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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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特異を好むか拒むのか

キャンバスに描かれているのは、どうやらライオンみたいだ。

でも、さっきのペンギンに比べてかなり下手に描いてある。

鬣らしきものがあるから想像がつくけど、そうじゃなかったらスフィンクスに見えてた。


彼女は、無事ライオンを描き終えると、

今度はライオンの性格や全長、体重などを空白の部分に事細かく記し始めた。


「本物を連れ出す場合、性格や設定などをちゃんと記しておかないと危険なんだ」


「あの、ここに『人に懐いていて、人を襲うことは決してない』って書かれてますけど、

こうすることで、何か変わるんですか?」


「うん。これを書いておけば、絶対に人は襲わない。私の書くことに逆らえないから。

大きさもそう。

普通のライオンは人間より大きいけど、

5ミリって書けば、本物でもとても小さなライオンになる」


華月さんは、全長35センチと描くと、

さっきペンギンを外に出した時のようにキャンバスをドア側へ向ける。


「外へ」


その言葉が放たれた直後、再びキャンバスから光が溢れだす。

しかし、今回はそう長い間光らずに、

キャンバスの中から茶色い何かが飛び出した瞬間に消えた。


キャンバスから飛び出して来たのは本物のライオンで、

さっきのペンギンみたいなイラストタッチじゃない。

僕達がいつも見ている、あの恐ろしいライオンだ。

ただ、あれよりもかなり小さくて、ライオンなのに僕達の方へ擦り寄って来る。

まさに、キャンバスに記した性格そのままだ。


「こう言うこと」

「・・・・なるほどな。だから生活用品がいらなかったのか」


「うん。自分で描いて持ってくればいいし、お金だって持ち出そうとすれば可能なの。

偽物じゃなくて、本物を持ち出せるから捕まることもないし、

描くだけでお金持ちになることも出来る」


「だから、人に知られないようにしてたんだな」


「うん。あの時も、人に見られないように特殊なコーティングを施した。

だから、あなたが見えたって言ってて、正直びっくりした」


「えっ、それって、普通の人には見えないの?」


「うん。私にだけ見えるようにしたの。

透明になるマントをかぶせたと考えればいいから、霊って訳じゃない。

霊感の強い子にだって見えなかったから」


「・・・・なんで見えたの?」

「・・・・さあな」


「私の能力は、使い方によってはいくらでも悪用出来るから、

絶対に他人には言わなかった。親友の莉乃にもね。

それなのに、あなた達に言った理由はそれ。普通の人じゃないなってわかったから」


「・・・・」


じーっと見てみると、頭を殴られた。

・・・・やっぱり、僕の思い違いじゃないよ。

亜修羅はなんだか不思議なもの持ってるんだって!


「お前にだって見えるかもしれないじゃないか」

「・・・・そうかな?」

「試そうか」


華月さんの言葉に元気よくうなずくと、亜修羅と一緒に背を向ける。


「これからあるものを描いて連れ出すから、それが何なのかを当ててみて」


その言葉にうなずくと、もう一度亜修羅の方を見てみた。


「さっきから何だよ、ジロジロ見て」

「どうして認めないのさ?」

「何を?」

「自分が特別ってこと」


「そんな訳ないだろ。そもそも、何が特別なんだよ。

妖怪だから見えただけかもしれないだろ?」


「まぁ、そうだけどさ?なんか、異様に嫌がってるみたいに感じてさ。

僕が特別かなって感じたら、すんごく嬉しいのに!」


「・・・・そんなことない」

「えーっ」


「描きおわったよ。今出すから待ってて」

「はーい!」


「外へ」


背を向けているにもかかわらず、眩しいと感じるほどの光が差した。

その後、「いいよ」と声をかけられる。


二人同時に振り返って前を見る。

亜修羅はすぐにわかったようで、何かを話そうとしたけど、僕はそれを遮った。


「まだダメ!」

「なんでだよ。すぐにわかるだろ」


「見えないよ?えっと、どこにあるの?それ」


「テーブルの上にあるよ」

「・・・・」


テーブルの木目の中を見るように、目を凝らして端から端までを見てみるものの、

テーブルの木目とインクの染みぐらいしか見つからなかった。


「・・・・見えないよぉ」

「うそつくなよ」

「うそじゃないもん!こんなに真剣に見てるのに見えないはずないじゃん!」


「・・・・」

「ほらやっぱり、修にしか見えてないじゃん!」


「・・・・原因、わかるか?」

「ううん。私もわからない。こんなこと、初めてだから」

「ねえねえ、何がいるの?」


身を乗り出して訊くと、華月さんは透明マントを外してくれた。

その下から現れたのは可愛い三毛猫で、その子は僕の目の前にいた。

あぶないあぶない。

見えないとは言え、もう少し肘をつく位置が前だったら、

三毛猫くんにぶつかるところだったよ・・・・。

そう冷や冷やするほど、その距離は近かった。


「うわっ、こんな近くにいたの!?」

「その様子だと、ほんとに見えなかったみたいだな」

「当たり前じゃん!僕が嘘ついて、誰が得するのさ!!」


「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」


それからしばらくの間、沈黙が流れた。多分、考えてることは、みんな同じはず。


やっぱり、亜修羅は普通じゃない!

疑惑が確信へと変わった瞬間だった。


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