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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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サイキックは、信じる心と念じる強さです

「お腹空いたなぁ~。そう言えば、朝食べたきりだもんなぁ~」


すっかり空っぽになってしまったお腹を押さえながら竜君の家へ向かう。

僕はお腹が空いてるんだけど、知らない人から見たら、

お腹が痛いのかって思われちゃうかもしれない。

だって、お腹を押さえて、顔ゆがめて歩いてるんだもん。


もちろん、腹痛などございません!

むしろ、お腹が元気過ぎて辛いんです・・・・。


こうなることと予想出来ていたら、僕だってお財布を持って来てた。

でも、予想出来なかったから、現在所持金はゼロ。

ファーストフード店や自動販売機が沢山あるのに何も買えないんだ。

当たり前のことだけど、手の届きそうな位置にある分、精神的苦痛は増す。


せめて、空腹を忘れちゃうほど面白い出来事があったらいいんだけど、

この分じゃ、そうなさそう。

桜っち達は違う世界に行ってるし、亜修羅だってきっと家にいるだろうし・・・・。


ため息をつきながら青になった信号を渡っていたその時、

僕は、とても面白いものを見つけた。


亜修羅がコソコソと壁に隠れて、何かの様子を覗いてたんだ。

これはもう、最高に面白いことしかないじゃないか!


亜修羅に気づかれないように後ろからソーッと忍び寄ると、反対側の壁に張り付いた。


普通だったら僕の存在に気づくはずだ。

だって、少し離れてるとは言え、前に向き直れば見える位置にいる訳だし。

でも、相当真剣に覗いているのか、全然僕の方を見向きもしない。やっぱりおかしい。


何をそんなに真剣に見ているのかとても気になったので、僕も同じ方向を覗いてみる。

すると、女の子の二人組みが道を歩いてた。


一人はベレー帽をかぶって、キャンバスみたいなものを抱えた女の子。

もう一人は、小柄な体形で、黒い髪を二つに結んでいる女の子。

ベレー帽をかぶってる子の方はなんだか変な感じはするけど、妖怪って感じじゃない。

黒い髪の子なんて、普通の子のように見える。一体どうしたんだろう?


そこまで考えた時、僕は禁断の答えにたどり着いてしまった。

まっ、まさか・・・・!?


チラッと亜修羅の方を見てみると、やっぱり僕の存在に気づいておらず、

食い入るように二人のことを眺めている。


それを見て、僕は確信した。


あの二人の子のどちらかが気になって、何とか声をかけてみたいけど、

上手く声をかけられなくて、

後ろからコソコソついて歩くストーカーみたいなことをしてるんだって!


我ながらなんと素敵な結論に至れたのかと喜びを感じながら、

二人の女の子のことをよーく見てみる。


実を言うと、黒い髪を二つに結んだ子の方は、

なんとなく見覚えがあるように感じたんだ。

でも、後姿だけだし、はっきりとは断言出来ないんだけど、

僕のクラスメートに似てる。


もしそうだとしたら、大事件だ!僕が協力してあげなきゃ!

でも、その前に、

その子が、本当に僕のクラスメートなのか確かめる必要がある。

しかし、とても楽しい話しをしてるのか、全然後ろを振り向かない。


・・・・こうなったら!


「必殺、サイコキネシス!」


小さな声でつぶやいて、念を送る。

・・・・はっきり言うと、僕にそんな能力はない。

でも、少しだけ、ほんの少しだけの可能性を信じてみた。


すると、マグレか偶然なのかわからないけど、

二人の後ろにあった缶がコロコロと転がった。


その音に反応して二人が振り返る。

その顔を見て、僕は思わずガッツポーズをした。

黒髪の彼女は、僕のクラスメート、市川莉乃さんだって。


彼女はクラスの中でも一際大人しくて、

休み時間になると、いつも本を読んでるんだ。


その本って言うのは、学校においてあるものじゃなくて、自分で買って来たもの。

だから、相当な本好きだと思う。


でもね、その本の内容は、絶対人に見せないんだ。

誰かが近づいて来ると、サッと机の中にしまっちゃって、誰も見たことがないらしい。

僕や桜っちも、よく彼女に話しかけるけど、いつも、サッと隠しちゃうんだ。


それに、僕達が近づくと逃げようともする。


うん、とにかく不思議な子なんだよね。

クラスメートの子と仲良く話してる感じもないから、

話すのが苦手なのかもしれないけど、逃げるほどのものなのかな?


僕は、人と話すのが好きで、人見知りもしないタイプの人間だからわからないんだけど

・・・・どうなのかな?


そこまで考えた時、ふと、こんなことをしてる場合ではない!と思い出し、

とりあえず、目の前にいる亜修羅を驚かす為に背後に回りこむ。


それでもやっぱり気づかないので、大きな声で脅かすんじゃなくて、

思い切りタックルしちゃおうかなって思う。


だって、今の亜修羅なら、倒れるかもしれないから!


・・・・まぁ、一番の理由は、

大きな声だと、二人に気づかれてしまうかもしれないって

思い直したからってことなんだけど・・・・まぁ、いいじゃない?


僕は、小さく息を吸い込むと、前に一歩進んだ。

その途端、上から何かが降って来て、頭に当たった。


「いった!」

「バレてんだよ」

「ええっ!?」

「当たり前だろ、あんなにコソコソ目の前をウロウロされたりしたら、普通気づく」


平然と言い切られて、自分が踊らされていたことに気づく。


「なんだよ!じゃあ、もっと早く言ってよ!

僕、脅かしてやろうと思ってたのにさ!」


「うるさい!」


一喝入れられてから頭を叩かれて、今度は口までふさがれる。

確かに、今のは僕も悪いところはある。大きな声を出したところ。

でもさ、叩かなくてもいいんじゃないかな?


とは思いつつも、ここは素直に従う意をこめて、素直に謝った。

ようやく、まともに話せるよ。


「全く、見張ってるのがバレたらどうするんだよ!」


「・・・・普通に話しかければいいじゃん。

こんなにこそこそストーカーみたいなことしなくてさ」


「ストッ、ストーカー?」

「あっ、知らなかったんだ!じゃ、教えないよ。教えたら怒られちゃうもん!」

「・・・・」


その言葉だけでストーカーの意味を悟ったのか、

亜修羅の顔から?の色は消え、怒りの表情だけが残る。


「だってさ、好きなんでしょ?だから、こんなことしてるんでしょ??」

「は?」

「・・・・違うの?」


まさかの返答に、僕も声が裏返る。

だって、好きじゃなきゃ、あんなことしないでしょ??


「当たり前だろ、好きでもなんでもない」

「え?じゃあ、どうして?」


そうだ。もし好きじゃなかったら、ほかにストーカーする意味ってあるのかな?

でもね、亜修羅のこの反応だと、言ってることに嘘はないってわかる。

もし、僕が本当のことを言い当てたら、恥ずかしいことなら恥ずかしがるし、

そうじゃないことなら、「俺の心を読むな!」って怒られるもん。わかりやすいね。


「・・・・わかりやすくて悪かったな」

「あらっ、僕の心が読めたのね」

「表情でわかったんだよ」

「・・・・」


「お前はいつも俺のことを単純で素直だって言うけど、お前だって相当なもんだぞ。

考えてることが表情に出やすい」


「ありがとう!」


褒められたのでお礼を言うと、亜修羅は首を振ってため息をついた。


どうせ、自分の皮肉が通じなかった・・・・なんて思ってるんだろうけど、

生憎、僕に皮肉は通じてますよ!でも、あえて通じてないフリしたんだもんね!!


「それじゃあさ、どうしてあの二人のことストーカーしてるの?」

「ストーカーって言い方を止めない限り、俺は一生口を割らない」

「・・・・尾行してるの?」


「俺は、たまたま外に出た。そこで道に迷って、あのベレー帽を見つけた。

道を尋ねようとしたんだよ。

そうしたら、あの女の抱えてるキャンバスからライオンが出て来たんだ」


「・・・・寝ぼけてないよね?」


そう聞くと、無言でげんこつが落ちて来たので、僕はもう口を挟まないようにする。


「多分、竜達の能力と似たようなものなんだろうけど、危険だから尾行してる」

「危険なの?」


「雰囲気からして妖怪じゃないだろ?

とは言え、キャンバスからライオンなんか出せる奴だ。

敵に回したらめんどくさいことになりそうだから、正体を突き止めたかった。

・・・・これでわかったか?」


「うん。あのね、あの黒髪の子、僕のクラスメートなんだよ。

市川さんって言うんだけど・・・・」


「知り合いだったのか!?」


「あっ、ベレー帽の子の方は違うけどね、

市川さんとはちょっとした顔見知りだし、

話しかける口実も出来るんじゃないかなって。どう?」


そう言ってみると、しばらくの間考え込み、ゆっくりと首を縦に振った。

それを見て、心の中でガッツポーズ。


この様子だと、僕は、亜修羅の力になるように聞こえたと思うけど、

そう言う訳じゃない。

ただ、そうした方が面白くなりそうな気がしたんだ。


「それなら、さっさと行って来い」

「やだよ、亜修羅も一緒に行くんだよ!」

「はっ!?」

「残ることは、絶対に許しませんからね~!」


僕は、嫌がる亜修羅の腕をつかむと、市川さん達がいる方へと走って行った。


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