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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 雷光銃編 大鬼ごっこの始まり

「何で、こんなことになっちゃったんだろうね?」

「知るか!」

「やっぱり、人間の姿で来た方がよかったんですよ」

「だって、急がないと売り切れちゃうから・・・・」


「お前が、単に短気なだけなんだ。十一月から売り切れるはずがないだろう!」

「そんなこと言ったってさ、亜修羅だって反論しなかったじゃないか!」

「僕はしましたよ、やめた方がいいって」


こんなことと言うのは、桜木の苦しさが直って、出かけようとした時に、凛が犬神の姿になり、道路を走ってそのままデパートへ直行。俺も、人間の姿では追いつかず、とっさに妖狐の姿になったのだが・・・・。


「しかし、こんなんじゃ進めるものも進めないだろう」

「とっ、取りあえず、でっ、出ましょう」


今がどう言う状況なのかを説明するのは、まず、デパートを出てからだ。でないと、話すことも不可能だ。


やっとの思いで外に出て、人の目をくらまし、屋根に上る。ちなみに、桜木は腕をつかんで引き上げた。


まずは、何があったのかを説明しよう。上で説明したように、凛を追いかけてデパートに入ると、急に老若男女問わずに、大勢の人に囲まれた。そして、訳の分からないことを言われ、例えると、周りにアイドルだってバレた時みたいな感じだと言うのが無難だと思う。


「どう言うことだ?」

「わっ、わかりません。でも、この状況じゃ無理ですよ」

「じゃあ、人間の姿に戻ればいいんじゃない?」

「そもそも、凛がいけないんだぞ。何でそんなに急ぐ必要があったんだ?」


「まあまあ。いいこといいこと」

「でも、僕はこのままですけど・・・・」

「桜木は気にするな。眼鏡さえ外してればバレないだろう」

「でも、目が見えませんよ」


「前を歩く俺達ぐらいはわかるだろう?」

「はい。わかりました」


そう言うことで、人間の姿に戻ると、何とか入れた。まぁ、最初から人間の姿のまま入ればよかったことなのだが・・・・。


「もう、クリスマスのものとか売ってるでしょ?」

「ああ、そうだなー」

「早くなんかないんだよ。準備は早めにってね?」

「そうかー」


「何だか、凄く不快な気持ちになるんだけど、その棒読みみたいな返事、やめてくれない?」

「興味のないことに棒読みになることは、悪いことじゃない」

「行こう行こう。興味がある人は」


凛は桜木を引き連れて、どこかに行ってしまった。全く、迷子になるかもしれないぞ。実年齢よりも、よっぽど子供だからな、あいつは。


そう思いながらも、一人でデパート内を歩き回る。本当に迷子になるとは思ってなかったからな。言葉では、迷子になるかもしれないと言ったってな、もう直ぐ高校の奴が迷子になんて・・・・。


その時、デパート内にお知らせをする音が聞こえて来た。


まさか、違うよな。いや、断じて違うだろう。


「迷子のお知らせです・・・・」


アナウンスから聞こえて来た特徴は、二人が着ているものとそっくりだった。それを聞いた時の恥ずかしさと言ったら、たまったものじゃない。顔が赤面と言うのを通り越して、赤黒くなったかもしれないと思った。


最初、迷子センターに行かなくてもいいと思ったが、やはりダメだろうと思い、恥ずかしいが、仕方なしに迷子センターまで向かった。


「あら、貴方が二人のお父さん?随分と若いのね」

「違います。あいつらと、大層歳が変わらないのは見てわかるでしょう」

「そうなの?二十代前半ぐらいだと思ったわ」


・・・・この女の目は節穴か?四歳以上も見積もられてるぞ。そんなに老けて見えると言うのか?


第一、二十代前半で、そんなに大きな子供がいる訳ないだろう。人間の子供が出来る過程は知らないが、そんなに若いのに、子供を作るのは妖狐でも無理だ。だから、人間でもありえない。


とにかく、女に案内してもらって、凛達のいる場所に来た。凛は迷子になって恥ずかしいと言う自覚すらないらしく、普通にしている。桜木はすまなさそうな顔をする。


「おい、何で迷子になんかなったんだ?自らどこかに行ったくせに」

「お父さん!」

「ふざけるな。さっきの会話、聞いてただろう?」


「まあね、可哀想に。四歳以上も上だと思われて。でもあの人、見た目で年齢を判断するのが苦手らしいよ。僕らのこと、三歳年下だと思ってた」

「十二歳か。確かに、そう言われてみれば見えるな」

「ふん!自分のことは棚に上げてさ」


ぶつぶつ怒るも、もう勝手に歩いて行かなくなった。それがわからないような子供じゃなくてよかった。また迷子になったら、今度は助けに行かないけどな。


「まぁ、修さんの場合は、大人っぽく見えるからではないでしょうか?」

「そうか?」

「はい。僕も始めてお会いした時は、二十歳までは行かないにせよ、十八ぐらいかと思いました」


「僕は・・・・」

「まずは、何を買いに行くんだ?」


凛に言わせないように言葉を遮る。凛のことだから、きっと相当な勘違いをしているに違いない。そんなのを聞くよりは、楽しくもないクリスマスの話題の方が断然いい。


「まずは・・・・」


凛が言いかけた時、もの凄く強大な妖気を感じた。まさか、雷光銃か?


背後で感じた妖気に振り返ると、後ろから男が歩いて来る。ジーパンのポケットに手を突っ込んでいるが、きっと、その中に雷光銃が入っているに違いない。


「おい、後ろの男、雷光銃を持ってるぞ?」

「・・・・そうだね。凄い妖気を感じる。この感じは、冥道霊閃以来の感じだよ」


国宝の妖気をもろに浴びた凛が言うんだ。間違いはないだろう。俺は初めてだが、こんなに強大な妖気は魔界の国宝だと言うことぐらいはわかる。


「でも、どうしましょうか?こんなところで暴れる訳には行きませんし・・・・」


その時、相手がこっちの反応がおかしいことに気がつき、急ぎ足でデパートを出ようとした。せっかく雷光銃を持っている奴に会うことが出来たのだ。しかも、こんな早くに。逃がす訳にはいかない。


「凛は、向こう側からデパートの入り口を塞げ。桜木は、俺が指示を出すまで一緒に追いかけろ!」

「了解!」

「わかりました」


本当は、デパート内は走っちゃいけないことになってるが、そんなの関係ない。


陳列されている品物や服などを落として追いかける。これが意外と面白い。ダメだって言われていることをやるのは、結構な快感だ。後で怒る両親もいないしな。


みんな、何が起こったのかわからない様子で道を開ける。デパートの店員はかんかんに怒って追いかけてくる。追って、追いかけられて。何だか、大きなスケールの鬼ごっこに近い。


しかし、人間の店員は足が遅く、あっと言う間に見えなくなった。その点、やはり訓練されている桜木は、悠々と走っている。


向こうは足が遅く、もう少しで追いつきそうになった時に、雷光銃の弾を飛ばして来た。慌てて避けて反撃するが、かなり差が開けてしまった。弾一つ一つにも、もの凄い妖力を感じた。


「待て!」

「ふん!待ってやる義理なんざねぇな」

「クソッ、凛を入り口に置いた配置が悪かった」


「じゃあ、僕が呼んで来ます。そのまま、僕が入り口にいます」

「わかった。頼む」


桜木を凛のところに行かせ、自分が雷光銃を持った奴を追う。それにしても、あいつは人間の姿のまま、妖怪の姿を見せない。妖怪なのは確かなのだが、中々見せない。そう言うところは助かっている。


「亜修羅~助けに来たよ!」

「んなことはどうでもいい。さっさと追いかけろ!」

「はいはい」


結構速いスピードでジョギングをしてると言う感じで走っているのに、凛はそれよりも簡単に、悠々と抜き去って行った。


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