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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 雷光銃編 ひとまずお休み

部屋の中には、ど真ん中に大きなベットがあり、部屋の奥に窓がある。右と左にもう一つ部屋があるようだ。思ったよりも広い。


「うわぁ、ベットだ!トランポリンみたい!!」

「おい、お前なんかが飛び跳ねたら壊れるぞ!」

「右側には、お風呂と洗面所がありますよ!」


各自、全く違うことを言っているが、俺が心配しているのは、凛の身の安全ではなく、ベットが壊れないかと言うことだ。


小さな子供が飛び跳ねる分には大丈夫なベットも、凛みたいな奴が飛び跳ねたら絶対に壊れる。これは断言出来る。


「僕、ここで寝たい」

「待て、俺だって初めてベットを拝んだんだぞ?俺だって、寝てみたい」

「でも、寝たいもん!」

「俺だって同じだ!」

「僕だって、ベットで寝たことなんかないもん!」


「嘘つくな。人間界にいる時間が長いお前が、そんなはずがない!」

「そんなに喧嘩するなら、じゃんけんで決めたらどうですか?」

「そうだな」

「えーっ、じゃんけん弱いよぉ」


桜木の申し出にブツブツ文句を言っている凛を無視して、さっさとじゃんけんを始めると、慌ててじゃんけんに参加した。


結果、凛が勝った。・・・・チッ。


「うわぁ~~い!僕が勝った!」

「お前、じゃんけんが弱かったんじゃなかったのか?」


俺達がじゃんけんをしている間に、いつの間にか桜木がいなくなっていたと思ったら、奥の方で桜木の声が聞こえる。


「あっ、でも、左の部屋に、二段ベットがありますよ」

「何でそれを早く言わないんだ!」

「えっと・・・・二人がお取り込み中だったようなので、割り込んじゃいけないかなと思いまして」


桜木がそう言うと、凛はすぐさま目を輝かせて、授業の時に答えるように、勢いよく手を挙げた。


「じゃあ僕、やっぱり上がいい!」

「ダメだ。お前は寝相が悪いから落ちる。桜木が上に寝ろ」


「でも、そう言うのが苦手なんですよ。高いところで寝るって言うのが。それに、二段ベットの梯子って少し急で怖いです」

「ほら!だから・・・・」

「じゃあ、俺が上で寝る。お前は下で寝ろ。桜木は、こっちでいいな?」


「はい。でも、二人はもういいんですか?ここじゃなくて」

「ああ」

「あああ~、上~」


ブツブツ言う凛を無視して、やっとどこで寝るかが決まった。俺も、凄く寝相が言い訳でもないが、差ほど悪い訳でもない。凛と比べるなんて、もっての他だ。


「そう言えばさ、トイレは?」

「それが・・・・部屋になかったんです。行きたいんですか?」


「そうじゃないけどさ。まぁいいや。それで、これからどうする?と言うか、まず、トリックって何?どんなことをするの?」

「マジックみたいな物じゃないですか?」

「でも、僕、マジック出来ない・・・・」


凛が、凄く悲しそうな顔をする。そこまで悲しむことはないと思うのは俺だけだろうか?


マジックが出来ないからって、死んでしまう訳でもないのに。


「そうですね。僕も出来ません。だから、どうやって相手を騙すかと言うことが大切になって来ます」

「・・・・あのさ、亜修羅って炎を操るけどさ、炎に強い?」

「ああ。常に炎を触っていると言う感じだからな」


「よし、それを使おう!亜修羅を火あぶりにする。それで、無事に出て来た亜修羅は凄い!」

「おい、俺だってな、地獄の火炎に焼かれたら死ぬぞ。それ以外は無傷だけどな」

「じゃあ、大丈夫」

「でも、毎回同じはまずいだろう」


「あの・・・・人間って、二百四十六ボルト以上の電流が当たると死んじゃうって知ってますか?」

「そうなのか?」

「はい。前に、僕は雷が直撃したことがあるんです」

「じゃあ、桜っちは幽霊ってことなの?」


「いえ、そうではなくて、その雷は、十万ボルト~二十万ボルトぐらいあったそうです。でも・・・・僕は、雷に撃たれても無傷だったんです」

「・・・・」


しばらくの間、言葉が出なかった。俺は、炎を操る妖怪として、炎に強いのは当たり前だ。しかし、桜木はどうだ?人間なんだぞ?なら、そんな電撃を食らったら死ぬはずだ。


「あの・・・・続きを話していいですか?」

「あっ、ああ」

「でも、実は、その雷は本当の雷じゃなくて、人間が作り出した弱い雷だったんです。余りにも弱すぎて、針が逆に動いてしまったんです。だから、その雷は、一ボルトもなかったんです」


「桜っち、何でそんな話をするのさ!ドキドキしちゃったじゃないか!!」

「あっ、いえ、ちょっと思い出したので、話してみたくなって。すみません」


桜木の言葉に、呆れと、疲れのため息が吐き出される。


でも、桜木が人間だって言うことが証明できてよかった。実を言うと、桜木が妖怪みたいだと感じていたからだ。だから、たまに不安になるが、これを聞いて安心した。なぜ不安になるのかは知らないが、不安になるんだ。


その時、ドアの上にあるスピーカーから男の声が聞こえた。


「これから、トリックバトルトーナメントのルール説明などを三階ホールにて行います。出場者のみな様は、三階ホールにお集まり下さい」

「三階ホールか・・・・。普通、ホールって一階にない?」


「いや、二階にも三階にもあるところはあるだろう。一階にしかホールがない訳じゃない。それに、もし、二階にしかトイレがなかったら困るだろう?きっと、それと同じだ」

「トイレって・・・・」


例えに対して苦笑いを浮かべる桜木。例えは例えだ。不意に思ったから使ってみただけだ。凛は、それに納得しているようだし。


「取りあえず、行こうよ。トイレに」

「は?」

「だって、ホールはトイレと一緒なんでしょ?」


「・・・・」


こいつはやっぱりアホか。知能数は、猿以下じゃないのか?


自分に向けられている目がとても可哀想な奴を見る目だと気がついたのか、鋭いところを突いて来る。


「あのさ、猿以下じゃないからね。そうやって人をバカにするのはやめてよ。亜修羅がトイレと一緒だって言うから・・・・」


「俺は、トイレとホールが同じだなんて、一言も言ってない。それに、もしもの話だ。例えだ。わかるか?」

「だってさ、最初に、『例えば』なんて言ってないじゃないか!」

「三階のホールに行くぞ。時間がない」


これ以上言っても無駄かと思い、桜木を促して、部屋を出た。


エレベーターを使って三階のホールに向かう。その途中で会ったのは、普通の服を着た大人だった。学生、しかも、制服の奴なんて誰一人いない。


「学生って、僕らしかいないのかな?」

「さあな。見た限りではそうとしか見えないが・・・・」

「多分、これは泊りがけで行うものだから、親の許可が下りないのでしょう。僕達は、親と言うものはいないので」

「なんか、大人に囲まれるのは好きじゃないなぁ。早く終わって欲しいよ」

「まだ、話すら始まってないけどな」


「そこは黙ってうなずいてるの!」

「そんなに怒鳴るな。話が始まるだろう」


怒鳴る凛を上手く窘めて、ステージの上に立った男を見る。


すると、自然と周りが静かになる。さすがは大人だ。何も言われなくても空気を読んでいる。


「お集まりのみな様、トリックバトルトーナメントにようこそいらっしゃいました。私は、トリックバトルの司会を務めさせて頂きます、葛田と申します。以後、お見知りおきを。

次に、このホールを立てた楠建築の社長兼、当トーナメントの最高責任者の楠剣一さんのお話です」


どうでもいいような話を長々と続けられ、いい加減飽きて来たところ、やっとルールが説明された。


「では、トリックバトルトーナメントのルールを説明いたします。トーナメントの組み合わせは、各階に貼ってあるトーナメント表をご確認下さい。そのトーナメント表で、自分のチームとぶつかったチームと戦ってもらいます。と言っても、叩くのではなく、マジックで勝負です。


コイントスで先行後攻を決めて、先行のチームは後攻のチームに自らのマジックを見せます。後攻チームは先行チームのタネを見破れ、自分のチームのマジックが見破られなければ勝利です。先行チームも後攻と同様です。尚、決着がつかなかった場合、両チームとも残ることになります。このトーナメントは、優勝者が出るまで遂行いたしますので、それまでは家に帰れないと思って下さい。敗者の人も同様なので。何か、ご質問はございますか?」


葛田はそう言い終えた後、みなを見渡した。何個か質問はあったが、俺達には関係のないことばかりだった。


「では、ルール説明は以上です。トーナメント表は、三階ホール、二階東階段横掲示板、一階ロビー掲示板に貼ってありますので、各自でご確認下さいませ。一番早くても、明日の九時からトーナメントは始まりますので、それまでの間、ゆっくりとおくつろぎ下さいませ」


やっと話が終わり、みな、前に貼ってあるトーナメント表を見た後、ホールを出て行く。


「明日はないみたいだね」

「取りあえず、どんなことが出来るかとかを考える余裕はあるってことですね。明日、他のチームのマジックを見てみましょうか」

「そうだな。俺はどちらかと言うと器用じゃないからな。お前らに任せる」


「じゃあ、どんなことになっても文句を言わないでよ?」

「どんなことって何だよ?」

「それは・・・・」


何だか嫌な予感のする目で見て来る。どんなことをされるのかは想像がつかないけれど、何だか嫌な予感はビンビンする。


「じゃあいい。俺も一緒にやる」

「そうそう」

「何が『そうそう』だ」

「別に♪早く部屋に戻ろう♪」


「何をそんなにウキウキしてるんだ?」

「なんでもないよ。ただ、ちょっとウキウキしただけ」

「急にウキウキするはずないだろう。何か理由があるはずだ」


「だから、理由なんてないって!」

「だから、無闇やたらに触るなって言ってるだろう」


髪を触って来る凛を引き離し、部屋に戻ることにした。今日は何もない。だったら、明日の為にゆっくり寝た方がいいだろう。


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