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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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課外授業へ

三影さんに呼ばれて、渦に近づいて行くと、その中から風のようなものを感じた。


「この風、やっぱり、あそこから出てるのかな?」


「そうですね・・・・。

見たところ、窓は開いてないみたいですし。多分、あの渦からだと」


「魔界と人間界を繋ぐあれと似たようなものか?」

「さあねぇ~。でも、なんだか似たような感覚がするね」

「そうだな」


コソコソと小声で話し合っていると、三影さんに、

「注意事項をお話してもよろしいですか?」と言われて、僕達は慌てて口を閉じる。


まるで、課外授業での先生と生徒みたいだ。

もちろん、配役は、言わずとしてわかるよね?


「これから、空接の門に入ります。

それにあたり、3つ注意事項があります。

一つ目。時計類などは外してください。

時計などを所持したまま入ってしまうと、時計がおかしくなるか、

時計を所持している人間が、私達とは違う場所に飛ばされてしまう危険性があります」


その説明を聞いて、僕らはお互いの顔を見合わせる。

二人ともうんとうなずいたので、僕も、しっかりと首を縦に振った。


「2つ目。絶対にはぐれないでください。

はぐれてしまうと、また、違う場所に飛ばされてしまう危険性があります」


「・・・・あの」

「なんですか?」

「もし、違う場所に飛ばされてしまったら、どうなっちゃうんでしょうか?」

「・・・・」


彼女はそこで黙り込むと、無言で首を振った。

その反応だけで、伝えたい言葉はしっかりと伝わった。絶対にはぐれてはいけない!!


「3つ目。この世界での時間の流れは、いつも私達が感じているものとは違います。

ですから、この後に用事がある方は、入らないほうが賢明です。

この中での時間の流れは、私達にも予測不可能です」


「この中での時間の経過は、速くなったり遅くなったり、

日によって違ったりして、統一性がないんです。

だから、5分程度しか中にいなかったとしても、

この世界では2時間程度経っていることや、

反対に、1時間近く中にいたのに、

この世界では5分程度しか経っていないなどの出来事が起こってしまうんです」


「なっ、なるほど・・・・」

「この3つの条件を踏まえた上で、準備はいいですか?」

「OKです!」


僕が元気よくうなずくと、三影さんが少しだけ笑った。

桜っちや神羅はどうかわからないけど、僕は暇だからね~。

ついうなずいちゃったけど、よかったのかな?


二人の方を振り返ると、二人は笑ってくれた。

こう言う時、亜修羅だったら、「俺は忙しいんだよ!」とか怒るだろうに、

二人はなんて優しいんだろうな!


「亜修羅もさ、二人のこと見習って欲しいよね!」

「え?なんでですか?」


「こう言う時さ、二人なら笑って許してくれるのに、

亜修羅だったら、絶対怒ってたじゃん。

『俺は忙しい!』とか、『勝手に決めるんじゃない!』とか。

でも、結局楽しそうにしてたり。ほんと難しい人だよね」


「確かにそうですね・・・・。

あっ、でも、それはそれで修さんの個性と言うか、長所と言うか・・・・。

そう言うものだと思いますよ?」


「そうかな~。怒ることが長所?」

「あっ、いえ、そう言う訳では・・・・」

「ついて来て下さい」

「あっ、はい!」


三影さんに声をかけられて、会話を中断する。

どうにも、暇になると誰かに話しかけてしまう。

こう言うことが多いせいで、本当の課外授業や体験学習で、いっつも怒られてる。

でも、もう慣れてしまった。

だって、常習犯だもの。先生も大分諦めかけてる。


そう思うと、なんだか先生が可哀想だな~。

勉強熱心な生徒じゃなくて、ごめんなさいっ!


心の中で謝罪の意を述べた時、

突然、渦の方で強い風が吹いて、僕は慌ててそちらの方を向く。


すると、さっきまで渦の前に立っていた三影さんの姿が見えなくなった変わりに、

渦の向こう側で、それらしき姿を見つける。

でも、こちらから見える渦の向こう側の世界は歪んで見えるから、正直、自信はない。


「もしかして、向こうにいるの、三影さん?」


「そうですよ。この中を通れば、直ぐに向こう側に行けます。

普通に歩き出せばこの中に入ることが出来るので、心配しなくて大丈夫ですよ」


月野君はそう告げると、渦の中に足を踏み入れた。

その途端、さっきと同じ強い風が吹いて、月野君の姿は消えていた。


「わぉ!凄い!!」

「突然消えちゃいましたね!」

「もしかしたら、俺達が魔界へ帰ったりする時も、傍から見れば、こんな感じなのか?」


「そうだよきっと!わぁっ!そう考えたら、なんだか嬉しいぞ~!」


「あの、次は誰が・・・・?」

「あっ、そうだね。水樹君、先入っちゃう?」

「はい、わかりました。それじゃあ、お先に失礼します・・・・」


彼は、なぜか急にかしこまると、

月野君と同じように渦の中へと消えていった


残された僕は、ドキドキしながら向こう側を見ていた。


そのドキドキって言うのは、

ワクワクしているのと、緊張していることの両方を指してる。

きっと、新しいことに挑戦するから緊張してるのかもしれない。


僕は、自然と桜っちや神羅に先をすすめる。


「えっ、いいんですか?あんなにワクワクしてたのに・・・・」

「うん、先にどうぞ!」


「あっ、さては、新しいことに緊張してんだろ!」


「うっ・・・・」

「図星みたいだな!」


「べっ、別にいいじゃないか!

ワクワクしてるけど、なんだか、急に緊張して来たんだもん!」


僕が怒ると、面白そうに笑った後、

「じゃあ、俺が先頭を切ってやる!」と言って、渦の中に入って行った。


そして、その直ぐ後に、渦の向こう側からVサインをくれた。

それを見て、少しだけ緊張がほぐれる。


でも、なぜか、桜っちに先をすすめた。


「わっ、わかりました・・・・。なっ、なんだか緊張しますね」

「うん。でも、神羅も無事だったし、大丈夫でしょ!」

「でっ、ですよね!皆さんを待たせてしまっている訳ですし、がんばります!」


桜っちにも僕の緊張がうつってしまったようで、

そう意気込むと、ピョンと石を飛び越えるように渦の中に向かってジャンプをした。

すると、今までよりも強い風が吹いて、僕は首をかしげた。


そう言えば、神羅が渦の中に入って行く時も、

彼らの時より風が強かった気がする。・・・・気のせいかな?


「丘本君、何をしてるの?」


渦の向こう側から三影さんの声が聞こえて、僕は慌てて我に返る。

その声は、普段の時よりこもっていて、まるで、水の中で話しているみたいに聞こえる。

だけど、ちゃんと僕の耳に入って来てることが驚きだ。・・・・あれ?耳かな?


音がこもって聞こえるせいか、なんだか不思議な感覚に陥っている。

耳から聞こえたはずだけど、なんだか、直接頭の中に言われてるような気もする。


いやいや、そんなことより、早く入らなきゃ!みんな待ってるよ!


慌てて自分の思考を元に戻すと、渦の中に入ろうと歩き出す。

でも、何かに思い切りぶつかって、しりもちをついた。


何が起こったのかわからない。

一瞬、考え事をしていたせいで、歩き出す方向を間違えてしまったかと思ったけど、

僕の目の前にあるのは、あの渦。壁や柱なんて、何にもなかった。


再び中に入ろうと試みるけど、やっぱり中に入れない。

まるで、透明なガラスが僕の目の前にあって、

僕の侵入を阻もうとしているみたいだった。


そんな僕の様子をおかしいと思ったのか、みんなが話しかけて来る。


「どうしたの?」

「あの、中に入れないんです!」

「入ってこれないの?」


「はい、みんなと同じように入ろうとしたつもりなんですけど、

目の前にガラスがあるみたいに、それ以上先には進めなくて・・・・」


みんなは普通に入れたのに、僕だけ中に入れなくて、一人取り残された。

そう考えるととても不安になって、一生懸命、三影さんに事情を説明した。

しかし、三影さんや月野君でさえも、全くと言っていいほど原因がわからないらしい。


「ごめんなさい、丘本君。私達には原因がわからないわ。

部長なら何か知ってるかもしれないけれど、部長は今留守だし・・・・」


「僕、やっぱりそっちに行けませんか?」

「・・・・ええ。そっちでお留守番してもらうしかなさそうね」

「・・・・そうですか」


出来るだけ、落胆している様子を見せないようにつぶやくと、渦から離れようとした。

すると、三影さんが慌てた様子で僕のことを呼び止める。


「私達、出来るだけ早くそちらの世界へ帰るようにするから、そこで待っていてね」

「あっ、はい。わかりました」


「テーブルの上においてある洋菓子や、

新見君の淹れてくれた紅茶でも飲んでここで待っていて。絶対よ」


「はっ、はぁ・・・・」


どうしてここまで強調されるのかわからないけれど、

三影さんの圧力に負けて、つい、うなずいてしまった。


それを確認すると、ようやく安心したように、三影さん達はどこかへ行ってしまった。


その途端、目の前にあった渦も消えて、

僕は、シンと静まり返ったシークレットランドに、一人取り残されることとなった。


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