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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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プライバシーはないものとお考え下さい

「よしっ、追いかけて来てないな」


勢いよく閉めた扉に耳を当て階段を上って来る足音が聞こえないことを確認すると

ため息をつきながらベットに寝転がる。


あいつらは元気だ。いつも動き回っているから。

だが、俺は元気じゃない。動くことが多い方ではないからとても疲れているんだ。

それなのに巻き込もうと言う。とんでもない話だ。


水斗のことや堕天使のことは凛のせいとは言わない。

しかし、今回の出来事は凛のせいになりうる。

と言うか、普段から俺はあいつの行動に巻き込まれる。そして疲れる。

そのほとんどは俺が自ら進んで参加している訳ではなく、

掃除機のように吸い込まれて強制的に参加させられたものが多い。


今回の件もなんだか雰囲気的にとてもめんどくさそうな感じがした。

だから、凛が気づかないうちにさっさと退散してしまおうとした訳だ。


……確かに、水樹達の言う世界が気になっていない訳ではない。

いや、そうじゃない!

つい、変なことを考えてしまった自分の頭を叩くと、

聖夜からもらった機械を起動してみる。


さっきは「新着メール1件」の文字が表示されたのに対し、

今回はなんだか変な動物が出て来た。

おそらく犬と思しきものなんだろうが普通の犬じゃない。

背中に羽が生えているのだ。普通ではありえない。


その犬が出て来た後に吹き出しが出て、「こんにちは!」と表示される。


どうしていいかわからず黙ってその画面を見つめる。

犬が話すはずがないと言う常識は一端置いておこう。

しかし、どうしたら画面が切り替わるのかわからない。


ボタンを押してみても全く反応がなく、犬の言葉が変化する訳でもない。

そこで画面に触れてみる。最近、そうやって操作するものが増えているらしいからだ。

しかし、それも効果がない。


壊れたのかと思って振ってみると犬が飛んだ。が、それだけしか動きがない。


「なんなんだ、これ」


イライラしてつぶやくと、犬の吹き出しに変化があった。

さっきまでは「こんにちは!」としか表示されていなかったのだが、

犬の吹き出しの中身が「?」と言うものに変わる。


それを見てようやく理解する。この機械は音声認識なのだと。

何か話しかけてみるか。


「操作方法を教えてくれ」


犬は地面に降り画面の外へ消えた……かと思いきや、

直ぐにホワイトボードを引きずって帰って来た。

そこには文字と絵が書いてあってこれから説明してくれるらしい。


犬はホワイトボードを画面の中央まで引きずってくると、

その場に座り「ちゅーとりある」と言った。

しかしそこから先に進まない。もちろん、何度も声をかけた。


……こんな言い方をすると、まるで変人みたいだな。それはわかっている。

一番最初にそんな人間を見た時は、頭がおかしくなったのかと本気で思った。

なぜならそいつは、「二丁目ラーメン、食べたい」と言っていたのだ。

雰囲気からして電話ではない。

そいつは機械に向けてその言葉を放っていた。

誰がどう見たところで異様な光景だろう。


今の自分は、そいつと似たような形になっている。

そう考えるとなんだか嫌な気分になり、電源も切らないまま機械を閉じた。


そのまま仰向けになって目を閉じる。このまま眠ってしまおう。

自身が変な気を起こす前に……。


しかし、俺の意思とは相反する頭はあいつらのことを考え始め

冴えてきてしまった。


時間と空間を移動して、スクラップと呼ばれる

妖怪よりも弱い化け物を相手に戦っているらしい。

もしその話しが本当なら、妖怪である俺達が知らないはずがない。

いや、もしかしたら俺達が下級妖怪と呼んでいる奴らのことを

あいつらがスクラップと呼んでいるだけなのか?


いや、そうじゃない。そんなことはどうでもいい。それより、水樹や琥珀は……。


一度考えだしたら雪崩れ込むように疑問が溢れて来た。

それを忘れるためにあの機械を弄っていたのに、

あれも使えないんじゃどうしようもない。


無言で起き上がり、

自然と部屋を出て行こうとする自分をなんとか部屋に留める。


俺は疲れているんだ。どうして追いかけようとするのか。馬鹿じゃないのか?


自然な形で出て行こうとする自分を罵倒しながらベットに座りなおすものの、

なんだか物凄く気になる。

あいつらについて行けば、

この溢れる程の疑問に合点がいくような出来事があるような気がする。


もちろん、こんなの単なる勘だ。そんな証拠もなければ理由も見当たらない。

だが、俺の勘はそう告げている。


しかしだ。あの時は、疲れている」などと言って勝手に部屋に戻った訳だ。

それなのに「やっぱり、ついて行ってもいいか?」なんて言うのは恥ずかし過ぎる。


凛や神羅は絶対に笑うだろう。そう考えると、どうにも踏ん切りがつかない。

そもそもは俺の勘なのだから、恥ずかしい思いをしてまでついて行っても

何もない可能性だって十分にあるはずだ。


「……」


どうにもはっきりしない自分に苛ついて、とりあえず下りてみる。

まだ出かけてないんじゃないかと思ってのことだったが、皆の姿はなかった。


その変わりに、なぜかニヤついた顔の竜が椅子に座っていて

コツコツと机を叩いたからとりあえずは正面に腰を下ろす。


「なんだよ」

「よっぽど悩んでるみてぇだな」

「!?」


言われた途端に理解する。さっきまではこいつの能力を忘れていた。

いや、忘れていなかったとしても、距離が離れているから大丈夫だろうと思っていた。

だから、一人で考えていると思っていたんだ。しかし……。


「全部ダダ漏れだぜ?」

「……プライバシーの侵害にも程がある」


「まあそう言うなよ。気になるんだろ?それじゃあ行ってこいよ。

今ならまだ間に合うだろうからよ」


「……」


「ほらほら、あいつらゆっくり歩いてっから

まだ大通りの信号のところにいるはずだ。ほら、早く!」


「……わかった」

「よしっ! 我慢してたら体に悪いからな。気をつけるんだぞー!」

「わかってる」


心配してくれた竜に礼を言い、服を着替えてから外に出る。

最初は嫌な気分だった。心を読まれるだなんて、誰だって嫌なはずだ。

ただ、今回だけはあいつの能力に救われた気がした。

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