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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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いざ、出発!

「結構薄暗いね・・・・」

「あっ、足元気をつけてくださいね!色々なものが床においてあるので・・・・」

「はいはーい!おっ!」


答えた途端、僕は、足元の何かに足をとられて転びそうになった。

でも、何とか踏ん張って、ギリギリセーフ!

転び慣れてるから、体勢の戻し方も手馴れたもんだよ。


「だっ、大丈夫ですか!?」

「大丈夫大丈夫!それにしても、ここ、薄暗いけど、まだ誰も来てないのかな?」

「いえ。実は、あの扉の先にはもう一つ扉があって・・・・」


「二重扉!?」

「そうなんです。あっ、ほら。正面にあるあの扉を抜けた先に集まっています」

「なるほどねぇ~」


確かに、水樹君の指さした先には、再び扉があった。

しかも、扉を開ける取っ手がないから、またもや自動ドアの予感・・・・。


これはもう、事件と呼べるレベルだと思う。

だってさ!部室の扉が自動で、しかも、二重構造なんだよ!?厳重過ぎるよ・・・・。


うちの学校の部室なんて、ほとんど鍵がないんだ。

だから、もはや事件レベルに達していると僕は思う。


僕の予想は当っており、僕達が扉の前に立つと、閉ざされた扉は開いた。

しかし、その先に待っていた光景は、僕の予想を遥かに超えるものだった。


まず一番最初に目に入ったのは、

大きな天窓の下に置かれていた、これまた大きな丸いテーブル。

そのテーブルには椅子が6つ並んでいて、

テーブルの上にはお菓子や紅茶のポットが置いてあった。


それだけでも僕は驚く。でも、僕を更に驚かせる出来事があったんだ。

それは、テーブルに座って紅茶を飲んでいる人物・・・・

それが、雅さんだったってこと。


向こうも、僕が入って来た途端に気がついたようで、驚いた顔をした。

でも、直ぐに笑顔になると、椅子から立ち上がる。


「ようこそ、シークレットランドへ。

僕は、シークレットランドの管理人兼、

シークレットクラブの部長を務めている、浅岡雅です。

どうぞよろしくお願いします」


ゆっくりとお辞儀をされたので、僕達も、そろってお辞儀を返す。

本当は、あの時のこととか、あの後のこととか色々訊きたかった。

でも、訊きに行けるような雰囲気じゃなく、僕は、その場に立ち尽くしていた。


「どうぞ、座ってください」


雅さんに勧められて、椅子に座る。でも、椅子が一つだけ足りなかった。

すると、水樹君が、「僕、紅茶入れてきますから!」と遠慮してくれた。


「それじゃあまずは、自己紹介の続きをしよう。三影さんからどうぞ」

「はい」


指名されて立ち上がったのは、僕達が入った時、雅さんと話しをしていた女の人。

見た感じ、年上の人っぽいけど、どうなんだろう?


「私は、ここの副部長兼、生徒会長を務めている三影莉琴(みかげりこと)です。

よろしくお願いします」


三影さんは、冷静な雰囲気を漂わせていて、

雅さんとはいいコンビになりそうな予感がする。


「それじゃあ次に、皆さんのことを教えてください」


それを合図に、僕達は自己紹介を始めるものの、

なんだかみんなガチガチに緊張してる。

いつもなら緊張の色すら見せない神羅だって緊張してるんだ。

ちょっと可笑しいよね。


「なんだか言いようのないプレッシャーを感じますね」

「俺もだ。普段緊張なんかしないのに、どうしたんだろうな、俺・・・・」

「だよね、緊張しなさそうなのにね!」

「失礼な!」

「喧嘩はダメですよ!みなさんがいる前なんですから!」


桜っちに怒られて、小声での言い合いを止める。

確かに、知り合いの人が、その知り合いどうしで喧嘩を始めちゃった場合、

とてつもなく気まずい雰囲気になるもんね。あの時の空気は物凄く痛いよ、うん。


「部長、スクラップの件についてなんですが・・・・」

「うーん。そうだね・・・・」


彼はそこで言葉を切ると、僕達のことを一人一人、じっくり見ていた。

一番初めに会った時もそうだったけど、

雅さんは、笑顔でプレッシャーを放ってるような気がするんだ。

・ ・・・今は笑顔じゃないけど。


しばらくの沈黙が続く。


水樹君は、紅茶を淹れてくると言ったきり戻ってこないし、

三影さんと月野君は、雅さんに合わせるかのように、僕達のことを見る。


なんだか重たい空気に包まれて、

「誰でもいいから、早く誰か話してーー!」

と心の中で叫んだ時、その言葉が通じたかのように、雅さんが口を開いた。


「うーん、まぁ、多分大丈夫だと思うけどね・・・・」

「そうですか、わかりました」


「うん。じゃあ、俺、ちょっと出かけなくちゃいけないから。

三影さん、後はよろしくね」


「わかりました」


彼女がうなずくと、安心したようにシークレットランドを出て行った。

僕は、その後ろ姿を寂しい気持ちで見送った。


なんだか、あの時の出来事がなかったかのように感じる。

しかし、そうでないことは、一番最初の雅さんの反応からしてわかってた。

でも、なんだかあまりにもサバサバしてて、

あれは、僕が思ってた幻なんじゃないかなって思ってしまう。


それに、スクラップのことも、凄く渋々と言った感じだった。

何か嫌われるようなことでもしちゃったのかと不安を感じて、自然とため息がもれた。


「あれっ、OKもらえたのに嬉しくないんですか?」

「そうだぜ、あんなにワーワー言ってたのによ」

「あ~うん。嬉しいよ?うん、嬉しい」

「何かあったんですか?」

「いやっ、なんでもない!」


心配してくれる二人に向かってOKのサインをすると、三影さんに質問をする。


「あの、質問してもいいですか?」

「ええ。いいわよ」


「あの、自己紹介の時、浅岡さんは、

『シークレットランドの管理人』っておっしゃってましたけど、

あれはどう言う意味なんですか?顧問の先生とかはいないんですか?」


「顧問の先生はいません。

ですから、部室の管理や維持費などは、浅岡さんが管理しています。

他に質問はありますか?」


「いえ・・・・」


随分と機械的に答えられて、僕はそのまま会話を終えてしまった。

本当は、まだ聞きたいことがあったんだけど、三影さんの話し方は淡々としていて、

「これ以上質問するな!」って言われてるように感じちゃったんだ。


「質問がないのでしたら、早速空接の門を開きますけど・・・・いいですか?」


彼女の言葉にそろってうなずくと、ワクワクしながらその瞬間を待つ。


「空接の門」と言うのだから、何もない空間に門が現れるのか。

はたまた扉が現れるのか。それがとても気になった。


「扉が現れるのかな!」

「門って言うぐらいだから、門が現れるんじゃないか?」

「どうなんでしょうね!」


そんな会話をしていると、

奥の方から、慎重に紅茶を運んで来る水樹君の姿が見えて、僕達はそれを手伝う。

だって、明らかに大変そうだったんだもん。


「すっ、すみません!ご迷惑をおかけして・・・・」

「いやいや、気にすることないよ!こぼしちゃったら大変だからね」

「あっ、ありがとうございます」


水樹君のお礼に笑顔で答えて、無事、紅茶の配達を終了した。


「あっ、凛君、あれ見てください!」

「ん?」


指をさされた方向に目を向けると、

僕達が見ていない間に、テーブルの正面に変な渦のようなものが出来ていた。


それはとても大きく、僕達の体がスポッと入るほどの大きさで、

向こう側の景色は、ここのものではないみたいだった。

でも、歪みがひどくて、正直、どんなところなのかはわからない。


「おおっ!扉でも門でもないっ!」

「向こう側の景色は、ここのとは違うみたいだな!」

「なんか、歪んでるように見えない?」

「だよな!俺の目がおかしくなったのかと思ったぜ・・・・」


「皆さん、こちらへ来てください」

「あっ、はーい!」


渦の直ぐ横に立っていた三影さんに手招きをされ、

急いでそちらの方へと歩いて行った。


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