お茶会に生徒会に戦いに
校内に入ってまず最初に見えたのは、数多くの下駄箱。
そこには数え切れないほどの上履きがしまわれていて、
なんだかクラクラしてしまった。
それに、壁や床に汚れが一つもなく、とても感動する。
この綺麗さが、事務の人の頑張りなのか、
はたまた、生徒達の心遣いなのか僕にはわからないけれど、
そのどちらの場合でも、感動する!ブラボー!
「綺麗な学校だね!」
「はい、僕も、入学当初はびっくりしました。
凄く広い学校だとは聞いてたんですけど、
まさかここまで広いとは思ってなかったので・・・・」
「こんなに広い学校に通える水樹君達がうらやましいよ・・・・」
「そっ、そうですか?ありがとうございます・・・・」
「あっ、そうだ!水樹君達の部活のこととか教えてよ!もっと色々知りたいからさ!」
すると、水樹君は目配せをした後、後ろに引いた。
・ ・・・もしかして、説明が得意じゃなかったりするのかな?
そう思いながら彼の方を向くと、苦笑いを返された。
「えーっと、どんなことを話せばいいんですか?」
「うーん、じゃあ、いつもどんなことしてるのかな?
もしかして、いっつも戦ってるの?」
「いえ、いつも戦ってる訳じゃありません。
シークレットクラブは生徒会の役割も果たしているので、
普段は、生徒会の仕事の方が多いです」
「あれっ、そうなの!?それじゃあもしかして、僕と同種??僕、生徒会長だよ!」
「いえ、僕達は新入生なので、そんなに大役は任されてませんよ。
部長が生徒会長の役目を果たしてくれてます」
「そっか~」
最もな言葉が返って来て、素直に納得する。
確かに、入学したばっかりの子が生徒会長になれるはずないよね・・・・。
でも、ちょっとだけ期待してたところがあるから、少しだけがっかりした。
そのまましばらくの間質問しないでいると、
ずっと黙っていた桜っちがゆっくりと手を上げ、質問を始めた。
「あの、普段から人の出入りは自由なんですか?その・・・・部室のことですけど」
「一般の生徒が入ることの出来ないように隠された場所に扉がありますし、
万が一、その場所が見つかったとしても、常にロックしてあります。
鍵も、クラブに所属する者にしか配られないカードキーなので、
一般の生徒が僕達の部室に入ることは、まずありえません」
「ええっ!?それじゃあ、僕達は入ってもいいんですか?
一般の生徒どころか、他校の生徒ですよ?」
「そのことは部長に伝えました。それでもOKが出たので、多分、大丈夫だと思います」
「・・・・そっ、そうですか」
ようやく安心したようで、小さく息を吐く。
そんな桜っちに小声で話しかける。
「ねえねえ、亜修羅は今頃何やってると思う?」
「えっ!?そっ、そうですね~、多分、竜さんのところにいるんじゃないでしょうか?」
「なるほど、桜っちは家にいるに一票だね、僕は、その逆さ!」
「と言うことは、僕達のことを追いかけてるってことですか?」
「そうそう!なんだかんだ言って、好奇心の塊みたい人だしね!
と言うことで、神羅、よろしく!」
「ん?」
僕が突然話しかけたからかわからないけれど、神羅の反応が鈍い。
よく考えれば、しばらくの間ずっとしゃべってなかった。・・・・何かあったのかな?
「どうしたの?」
「え?」
「いや、なんかさ、ずっと黙ってて、何か考えてたのかなーって」
「ああ、いや、よ。な~んかめんどくさいことになりそうだなって」
「・・・・神羅も、亜修羅と似たように思ってるのかい?」
「いやいや、違うって!そう言うんじゃなくて、展開がな!」
「・・・・?」
なんだかよくわからなくて、首をかしげてしまう。
神羅の反応からして、
亜修羅と同じ意味でめんどくさいって言ってるのではないことはわかった。
でも、言いたいことが伝わって来ないから、素直に諦めることにする。
「そう言えば、生徒が一人もいないね」
「あっ、はい。今は冬休みなので、生徒がいないんだと思います」
「シークレットクラブはお休みないの?」
「お休み・・・・そう言えば、今まであんまりなかったね?」
「そうだね」
「大変じゃないか!」
「そんなことないですよ!
大変な時はとことん大変ですけど、
のんびりしてる時は、とことんのんびりしてますから」
「部活動って言うよりは、単なるお茶会だよね」
「お茶会!?」
聞けば聞くほど、
僕の知ってるクラブ活動とはかけ離れた答えの返って来るシークレットクラブに、
尚更興味を持った。
元々興味津々だったのに、更に興味がわいて来たから、もう、爆発してしまいそうだ!
心の中にある火山に何とか蓋をすると、キョロキョロと辺りを見渡す。
三回くらい階段を上ったから、現在位置は、多分、三階であるはずなんだ。
でも、なんだか、窓から見える景色の高さがおかしい。
僕達の教室も三階にあるから、いつもそこから校庭を見下ろしたりしてるんだけど、
その高さに比べて、低い位置にいるように感じる。
変な違和感を感じながら二人の後ろを歩いて行くと、正面に大きな扉が見えてきた。
その扉にはドアノブがついていないので、鍵を開けると、
自動で扉が開くものなのかなって自然と推理してしまう。
僕の考えは当っていたようで、
月野君は胸ポケットから何かのカードのようなものを取り出すと、
それを、扉の横にあるセンサーにかざした。
すると、その扉が開いたんだ。
自分の推理が当たったことよりも、学校に自動で開くドアがあることに感動して、
水樹君に話しかける。
「うわぁっ!自動ドアだよ!凄いね!」
「はい。僕も、一番最初に来た時は驚きました。
学校に自動ドアがあるところなんて、そうそうないですからね」
「そう言えば、さっき月野君が使ってたカードって、
さっき説明してたカードキー?」
「そうですよ」
「あのさ、もしよかったら、みせて!」
顔の前に両手を重ねて頼んでみると、すんなりOKがもらえた。
ありがたくそのカードを受け取ると、じっくり観察する。
カードの表には一番上にNo.5と書いてあって、
そのちょっと下に、水樹君のフルネームと学年。
それから個人情報などが書かれていて、一番下に風紀委員と書いてあった。
正直な感想を述べると、写真があれば、生徒証と変わらないように感じる。
「シークレットクラブのことについては触れてないね」
「あっ、そのことは、裏面に僕の役割が書いてあります。
もちろん、スクラップのことは書いてないですけどね」
言われたとおりにカードを裏返してみると、
カードの一番下の隅の方に、
「シークレットクラブ所属 雑務及び書記」と書かれていた。
水樹君にお礼を言ってカードを返すと、
先に入っていた二人の呼んでいる声が聞こえたので、
自動ドアが閉まらないうちに、急いで中に入った。