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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 雷光銃編 殺し未遂

学校が終わって家に帰ると、先に帰っていた凛達がいた。


「あのさ、色々調べてみたんだけど、わかったよ。哉人君のお父さんがいるところ」

「そうか、随分速かったな」


「うん。これからそこに行くところなんだ」


凛の言葉を聞いた時、哉人の体が震えたような気がする。きっと強がってはいるが、怖くて悲しいんだろう。何とも思えない心の渦がグルグルと回っているんだろう。魔界を出て行く時、俺が感じたように。


「いいのか、哉人」

「う・・・・ん。せっかくわかったんだ。だからさ、行かなくちゃ。嫌と思っててもさ」

「なら、さっさと行くぞ」


「亜修羅を待ってたのにさ~」

「早く案内しろ」


ぶんぶくれる凛を無視して、さっさと家を出て行く。まぁ、どこなのかは知らないから、歩くことは出来ないが。


凛と桜木を前にして、あるアパートにたどり着いた。外見だけでは普通のアパートと差程変わらない。ここにいるってことか。


「ここだよ、ここにいるはず」

「どうやってここにいるって知ったんだよ?」

「情報網だよ。とにかく行こう」


先に階段を上って行く二人の後から、俺も階段を上ろうとする。しかし、哉人が上って来ない。


「行くぞ」

「・・・・」


下を向いて、歩こうとしない哉人を促すと、無言で首を振った。足がガクガク震えている。


やっぱり、怖いか。


「・・・・大丈夫だ。俺がついてる」


小刻みに揺れる哉人の頭に手をのせる。驚いたように上を見上げる哉人の振るえは、大分納まって来ている。


「うん。ありがとう。お兄ちゃん」

「心の準備が必要ならば、それまで待ってるが・・・・」

「大丈夫。ここに来るまでに準備は出来てたけどさ。足が竦んじゃって」

「行けるか?」

「うん」


階段を上って行くと、奥のドアの前で二人が待っていた。


「大丈夫?」

「ああ」

「じゃあ、インターホン押しますよ」


桜木が押したインターホンの音が聞こえる。それから、ドアが開かれた。


「あなた達、どなた?」

「あなたですか?」

「は?」

「だから・・・・」


その時、奥から男が出て来た。哉人によく似た男だった。


「かっ、哉人!!!?」

「お父さん・・・・」

「まさか、あなた!」


「ちっ、違う。これは・・・・」

「裏切ったの!!」

「違う、だから・・・・」

「裏切ったのね・・・・」


女は、不意に近くのテーブルに置いてあったナイフを、男に向かって突き出した。


「なっ、何を・・・・」

「あなたのせいで、この子はお父さんがいないことになってしまうのよ!その罪を償いなさい!」


止める間も無く、女は男の胸にナイフを突き立てた。白かったワイシャツに、赤黒いシミが広がって行く。


「お・・・・とう・・さん・・・・?」

「全てこいつが悪いのよ!私を裏切った。私は、貴方だけだと思ってたのに!」


狂ったように、金切り声を上げる女。男は、崩れ落ちるように床に倒れる。


「・・・・私は・・もう・・・・」


自らのナイフを、自分の胸に刺す。そのままナイフを抜き、哉人の方に刃を向けた。


「恨んでやるわ。あなたの母親も、もう直死ぬ・・・・」


女はそう言った後、死んで行った。アパートの玄関に、二人の人間の血だまりが出来ている。


「救急車を呼ばなくちゃ!?」

「もう、遅いよ・・・・」

「えっ?」


「もう死んじゃってる。それに、この人は、母さんも、僕をも裏切ったんだ。だから、いいんだ。もう、遅いんだよ」

「何言ってるの?」


「この人は、僕の父さんじゃない」

「でも・・・・」


その時、家の中の電話が鳴った。家の住民がいないから、俺が取るしかないか。


「はい」

「知ってるんだぞ。お前が俺の女を盗ったってな」


「誰だ?」

「お前の大切な者、全て奪ってやるからな!」


合成音の声が途切れ、電話が切れる。随分とめんどくさいことに巻き込まれたみたいだ。


「凛、電話しとけ!哉人、お前の母さんが危ない!」

「えっ!?」


我に帰った哉人は、先に走った俺の後について来る。さっきはあんなことを言っていたが・・・・。


「病院はどこだ?」

「わからない・・・・でも、多分、近くの病院」


哉人の言葉を聞いて、近くにある病院に向かった。しかし、そこは病院ではなかった。と言うか、病院だったと言うべきものだ。目の前には、建物の残骸が転がっていた。


「おい、そこの君達、入っちゃダメだよ!」

「退け!」


警察が止めて来るのを押し退け、妖狐の姿に戻り、哉人を抱えて建物の残骸の一番上の階に上って行く。


割れていた窓ガラスから中に入り、病院の廊下に下りる。そして、一つだけ被害が少ない病室に入って行った。


そこにはベットに横たわっている女に銃口を向けている男がいた。


「お母さん!」

「近づくんじゃねぇ!俺が務所に入っている間に・・・・。女の次は、お前だ!ガキ!!」


男は銃をこっちに向けて足元を撃って来た。その弾は避けずとも外れた。


「死ね!」


最初は本気で狙って外れたのかと思ったが、それは違っていた。俺達の目を下に向けさせている間に、哉人の母さんを撃ったんだ。


「お母さん!!」


哉人は止める間もなく母親の方に走って行った。それをニヤニヤと笑いながら、男が哉人に銃口を向ける。


「避けろ!」


俺の声をかき消すように、男は引き金を引いた。大きな銃声と共に出された弾が、哉人の背中を貫通する。そのまま、哉人はバタッと倒れた。


二度の銃声に、外の警察が動き出したようだ。拡声器での声が聞こえる。しかし、興奮状態に陥っていたのか、声が全く聞こえない。


俺は無意識のうちに男の後ろに周り、首を押さえた。そして、そのまま力を入れる。


「な・・・・何する・・・・」

「あいつは関係なかっただろう!何で撃った!!」

「・・・・」

「何で撃ったんだって聞いてんだ!!」

「ぐっ、ぐるじい・・・・だずげでぐれ・・・・」

「答えろよ!!」


更に力を入れる。すると、嫌な音がする。ギシギシと言うような、骨がこすれあう様な音がし続けている。


このまま、こいつが死んでしまうんじゃないかと思うけれど、自分では止められない。どうしようもない怒りに体が占領されてしまったようで、言うことを聞かない。


本当にまずいと思った時、後ろから凛の声が聞こえた。


「亜修羅。人を殺しちゃダメだよ!」

「凛・・・・桜木・・・・」


「約束したよね?もう、人殺しはしないって!」

「・・・・」

「亜修羅!!」


凛に怒鳴られて、やっと我に返り、首を絞める腕を緩める。男は崩れ落ちるように床に倒れこみ、荒々しく息をしている。


「亜修羅!」

「悪い。やっぱり、まだ直ってないみたいだ。とっさになると、人を殺しかねない」


「バカ!!」

「・・・・もう少しで、約束を破るところだった」

「でも、間に合ってよかった・・・・」


約束と言うのは、凛を仲間と認めた日に約束をさせられたのだ。


その時は、もうしないだろうと思っていたから大して気にしていなかったが、今、自分の弱さに気がついて、情けない気持ちになる。


「・・・・悪かったな、助かった。凛が止めなかったら、こいつのことを殺してたと思う。こんな結果になってみると、凛がいてよかったと思う」


「・・・・ちゃんと約束は守ってよね!」


凛はそう言いながら、安堵の顔になる。約束すら守れないなんてな。情けない。自分で自分が情けない。


「あの、早く三人を病院に・・・・」

「ここが病院だよ。とにかく警察に知らせて来ようか」


いつもとは違い、落ち着いた凛に指示を出されて、警察を呼びに行った。


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