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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 雷光銃編 逃げ足の速い奴

階段を上り、四階に行く。四階は、今までの階とは違い、大きな扉が何個かあるだけだった。


ずっとデパートと言っていたが、もしかしたら、デパートは少し違うところなのかもしれない。


妖怪は、その一番手前の扉の中に入って行った。


「凛は、向こう側のドアで待機してろ!」

「また~~?」


「聞け!」

「わかったよ」


半ば嫌そうな顔をしながら、出口の方に走って行く。俺は、妖怪の後について走って行く。


中は結構暗く、足元が見にくい。見にくいなと思って追いかけていると、小さな階段があり、そこを上ったところで景色が開けた。


一瞬、余りにも眩しくて、目が眩みそうになった。上を見ると、スポットライトが俺の目を潰そうとしているかの如く、ギラギラと照りつけて来る。


それから左を見ると、困惑しきった表情を浮かべた子供達がいた。正面には、妖怪に突き飛ばされたであろう、何とか戦隊の服を着た奴と、怪獣が倒れている。と言うことは、俺達はこの劇に乱入して来たと言う訳か。


俺が無言で妖怪をにらみつけていると、不意に妖怪が片目をつぶり、銃を構えた。何をするつもりかと思ったら、撃って来た。とっさに避けて炎を飛ばす。


そのまま元の位置に戻り、相手をにらむ。大したことじゃないが、子供達にとっては凄い衝撃だったらしい。しかし、そんなことにサービスを配れるほど、今は余裕がない。相手の考えが読めないとあっては、最もだ。


しかし、相手はサービス精神がもの凄く、雷光銃をクルクルと回したりと、凄い。それを見て、子供たちが俺の方にもキラキラな目を向けて来る。俺に何をしろと言うんだ?


「よお、霧崎」

「・・・・?」


妖怪が、不意に俺に話しかけて来る。霧崎って誰だよ?俺のことか?そんなダサい名前で呼ぶなよ。

俺の気持ちを読んだように、妖怪がまたもや片目をつぶる。俺にも合わせろってことか。


「よお、紙児」

「・・・・?」

「早く話し進めろ」


小声で会話を交わす。なんだか、不思議な気持ちだ。追っていた奴と一緒に劇をやる羽目になるなんてな。誰も想定してないだろう。しかも、自分から変な名前で話しかけて来たくせに、俺が答えるように言うと、不思議がってるし。バカだな。


「久しぶりに会っても、全く変わらないな」

「そんなことはどうだっていいんだ。さっさと勝負をつけるぞ」


俺の言葉に肩をすくめ、子供達の方を見る。すると、笑いがどっと起こった。


「ああ、わかったよ。昔から喧嘩っ早いんだからな。お前は」


俺の過去なんか知らないくせにな・・・・。言葉には出さないが、思い切りそう思う。


それに、あいつの行動がどことなく腹が立つ。どこと言われれば、断定が出来ないのだが、とにかく苛つく。


「じゃあ、早速・・・・」


何も言う間もなく、撃って来る。まだ劇だと思っている子供達は、キャアキャア喜んでいるが、こっちは生死の狭間にいる。かすりでもしたら、無傷じゃ済まされないだろう。


何とか三発を避けて反撃をするが、これも軽々と避けられる。バカみたいだが、強いのだろう。それは認める。でないと、雷光銃なんかを操ることが出来ないはずだ。


息をつかず、また撃って来る。雷光銃は、弾が無限に出て来るから、弾を入れる隙がない。だから、そこをつくことも出来ず、結構きつい。


舞台の横幅は狭く、仕方なく高くジャンプをした後、空中で体を反らし、そのまま手が下の状態で地面に着地してから、その反動で二~三回バック転をした。それを見て、子供たちは驚きと凄いと言う気持ちで騒いだり、話せなくなったりとしている。決して、子供達を喜ばそうとした訳ではない。相手の妖怪に対抗心を抱いた訳じゃない。


「中々やるな~」

「ボケッとしてんな!」


こっちも炎を飛ばすが、向こうもかなり凝った演出で避ける。技とらしいが、中々だ。


着地の時に、少しの隙が出来たのを見逃さなかった。とっさに懐に突っ込み、雷光銃を奪おうとしたが、間一髪のところで避けられた。


「そろそろ遊びは終わりだ。俺はもう、行くとする!」


最後に、そう言ったかと思うと、突然高くジャンプをし、消えてしまった。


最初は驚いて動けなかったが、はっと我に帰り、慌てて追いかける。つい、あの妖怪のペースに乗せられてしまった。


舞台袖に降りると、凄く暗く感じた。舞台の上がスポットライトで眩しかったからだろう。そのギャップから、前が見えない。しかし、止まる訳にはいかず、全力で走っていると、何かに思い切りぶつかった。その勢いで、後ろに吹き飛ばされる。


物か何かにぶつかったのかと思ったが、それが動いている。やがて、それが凛だとわかった。


「凛、何やってんだ!?」

「いったたたた・・・・。そっちこそ、何でこっちに走って来るのさ」

「こっちに逃げたからだろう」


「そのまま、こっちに逃げて行ったんだよ」

「本当か?」

「嘘を言ってどうするのさ?」


凛の口調からして、本当らしい。しかし、姿は見えなかった。もしかしたら、上を通っていかれたのかもしれない。本当に、逃げるのが得意な奴だ。


折り返し、再び舞台に戻ると、妖怪に倒された怪獣と、何とか戦隊の服を着た奴が立っていたが、再び、そいつらをふっとばして、舞台の上で止まらないまま、舞台袖の方に走って下りて行った。急いで追いかけているが、見失ってしまった。暗がりで凛とぶつかったことが、時間のロスに繋がったらしい。


「見逃したか・・・・」

「ごめん、僕のせいかな?」


「いや、そう言う訳じゃない。あいつの逃げ足が速いだけだ」

「それは・・・・かばってくれてると、取っていいのかな?」

「違う、凛なんかをかばう訳ないだろう。本音を言っただけだ!」


そう言うが、勝手に顔が赤くなる。こう言うところを、自分でコントロール出来ないところが困る。そのおかげで、どれだけ俺がからかわれたことか。


「赤くなってる~♪」

「うるさい!凛のせいだぞ!!」


「僕のせいじゃないって言ったばかりじゃないか♪」

「・・・・」


何も言えず、黙り込んで歩き出そうとする。すると肩を叩かれた。凛かと思って振り払うと、再び叩かれる。


「だから・・・・」


振り向くと、二人の男が汗だくになって立っていた。そして、自分が置かれている身のことに気がついた。


「捕まえた」

「・・・・」


背の高い方の男が言う。もう一人の小さい方は、息をつくだけで精一杯のようだ。


まずいと思って逃げ出そうとするが、肩をガッチリとつかまれて逃げ出せない。


何をされてもしかたないなと諦めかけていたが、言われた言葉は意外なものだった。


「頼みたいことがある。私達に代わって、舞台を引き継いでくれ」

「は?」

「私達の劇じゃつまらないって、君じゃなきゃダメだって」


「何で・・・・」

「頼む・・・・」

「やっちゃいなよ」


まるで赤の他人のように、凛が満面の笑顔で肩を叩く。これほどムカつくことはない。凛も巻き込んでやる。


「こいつもやるぞ」

「頼むよ」


男達はそう言うと、その場に座り込んでしまった。おいおい、そんなに大変なのかよ?


「何で僕まで・・・・」

「そう言うことだ」


嫌がる凛を引っ張り、今さっき出て来た扉の中に入る。まさか、追いかけられている奴が、舞台にいるなんて予想がつかないだろう。


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