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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 雷光銃編 神様からのプレゼント

犯人が捕まり、事情聴取をし終わった帰り道。


「ねぇ、なんであんなに怒ったの?」

「・・・・」

「いつもだったらさ、冷静なのに・・・・。何だか、やけに熱が入っててさ」


「・・・・」

「何か、亜修羅らしくない気がする」

「・・・・悪い」


「ほら、そう言うところ!いつもだったらさ、絶対、断固として謝らないのにさ!今日の亜修羅って、何だか変だよ。どうしたの?」


そう言われても、自分でも何だかよく分からないが、あの時はムキになり、今は気がしぼんだようにどうでもよくなっている。いつもなら謝る事だって滅多にしないのに、こうも簡単に謝っている。


自分でもわからないから、逆に聞きたい方だ。


「いや、別に変わったところは無いけどな」

「・・・・哉人君が居る病院に行く?」


「行ったって意味がないだろう?」

「まあ、気にしないで。行こうよ」


凛に流されて、さっきの病院から一番近い病院に行く。


病院内は、正面に受付があり、椅子が並べられている。そこに、患者か付添い人が座っていたりする。パジャマを着て松葉杖をついて歩いて行くような人もいるから、きっと患者も普通に歩き回っているんだろう。


「ここからはどうするんですか?」

「一応看護婦さんに聞いてみようよ。それでまだだったら、根気よく待つ!」

「待つのか・・・・」

「そう。じゃ、ちょっと聞いて来るよ!」


凛は大きな声でそう言うと、手を振って受付の方に走って行く。


「・・・・元気出して下さい」

「?」

「あっ、えっと・・・・。違いましたか?」


凛が受付に聞きに行った十五分後くらいに、桜木が不意に声をかけてきた。


「何が違うんだ?」

「あの、僕はてっきりショックを受けていたと思ったんですけど」

「・・・・それも一理あるかもな」


「大丈夫ですよ、哉人君は助かります。お母さんだって、無事に冥界にたどり着いたと思いますよ。凛君が冥界送りをしてくれたので」

「そんな名前だったのか?」

「よくは知りません。でも、そんな感じだったような気もします」

「じゃあ、違うかも知れないんだな」


「そうです。それより、大丈夫だってことを言いたかったんです!違うかもしれないと言うことは、ほおっておいて下さい!結構、こう言うのは苦手なんですから!」


急にムキになった桜木を見て、自然に笑いがこみ上げて来る。本人には悪いが、かなり笑える。どこも笑える要素はないのだが、笑えて来る。


「何で笑ってるんですか?」

「・・・・笑ってないぞ」

「わかりますよ、必死に笑いを堪えてるように誰が見ても見えますよ」


「・・・・」

「でも、少しは元気になってもらえてよかったです」

「・・・・」


それからしばらくの間、ずっと笑い続けていた。


「まだ、笑いが止まりませんか?」


五分後くらいに桜木が話しかけて来るが、話せば笑いが堪えられなくなりそうで、無言のままうなずく。


「・・・・何にもしてないんですけどね・・・・」

「あれ?何で笑ってるの?」

「ああ、凛君。なぜだか急に笑い出してしまって。僕も困ってるんです。まぁ、それほど困ってないんですけど・・・・」


「いいんじゃない?これもちょっと違うけど、さっきまでの亜修羅よりは、亜修羅っぽいし」

「難しいですね、その言葉」

「そうそう、哉人君はね、もう意識が戻ってから結構時間が経ったから、会ってもいいって!」

「そうですね、あれからかなり時間が経ちましたからね」


やっと笑いが納まり、壁にかかっている時計を見ると、九時近くになっている。随分と長い間事情聴取されたものだ。


「あっ、納まったんだ」

「ああ。何とか」


「じゃあ、病室に行こうか。ちゃんと病室の番号を聞いて来たしさ」


凛に連れられ、隅にあるエレベーターで四階まで上り、ある病室の中に入る。そこの一番奥に哉人はいた。


「大丈夫?」

「うん、僕は何とか大丈夫。あんまり深く弾が入ってなかったらしいよ。でも、お母さんが・・・・」

「・・・・会いたい?」


「そりゃ、もうずっと前から話も出来なかったしさ、会いたいけど・・・・。死人を蘇らせることなんて・・・・」

「おい、凛・・・・」


哉人のそばに歩いて行く凛の肩をつかんで止めたが、振り払われる。


考え無しだものな、こいつは。後でどうなっても知らないぞ、俺は。


「ちょっと出て来るね」


そのまま、廊下に出て行ってしまったのだが、どんな策があると言うのか・・・・。


数秒後、普通の顔で入って来た凛と、もう一人。こちらはぼやけているが、確かに哉人の母さんらしき人が見える。しかし、哉人には見えないようだ。


「ごめん、またちょっと出て行くね」


凛に袖を引っ張られ、そのまま訳がわからずに病室の外に連れ出される。


あれは、凛が本当に呼び出したのだろうか?


「さっきのは・・・・」

「そうだよ、哉人君のお母さん。だけど、僕らがいるとさ、話しづらいし。それに、知らないふりをしてればさ、僕が呼んだなんてわからないよ」


「何だか不自然だけどな」

「そこは、ご愛嬌でカバーをする」

「愛嬌だけでカバー出来る問題じゃないけどな。バレたら」


どうも気の抜けている凛に言葉を返すが、本人は全くと言っていいほど気にしておらず、病室の外に置いてあるアルコールで消毒をしている。


「おい、また部屋に入るんだろう?」

「大丈夫。出て来た時に、またやればいいよ」

「今さっきやって入ったばかりじゃないか」


「臭いけどさ、水が溶けるから面白いんだよね」

「溶けるって言うのか?」


俺の疑問を無視して、明らかに無駄な量を出しまくっている。そんなに出したら、いつの間にかなくなるものもなくならないだろうと思う。それに、医師や看護婦が通ったら注意されそうだ。


「もうそろそろ行こうか?」

「アルコールは?」

「大丈夫」


何が大丈夫なのかわからないが、凛が開けろとばかりに足で病室の扉を蹴るので開けてやる。


中では驚いた顔の哉人だけが残っていた。


母さんは冥界に戻ったのだろうか?


「どうしたの?そんな驚いた顔をしてさ」

「おっ、お母さんが・・・・お母さんが来て、『ありがとう』って」


震える指で、ベットと棚の間に置いてあった椅子を指差している。


「えっ!?本当?」

「おい、うるさいぞ。他に患者がいるかもしれないだろう」


大声をあげて驚く凛は、芝居をしているとは思えないほどの驚きようだった。

・・・・もしかしたら、出来るって確証はなかったらしい。


「うん。僕も信じられなかった。寝ぼけてたのかと思ったけど、ちゃんと手を握ってくれた時、体温を感じたしさ。だから信じる。神様が最後にお母さんに会わせてくれたんだと思うことにしたんだ」


「そっか!よかったね!!」


「うん。お母さんがお父さんのことを恨まないであげてって。私も恨まないからって言っててさ。なんだか、それまでお父さんに抱いてた気持ちが軽くなったんだよ。お墓が出来たら、今度お墓参りにでも行こうかな?って思っちゃったぐらいにね」


「そっか!よかった・・・・!!」


さっきと同じパターンだと感じたのか、びっくりマークを後につけた様子。それに、他にいるかもしれない患者にも気づかったのだろう。


「ありがとう」

「?」

「何か、随分とお世話になっちゃったしさ、それに励ましてくれたりもしてね」

「ああ・・・・、そんなに気を使わないでよ!また今度遊びに来てね」

「ありがとう」


「じゃあ、僕らは帰るね。お大事に」

「大丈夫。明日には退院出来るんだって。今日は一応様子見ってことでね」

「そっか。じゃ!」

「あっ、また」


「じゃあな」


凛に引っ張られ、何とか扉が閉まる前に別れを言う。病院内では凛に引っ張られてばっかりだ。


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