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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 雷光銃編 迷子の子供

「何?さっき何かやったの?」

「まあな、あいつのペースに乗せられてな」

「でも、何で僕まで・・・・」


凛の言葉を無視し、舞台袖から観客席の方を覗く。すると、男達が言っていた通り、何だか機嫌が悪そうに子供が暴れている。


さっきまでいたはずの親達も、どこかへ消えてしまった。親がついていない子供は大暴れだ。


要するに、俺達は、この騒ぎを止めろと言うことか。


「お前、子供好きだろ?」

「ううん。そんなこと言ってないじゃないか」

「見た目が好きそうだからな。行って来い!」


舞台袖で、嫌がる凛を押し出す。凛は嫌そうな顔をして、じっと見て来る子供達を宥める。


俺は、それを見ている。子供は嫌いだ。騒がなかったら別にいいのだが、騒ぐとうるさくなるし、めんどくさくなる。だから、嫌いだ。凛も嫌そうだが、凛に任せよう。


凛は子供に促され、言われるがままにされている。ああ言うのも嫌なんだ。


「亜修羅~!道連れだぁ~!!」


少し気を緩めたところで凛に腕を引っ張られ、やむ無く子供の渦に巻き込まれた。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん。さっきのやって?」

「さっ、さっきの?」


「うん。ビョ~~ンって飛んでさ、クルって回ってストンって」

「・・・・ビョ~?クッ、クル?」


子供の表現が、俺のどんな動きに由来しているのか全くわからない。


ビョ~~ンってなんだ?クルッて言うのは回転だってわかるが、ストンってなんだ?全くわからない。


「そう。ビョ~~ンってクルッとストン!」

「・・・・?」

「多分さ、高く飛んでから空中で体を反らして、そのまま着地してピョンピョンとね。だと思うけど」

「凛も、こいつらとあんまり表現が変わってないな」


「そう?子供はあんまり好きじゃないけど、気持ちはよくわかってるって言われるんだ」


決して褒めている訳ではないのに、凛が余りにも嬉しそうに言うから、意味を訂正するのを躊躇われた。


「と言うか、俺よりも、凛の方がこう言うのは得意だろう?何で俺にやらせるんだよ?」

「じゃあ、いいよ。僕がやってあげる。でも、子供たちは、亜修羅にやってもらいたいって言ってるんだよ?」


「わかったよ、じゃあ、俺がやる」


子供の考えてることは全くわからないが、この時点でもうるさいのに、もっと騒がれたら耳が壊れる。俺よりは、子供の気持ちがわかる凛の言うことを聞いておくのが無難なのだろう。


凛に言われた通り、さっき子供に見せたのと同じことをする。しかし、これと言ってなんら変わりもしない。


「この姉ちゃんも、何か特技があるの?」

「ねっ、姉ちゃん?」

「そうだい。姉ちゃんのことだい!」

「・・・・」


凛は言葉を失い、俺は思わず笑ってしまった。


無垢な子供に間違われるなんて、一番可哀想な例じゃないか。まぁ、それで笑った訳じゃあないが。


「姉ちゃんじゃないよ。兄ちゃんだよ」

「そんなことないやい!」

「そう言われてもさ、男なんだよ」


「じゃあ、兄ちゃんには・・・・」

「それは、禁句!」


子供の言いそうなことを先に読み、口を塞ぐ凛。何となく想像がつくだろうからあえて言わないが、子供とは、平気で下品なことを言うのだと言うことを前から知っていたが、今、更に思い知らされた。


「とにかく、僕は男!生まれた時からずっと男!」

「ふーん、つまんねぇの!」


「えっ?」

「つまらねぇ、つまらねぇ~。この兄ちゃんの方がよっぽど変だ」


そう言いながら、子供達が俺の方を容赦なく指差す。


それはどう言う意味だ?と聞いてみたいが、子供だから、ろくな理由など聞けないだろう。


「だってさ♪」

「・・・・」


凛が、自分は面白くないと言われてるのに、そんなこと気にしていないかのように微笑んで来る。


それは、何を思っての微笑みか、何となく想像がつく為、少しムカつく。


「この姉ちゃんだってな、凄いことが出来るんだぞ?」

「どんなこと?」

「亜修羅は、僕のこと知ってるでしょ?わざと言うのはやめてくれる?子供だから許したんだから!」

「ねぇ、どんなことが出来るの?」


最初は俺に聞いて来たが、今度は凛に聞く。


しかし、当の凛は、困惑した顔でこちらを見るだけだ。


言葉では言わないものの、子供同様、ねぇ、どんなことが出来るの?と言いたげな顔だ。と言うか、まさしく言っている。


「冥道でも開けばいいだろう」

「ええ~こんな狭いところじゃ開けないし、もし、子供達が入っちゃったらどうするのさ?」

「・・・・」


そう言いながらも、開く気満々な凛は、冥道霊閃を取り出し、子供達にこれから起こる出来事を説明している。


「おい、本当にやる気か?」

「当然。バカにされたからね」


凛はゆっくりと目をつぶる。すると、自然と元の姿(犬神)になり、そのまま鞘から冥道霊閃を抜き、細い光とともに、向こう側が宇宙に近い、冥道が見えた。


その瞬間は、いくらうるさい子供も、息を呑んで凛の動きを見守っていた。やがて、騒ぎ始める。


「うわぁ、姉ちゃんは、やっぱり兄ちゃんだったんだ!」

「急に変わったよ!バクダンマンみたいに!と言うか、バクダンマンよりかっこいい!」


「なんか、耳があるよね。動物の耳」

「この先なんだろう?」

「細い道だね、どこに繋がってるのかな?」


それぞれ、思い思いのことを言う子供。


子供は、凛が突然犬神に変わっても、あまりびっくりはしなかった。それは、何とかマンとかの変身を本当だからだと思っているからだろう。


逆に、大人に見せれば驚く。そんなものの変身なんざ信じていないからな。


「姉ちゃんは兄ちゃんだったんだ!の意味って何?」

「だから、姉ちゃんは、兄ちゃんだってわかったってこと」

「ああ、なるほど・・・・。あっ、その中は入っちゃダメだよ!?」


「どうして?」

「その道は、死んでしまった人が歩く道なんだ。だから、その道を進んで行くと、自分が生きていても、死んでしまうんだよ。魂を抜かれて」

「?」


凛の結構リアルな説明に、子供は?マークを浮かべている。しかし、雰囲気的にまずそうだと思い、何とか思いとどまったようだ。


「子供にそんな説明したってわかるはずがないだろう?」

「でもさ、何て説明したらいいのかわからないし・・・・」

「そろそろ冥道閉じろよ」


「無理だよ。こんな狭い場所で冥道を開くのは妖力を凄く使うんだからさ。冥道は、狭いところで開くことも出来るんだけどさ、それなりに妖力を使うんだよ。だから、閉じるのも無理!」

「おいおい、じゃあどうするって言うんだよ?」

「そうだね・・・・」


呑気に考え込む凛を、俺は呆れた眼差しで見る。後先を考えずに凛が行動することは知っているが、ここまでとは思わなかった。


「じゃあ、頑張ってみる」

「頑張ってみるじゃなくて、閉じろ!必ず!!」

「ふん、何もわからないくせに・・・・」


ブチブチ文句を言いながら、なんか、あっけなく冥道を閉じてしまった凛。


「僕、もう疲れたよ。子供のお守りをするのも、妖力を使うのも」

「そうだな、それは同感だ。妖力は使ってないが、子供の声で耳が割れそうだ」


そんな話をしていた時、丁度何処へ消えた親達が帰って来て、子供を連れ帰って行く。これで、やっと帰れると思ったが、一人の子供が残った。他の子供達の仲では、一番大きいだろう。


「あの子、帰らないね」

「ああ、そうだな」

「何か理由があるのかな?」

「俺は帰るぞ。面倒なことに巻き込まれたくないからな」


そのまま、凛につかまれない様に外に出て、そのまま階段を上り、屋上から下に飛び降り、入り口にいる桜木に話しかける。ここまで面倒くさいことをするのは、今までの過程をわかっているはずだから、想像はつくだろう。


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