん。ほら、ストーカーも一緒に!」

「俺はストーカーじゃねぇ!」


凛が、さも居て当たり前のように、後ろの電柱に手招きをする。そこから出て来たのは、冬眞だった。


「加藤涼護、何をしてる?」

「まあ・・・・色々とな」

「俺等を追い掛け回してるのか?」


「違う!見張ってるんだ!!」

「誰を?」

「お前だ!桜木明日夏!」

「ぼっ、僕ですか?」


指を指され、驚きを隠せずにいる桜木に向かって、冬眞はうなずく。なぜ、妖怪でもない桜木を。


「ず~~~っと傍にいてわかったが、雷光銃と波長が同じだ。だから、お前が俺達、『転生種族』のボスだ!」

「・・・・ず~~~~っと傍にいたって、どれくらいの範囲でですか?」


桜木の、全くもって状況に合わない問いに、冬眞だけはついて来られたようで、顔が真っ赤になった。これは・・・・どう言う意味だ?


「それは、時々だ」

「時々ってなんですか?」

「いや・・・・」


「おい、桜木。そんなことよりも『転生種族』のボスだってことの方を問えよ」


「そんなことはどうでもいいんです。何とかなりますから。ただ、この人がどこまでのストーカーなのかと言うことが先決です!とても重度ですね。これは、僕が根性を叩きなおしてやらなきゃな・・・・」


桜木の目が真剣で、狙われていない俺ですら怖い。それに、本気で怒っていて、顔には笑みまで浮かべている。


・・・・こいつ、滅茶苦茶怖い。


桜木は、冬眞の腕を驚異的な力で引っ張り、電信柱をつかんで嫌がっていた冬眞を引きずり、前の四つ角の一角に引きずって行った。


それからの出来事は見ることは無かったが、とても恐ろしいことだったことは把握出来る。


「そう言えば、僕が『転生種族』のボスって言ってましたよね?このストーカー」

「桜っち、やっとその事実に行き発つの?」

「まぁ、驚いたんですけど・・・・凛君の件がありますから、大体は想像がついてました」

「凄い広範囲で想像がつくんだね」


凛達がそんな会話をしている間、俺は、四つ角から出て来た冬眞を見る。


「変態だな、お前」

「違う!勝手に想像しているようだが、俺は変態じゃないぞ!そもそも、訳がわからないと言ってたんじゃないのか!凝視なんかしてないからな。波長を測るのに忙しかったんだからな!」

「そうか、それなら、どうして顔が赤くなったんだ?」

「それは・・・・照れ屋なんだよ。人にじっと見られるのが苦手なんだ」


冬眞の言い訳を冷たい視線を向けながら聞いた後、一言言って歩き出した。


「負け犬の遠吠えは聞き飽きた」

「だから・・・・」

「亜修羅、行こう。すぐ近くに回転寿司があるから!その・・・・涼ちゃんも一緒にさ」


「涼ちゃんって、こいつか?」

「そうそう。悪い人じゃなさそうだしね」

「僕はあまり気が乗りませんけど、さっきあれだけやったので大丈夫だと思いますし」


桜木の言葉に、あの時のことを思い出したのか、凛がそろそろと前を向いたまま後ろに歩いて来る。


「桜っちって、意外と残忍だったんだね」

「まぁ、見た目はああでも、妖怪退治屋の養成学校に行ってたんだから、あれくらいは当然だろう。妖怪に同情はいらないからな。むしろ、残忍さが必要だ」


「あははは、そうかもね」


前を歩く桜木の方に走って行く凛。その後ろでは、なぜか俺と冬眞が並んで歩いている。


「変態だな、お前」

「二度も言うな!俺はあいつの護衛をするように頼まれたんだからな!」

「だからって、そうベタベタくっつくもんじゃない」


「だから、違うって言ってるだろう!」

「ふん。呆れるな」

「誰も俺の話しなんか聞きやしねぇ」


寂しそうに言う冬眞を横目に、俺は内心面白く思っていた。冬眞をからかうと面白いと言うことに対して面白いと思ったのだ。だから、ほとんどはからかっているだけだが、少しだけ本当の気持ちも混じっている。


「なぁ、伊織」

「なんだよ」

「幸せだな、お前は」

「どこが?」


「毎日の生活の中で、一人になる時なんてほとんどないだろう?」

「まあな」

「羨ましいぜ、ずっと一人で生きて来た俺にとっては。話を聞いてくれる奴すらいないんだからな」


そう言う冬眞は、ふざけた様子はほとんどなく、無表情なのだが、悲しさが混ざったような様子が伺えた。


「・・・・話ぐらいなら、いつでも乗ってやるよ。だから、もう一人だって思うな」


自分でも驚きの言葉を話している。そんなことは思ってもいなかった言葉だ。まだボソボソと言う感じだったから、聞こえない方が幸いなのだが。


「・・・・意外だな。お前から、そんな言葉が聞けるとは」

「・・・・」


恥ずかしくなってうつむく。

何てことだ!丸聞こえだったなんて。これは一生の不覚だ。


「まっ、ありがたくその言葉を受け取るぜ」

「受け取るな。聞き流せ」

「ありがたく受け取るぜ」


馴れ馴れしく肩に手を乗せて来る冬眞の手を払いのけ、恥ずかしいとも呆れたとも言えない気持ちで道路を歩いた。


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