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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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変化の跡

「あの、聞いてみないんですか?」


「いや、俺だって聞きたいのは山々だぜ?

でも、なんだかそんな雰囲気じゃないじゃんかよ」


「そっ、そうですよね・・・・」


苦笑いで答えると、水樹君達の方を伺い見る。


さっきから、少し歩くと立ち止まっては何かを話し合ったり書いたりしてるんだ。

僕達は、その様子を少し離れた場所から見ていることしか出来ない。

不思議な白い炎のことや、万里眼の性能がアップしたことについて聞けていない。


「さっきから何やってるんだろうな?立ち止まってばっかりだぜ」


「何かを測ってるんですかね?

でも、それにしては、機械みたいなものは持ってないみたいですけど・・・・」


「よし、万里眼使ってみるか!」

「えっ!?相手が見えている場合でも使えるんですか?」


「まあな。いつもだったら相手の様子が見えてる状態なら、使う意味ないじゃんか。

でも、今は心の声みたいなのが聞こえるし、相手が見える状態でも、意味あるだろ?」


「それもそうですね!それじゃあ、お願いします」


神羅さんは悪い笑みを浮かべながら親指を立てて、目をつぶる。

目をつぶらなくても見ることは出来るって言ってたから、

多分、今目をつぶったのは、実際に目で見ているものと、

万里眼で見ているものが混同しないようにってことだと思う。


でも、実際対象が前にいなくても目を開けてると混乱しちゃいそうだよね?

僕のあの炎は目をつぶっている時にしか見えないからいいけど、

目を開けてる時にまで見えたら・・・・。


想像しただけでなんだか怖くなってくる。

だって、姿は見えなくても、

そこに「何か」が存在するってわかっちゃうんだもん。怖いよ・・・・。


「ん?あれ・・・・」

「どうしました?」


声をかけてみると、目をつぶったままこっちを振り返って、首をかしげる。


「声は聞こえるんだけど、心の声って言うかなんて言うか、

ただ単に話してる言動が聞こえてるだけかも」


「・・・・それ、普段の時も出来ますよね?」


「そうなんだよ。

カメラ設置したみたいになってるからよ、様子と音声は確認出来るんだよな。

でも、心の声は聞こえないんだ」


「・・・・もしかして、さっきの声って言うのは、

凛君が直接声を発していたのでしょうか?」


「うーん。なんとも言えないなー。正直、自信がないんだ。心の声だって言う。

あいつ独り言多いし、その可能性も少なくはないんだよな。だから・・・・ん?」


なぜかそこで言葉を切ると、神羅さんは黙り込んだ。

全く状況が飲み込めず、とりあえずは目をつぶる。

神羅さんの話しを聞いていたら、なんだか自信がなくなってきてしまったのだ。


目をつぶって前を見渡す。

すると、白い炎がちらほら飛んでいるのが見えて、安心する。

それは、まるで小さい子供みたいに空を飛びまわっていて、とても楽しそうに見えた。


それを感じた時、なんとも言えない楽しさが僕の心の中にも広がって、

自然と笑みがこぼれてしまう。


友達と鬼ごっこをして、疲れたらかくれんぼをして。

公園が飽きたら、地域探検に行ったり、ちょっといたずらをしてみたり。

凄く楽しい。心が弾むみたいだ。ずっとずっと、このまま遊んでいられたら・・・・。


「・・・・い、おいって!」

「・・・・えっ!?」


いつの間にか呼びかけられていて、慌てて目を開ける。

すると、心配そうな神羅さんの顔があった。


「おい、大丈夫か?目つぶったまんまニヤニヤしてよ。ストレス溜まってんのか?」


「いっ、いえ。なんでもないですよ。

あっ、それより、どうしたんですか?急に黙り込んじゃって・・・・」


「ああ。やっぱ、聞こえたんだ。

凛の時ほどしっかりとじゃないけど、音声とはまた違った声が。

音声と同時に聞こえる時もあって、その内容はお互いに違うから、

多分、心の声だと思う。

それよりさ、俺、お前の方が心配だよ。本当に大丈夫か?

普段あんまり言えないから、ストレスが溜まってるんじゃないか?」


「ほんとに大丈夫ですよ!ただ、急に楽しくなってしまって・・・・」


言葉を重ねるごとに、神羅さんの表情が深刻さを増して行くので、

言葉をそこで切ると、苦笑いを浮かべた。


確かに、知らない人から見たら変な人かもしれない。

目をつぶってニヤニヤしてるんだもん。

でも、あの楽しさは、微笑まずにはいられない。

本当は、飛び上がって走り回るぐらいしたかったほどだもん。


でも、そんなことを言ったらもっと心配されそうなので、

そのことについて口を閉ざすと、少し前にいる水樹君に声をかけてみる。


「あの、ずっと立ち止まってますけど、何かあったんですか?」

「あっ、はい。おかしいと言うかなんと言うか・・・・」


彼はそこで言葉をにごらせ、

三影さんに目配せをしてから顔を伏せると、一歩後ろに退いた。


「ここまで来て一度もスクラップが現れないのは、ありえないことです」


「僕達はいつも、ポイントを決めて移動してるんですけど、

全てのポイントを通過してもスクラップが現れないんです。

普段なら、第一ポイントで現れるはずなんですけど・・・・」


「原因は私達にもわかりませんが、あえて理由を挙げるとするならば、

羅門さんの力が強大である為、スクラップが恐れて近寄らない可能性が一番有力です」


そんな三影さんの言葉に神羅さんは嬉しそうな顔をすると、

みんなに見えないぐらい小さくガッツポーズをした後、

よほど嬉しかったのか、僕にコソコソと話しかけて来る。


「俺の強さに奴らはビビッてるらしいぞ!」


「そうですね~。

確かに、神羅さんはとても強いですから、僕も敵には回したくありません」


「俺も、お前は敵に回したくないぜ。力量はわかんないけど、凄そうだもんな」

「そっ、そうですか?」

「ああ。たまにチラチラ出る素を見ればわかるぜ。脳ある鷹は爪を隠すって」

「そっ、それは褒め過ぎですよ!」


言われてて、なんだかこっちが恥ずかしくなって来る。

褒めてもらえるのはとても嬉しいことだけど、

あまりにも褒められ過ぎると、なんだか照れくさくなって来てしまう。


「あの、そう言えば琥珀君はいないんですか?

いつも琥珀君と出かけてるみたいですけど・・・・」


「えっ、えーっと・・・・。琥珀って、あんまり人付き合いが得意じゃなくって。

今回は皆さんと一緒なので、一人でどこかに行ってしまったんです」


「そうだったんですか・・・・。なんだか、ごめんなさい」


「いえ、桜木さんが謝ることじゃないんです!

むしろ、琥珀の方が失礼なことをしているので、

謝らせないといけないんですけど・・・・本当にごめんなさい!」


「大丈夫ですよ。水樹君が謝ることじゃないですし、琥珀君も謝る必要はないです」


そんなことを話していると、突然背後から肩を叩かれたかと思ったら、

神羅さんが小声で「ほら、あれ!」と言い、気になっていたことを聞いてみる。


「あの、実は僕達、この世界来てから変なんです」


それだけ言うと、水樹君は直ぐにわかったようで、

二、三回コクコクと首を振ると、なぜか月野君を呼んだ。


「どうしたの?」

「桜木さんと羅門さんが、この世界に来てからおかしいんだって」

「・・・・なるほど。詳しく聞かせてもらっていいですか?」

「うっ、うん」


月野君に言われて、僕達は、それぞれの様子について、事細かに説明した。

彼は相槌を打ちながら僕達の言葉をメモしていて、

なんだかとても重要なことみたいだ。


「・・・・あの、原因わかりますか?」


「はい。この世界は元々、僕達がいる世界にはない力が働いているんです。

それによって、

それぞれの人物が持つ能力を、一時的に強化させることが出来るんです。

だから、元いた世界では出来なかったことが出来るようになったりするんですね。

例えば、羅門さんの万里眼を例にしてみると、

今まで音声と姿を確認することは出来たけれど、心の声までは聞こえなかった。

でも、この世界に来たことで、

万里眼の性能が上がって、心の声まで聞こえるようになった。

そう考えた方がいいと思います。

しかし、影響は、あくまで能力を持っている人に見られることなので、

能力を持っていない桜木さんに変化が見られるってことは、

ありえないはずなんですけどね・・・・」


「そうなんですか・・・・」


言葉では納得しているような反応を示すものの、

心の中では全く納得出来ていなかった。


だって僕は、目をつぶると炎のようなものが見える能力なんて、

ここに来る前から持っていなかった。

今までだって何度も目をつぶる機会はあったけど、

炎が見えるなんてこともなければ、光が見えることだってなかったんだ。


彼の話しによると、この世界には、

僕達の住んでいる世界にはない力が働いているので、

その人物が持っている能力が一時的に強化されるらしい。

そして、能力を持っていない場合は、変化しないはず。

僕は、能力を持っていないのに、この世界に来てから炎が見えるようになった。

これは、変わらないと言うよりは、強化されたと分類した方が正しいと思う。


でも、そうなると彼の言葉とは反することになる。でも、彼の言葉は正しい。

神羅さんは、彼の言葉のとおりになっているから。

それなら、僕がおかしいのかな・・・・?


もう一度目をつぶってみる。すると、やっぱり白い炎が見えた。

最初は凄くびっくりしたけど、慣れた状態で見ると、中々綺麗に見える。


「・・・・やはり、問題は数多く存在するようですね。今日は戻りましょう。

桜木さんのことは、私から部長に伝えておきます」


「あっ、ありがとうざございます」

「それでは、帰りましょう」


三影さんの凛とした声を合図に、シークレットランドへ戻ることとなった。


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