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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 雷光銃編 意外な一面

楠の車が大きなドームの前で止まる。


そのドームは、東京ドームを十個分並べたぐらいの広さがある。・・・・こんなところでやるのか?


「ここが会場です」

「大きなドームですね」

「ええ。我が楠建設一番の出来ですからね」


さりげなく宣伝をした後、俺達を車から降ろし、ドームの中に促す。


余程自らのドームを自慢したいのか、時間がないのかと、どちらかだろう。


入り口は自動ドアで、中は、これもまた大きなホールだった。


まだ人がまばらにいるからいいが、人が誰もいなかったら、大きさに威圧されてしまう。


「どうですか?」

「凄いですね!何だかワクワクします!」

「そうですか。それはよかった。ささっ、受付はこちらです。受付で登録をした後、部屋の鍵をもらえるから、その鍵の部屋で休むといい」


楠は去り際にそう言うと、そそくさと走って行った。妙に動きが小さい奴だ。小心者と言うのか?


受付はホールのど真ん中にあり、長い机に二人の女が座っていた。


あんなど真ん中にいて、寂しくならないだろうか?普通だったら、少しは嫌になるだろうな。


「あの・・・・トリックバトルに出たいんですけど・・・・」

「トリックバトルトーナメントの出場者ですね?では、ここにチーム名を書いて下さい」

「ちっ、チーム名?」


桜木が、想定外と言うようにこちらを振り返る。


俺は、顔を合わせないようにそっぽを向く。


凛はと言うと、再び髪を触って来る。いい加減慣れて来たが、あまり心いいものではない。


「おい、だから触るなって!」

「シャンプーのCMに出てみればいいのに。と言うか、むしろ・・・・。亜修羅って女だったり・・・・」

「するかよ!何で髪から俺が女だと言う結論にたどり着く?おかしいぞ!」


「いや、そうとしか思えないほどだからさ」

「あの、チーム名・・・・」

「だからってな、俺がどうして女になるんだ?」

「別に変な意味はないけどさ」


「だから、チーム名・・・・」

「変な意味がなくても、俺はそう思われるのは嫌だ!」

「チーム名は『犬神!』」

「わかりました。犬神ですね」


全く話がかみ合っていない気がするが、気にしないでくれ。


俺は、髪のことを話していた。桜木は、チーム名のことだ。ことがゴチャゴチャするようになったのは、凛が鞍替えをしたからだ。


「おい、何で犬神なんだよ?」

「だって、妖狐よりかっこいいじゃないか」

「ふん、ナルシストが。自分がかっこいいと思ってる大バカ者め」


「そんなんじゃないもん!亜修羅みたいに、自分の髪をそこまで丁寧に手入れしてないもん!」

「俺だって、そんなこと一度もしたことないぞ。何も知らないくせに、知ってる風に言うなよ!」

「二人とも、行きますよ」


「どこに?」

「部屋ですよ」

「僕達、後で行くから!」


凛がそう言った途端、空気が一変して冷たくなった。空気中の成分が、全て凍りついたような感じだ。


「みっともないですよ。行きましょう」

「はい・・・・」

「・・・・」


桜木の威圧に、俺と凛は怒りが冷めて、冷静になる。普段怒らない奴を怒らすと怖いって言うが、桜木の場合、怖いどころじゃない。それ以上の何かがあるんだ。何かはあえて言わないが。


「すみませんでした。騒いでしまって」

「いいのよ」


受付の女に謝ってから、先に鍵を持って歩いて行く。


その後を、少しビビリながら歩いて行く。


あいつ、怒らせるとヤバイな。


「亜修羅、さっ、桜っちが・・・・」

「ああ」

「何か話しかけてよ」


「何で俺が話しかけなくちゃいけない!お前が話しかけろ!!」

「でも、僕、怖いよ」

「俺だって嫌だ」


小声で言い合いをしていると、不意に桜木が振り返った。しかし、もう怒っていない様で、辺りの空気が冷たくなることはなく、正常なままだった。


「あの・・・・もう怒っていませんので、そんなに恐縮しないで下さい。そんなに怖かったですか?」


無言で思い切り首を縦に振る。凛も同様、硬く口を結んだまま、思い切り縦に首を振っている。


「脅すようなことをしてすみませんでした。大して怒っていた訳ではないんですけど、ちょっとムッとしたぐらいで・・・・」


こいつ、ムッとしたぐらいであんなに怖くなるのかよ?それに、普段はムッともしたことがないのか?いや、今のあいつに反論したら、いいことは起きないな。やめておこう。


「じゃっ、じゃあ・・・・、もう怒ってないの?」

「はい。怒ってません」

「本当?」


「はい。滅多に怒らないと言われてるので。その分、怒ると怖いと友人に言われました」

「そっか、今はとりあえず怒ってないんだね?はぁ、ちょっと気が抜けた」


張り詰めていた空気が溶けて行き、元の空気に戻る。


桜木にはあまり感じないんだろうけど、空気を操る力か何かを持っているんじゃないか?それぐらい空気が変わるぞ。


「まぁ、さっきのことは忘れて下さい」


桜木と付き合っている限り、一生忘れない出来事になったと思う。そう簡単に忘れることは、不可能に近い。


「ねぇ、どんな部屋かな?」

「俺に聞くなよ」

「桜っちはどう思う?」

「・・・・普通の部屋なんじゃないでしょうか?特別汚くもなく、綺麗でもなく・・・・」


「そう言えばさ、どうして部屋なんかあるんだろうね?ちょっとしかいないはずじゃないのかな?受付のお姉さんの言葉だと、何だか、しばらくそこにいることになるようなことを言っていたような・・・・」


「はい。そうしっかりと言ってましたよ。それに、手ぶらのようですが、何か必要なものはありますか?って聞かれましたから、一応日常生活で必要なものをお願いしますと言ったら、住所を聞かれました。きっと、持って来て頂けるんだと思います」


「おい、待て!俺は、銀行には金を預けてないんだぞ?そいつらが泥棒だったら、全財産盗まれることになるんだぞ!?」

「そっ、そうなんですか?何で銀行に預けないんですか?」

「銀行強盗とかいるだろう?だから、自分で守った方が安全だと思ったからだ」

「きっと大丈夫だよ、信用しようよ」


凛が凄くのんびりとした声で言うから、イラッとする。人間界なんか、金さえなければ生きていけないんだぞ?


「なに呑気なことを言ってるんだ?」

「もしお金を盗まれたところでさ、まだ何でも屋の仕事をしてるんだったら、生きていけるじゃん。前よりはお金を溜めるのが大変にしても」


「おい、働くのは俺なんだぞ?金がなくなった時は、お前等も何でも屋じゃなくてもいいから働け!同じ住人として」

「でも、中三ぐらいってさ、あんまり請け負ってくれないよ?」


「じゃあ、俺の仕事を手伝え。俺なんかな、十六で一つの仕事を一人でやり切ってるんだ。凛達も手伝った方がはかどるに決まってる」

「ええぇ~~」


嫌がる凛を無視し、本当に金がなくなった時は、無理矢理にでも手伝わせると決めて、廊下を歩く。こいつらは、(特に凛は)俺を保護者みたいに思ってるけどな、俺だって、まだ現役の高校生だ。


しかも、一歳しか歳が変わらないのに、俺は働いて、凛達は遊んでと言うのは明らかに不幸だ。たった一歳年上なだけで。


後ろでブツブツ言っている凛を無視して、鍵の番号の部屋を見つけた。見た感じだと、そう広くもないように見える。しかし、ドアが小さい。俺の身長と差ほど変わらない。


「うわぁ、このドアちっちゃいね。亜修羅の身長と差ほど変わらないんだけど。部屋もこれくらい小さいのかな?」


「いえ、ドアが小さくても、部屋は広いってこともあるかもしれません。でも、こう見ると、修さんが大きいのか、ドアが小さいのかわかりませんね。修さんは小さくはないと思うんですけど・・・・。でも、ドアが小さいと、不思議な気分がします」


俺は、未だに桜木の言動に警戒を示しているが、凛は怒っていないとわかった時点で、いつも通りに接している。ある意味、そこは凛の凄いところだと思う。


「取りあえず、考えるよりもさ、中に入っちゃおうよ。そっちの方が考えるより簡単だし」

「そんなに単純でいいのか?」

「大丈夫大丈夫。受験勉強みたいに眉間にしわを寄せて考え込むなんて嫌いだよ」

「そう言えばお前ら、受験勉強はいいのか?もう十一月だぞ?」


「大丈夫。高校に行くつもりはないしね」

「はい。僕も行きませんから」

「じゃあ、俺も高校を中退しようか。いい加減飽き飽きして来たところだしな」

「僕らだってさ、義務教育って言う制度がなければさ・・・・。いいな亜修羅は。高校生は義務教育じゃないから、無理に行くことはないんだもん」


「そんなことより、さっさと部屋に入るぞ」


たまたま、人間界に来たのが十六の時なのだから、仕方がない。


凛につべこべ言われる筋合いもない。(まぁ、これはつべこべとは言わないだろうが)


そう割り切って部屋の中に入った。


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