表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
467/591

強さと弱さ

「・・・・はぁ」


これで何回目なのか数えていられないほど寝返りを打った気がする。

そして、何度目か数えていられないぐらいため息もついた。


妖力測定器で遊んだ後、竜さんに布団を出してもらって、そのまま寝ることになった。

最初のうちは、まぶたも重くて、目をつぶれば眠りにつけるぐらいだったんだけど、

考え事をしているうちに眠る機会を逃してしまったのか、

今ではパッチリと目が冴えてしまって、眠れる気配がない。


普段なら、きっと眠れる時間帯なんだ。

部屋の中にある時計を何度も確認したから今が何時だってわかってる。

それなのに、なぜか今日は眠れない。


もしかしたら興奮してるからってことも関係してるのかもしれないけど、

環境がいつもと違うってことが少なからず関係してるのかもしれない。


ほら、僕らの住んでるアパートは狭いから、リビングの机を玄関の方におしやって、

みんなでそこに寝てる状態なんだ。

もちろん、狭いから誰かとぶつかったりは日常茶飯事だ。


最初は亜修羅だけだったけど、段々数が増えて、もう部屋の間取りは限界。

四人以上は入らないだろうから、きっと新たな人が来ることはないと思うけど、

想像したら怖くなった。


でもまぁ、僕の体は今のこの広々とした空間よりも、

あの狭い空間にいる時の方が

居心地がいいと感じるようになってしまったのかもしれない。


周りを見渡しても誰の姿も見えなくて、僕はかなりの心細さを感じた。

最初の時はそんなことなかったのに、急にどうしたんだろう・・・・。


何とか眠ろうと目をつむってみるものの、

なんだか誰かに見られているような感覚がして、僕は慌てて目を開ける。


そう。さっきからずっと感じてるんだ。

昨日は全く感じなかったのに、今日になってどうして・・・・。


するとその時、部屋のどこからかコソコソと話し声が聞こえて来て、

僕はとっさに耳をかたむける。でも、あまりにも小さな声で、内容は全く聞こえない。

声の様子からして、僕と同じ空間に誰かがいることは事実だ。でも、一体誰・・・・?


怖くなって、こっそりと布団から出ると、音を立てないように歩き出す。


その時、何かが僕の体を触った。

その感覚はとてもひんやりとしていて、僕は悲鳴を上げそうになった。

しかし、思い切り口をふさがれて、ついでに手と足も動かせなくなる。


「静かにせい!」

「・・・・」


急に体の力がぬけて、ゆっくりと振り返る。

そこにはふわふわと浮いているおじいさんがいた。

それにはびっくりして再び出て行こうとするけれど、そのおじいさんに止められた。


「何、心配せんでもええ。わしは、いい霊ってやつじゃからの」

「はっ、はぁ・・・・」

「水樹に聞けばわしのことは知っておるから、きっと教えてくれるじゃろう」

「でっ、でも、今は寝てますよ?」


「うむ、そうじゃな。驚かしてしまったみたいですまなかったのぅ。

わしは幽風と言うと言う者じゃ」


「あっ、はい・・・・」

「わしもこの部屋にいつもいるんじゃ。どうぞよろしく」

「あっ、お邪魔してしまってごめんなさい!」


まさか先客がいたとは知らなくて、僕は慌てて頭を下げた。

でも一つ気になるところがある。

それは、どうして今までは姿を現さなかったのかと言うことだ。


「あの、僕、この前もここで眠ったのに、

どうしてこの前は出てこられなかったんですか?」


「ああ、それはのぅ、昨日は外出しておったからじゃ。

今日は、いつもどおりに帰って来たら布団がひいてあったから驚いたんじゃ」


「ぼっ、僕も驚きました・・・・」


「うむ、悪かったのぅ。

わしは何でも知っとるから、何か聞きたいことがあったら聞くといいぞ」


「あっ、はい。ありがとうございます・・・・」


お礼を言うと、幽風さんは満足げにうなずいて姿を消した。


僕は、誰もいなくなった空間をじっと見つめる。

なんだか不思議なおじいさんだった。

それに、話が嵐のように過ぎ去って、残された僕は呆然としてる。

今さっきまでの出来事が夢なんじゃないかと思えるほどだった。


「・・・・よし、息抜きしよう」


自らに声をかけると、部屋の外に出る。


二階の廊下に電気はついてなくて、

階段の正面にある窓から入って来る光だけがこの空間を照らしていた。


リビングにも明かりはついてないので、

もうみんなが眠ってしまった後なのだと感じて、僕はため息をついた。


僕はいつも、眠れない時は誰かと話しをする。

もちろん、三人とも眠ってしまってる時がある。

そう言う時は、さすがに起こすことはない。

でも、僕がしばらくの間ゴロゴロしてると、神羅が起きて、話を聞いてくれるんだ。


どうやら物音に敏感になってるらしいから、

結構離れた場所で寝てる僕がゴソゴソ動いてる音だけで起きちゃうみたい。

ちなみに、寝ている場所としては、一番玄関に近い場所で寝てるのが神羅。

その次が亜修羅。で、その次が僕で、洗面所に近い側に寝てるのが桜っちって訳だ。


でも、これは正しく決まってることじゃないから、

眠い時はみんな順番なんか忘れちゃってる。

一応、定位置として定められてるのはこの順番なんだ。


神羅は、亜修羅を挟んで向こう側にいると言うのに、

僕の寝返りの音に気づいてくれるのだ。

それなのに、亜修羅と来たら全然起きない。

本人が言うには、「お前が夜中、散々体を蹴るから眠れない」だそうだけど、

桜っちに聞いてみると、そんなことはないらしい。やっぱり、嘘ついてるよね?


まぁ確かに、寝て起きたら僕は自分の陣地を移動して、

亜修羅の布団で寝てたり、桜っちの布団で寝てたりとするけど、寝相は悪くないと思う。

だって、あの狭い部屋が悪いんだもん!


そう思った途端、なんだか寒気を覚えて、

僕はそれ以上このことについて考えることをやめにする。


亜修羅に聞かれたら大変だからね~。

前までは、「寝床の順番を変えることを希望する」と言うぐらいで済んでたけど、

今じゃ、「次蹴ったらほうり出してやる!」って怒りムード満点で言われちゃうからね。

僕、無意識なのに。酷いよね。


えーっと、なんだか随分話がそれて来てしまった。

僕が言いたかったことはね、

「寝る時はいつも誰かがそばにいたから、一人ではなんだか落ち着かない」ってこと。

それと、話し相手が欲しいなって思ってたんだ。


でも、見た感じじゃ誰かが起きてる様子もなさそうだ。

どこのドアからも光は漏れてないし。


だから僕は、最終手段として、久しぶりに空を見上げることにした。

空を見て帰った後は、不思議と気持ちよく眠れるんだ。

最近は、そんなことをしなくても誰かと話してるうちに眠れるようになってたから、

ご無沙汰だなと内心ワクワクしながら屋根に上った。


すると、どうやら先客がいたようで、月の光に影が映る。

その影には耳があったから、きっと人間ではないことがわかる。

でも、絶対に動物のシルエットじゃないから、妖怪だと理解した。

そして僕は、その影に話しかける。


「こんなところで何やってるのさ?」


すると、その影は振り返った。その顔を見て、僕は笑顔が引きつるのを感じた。

なぜなら、僕が話しかけた相手は、想像していた人とは違ったからだ。


僕はてっきり、亜修羅だと思ってたんだけど、違った。なら、誰だと思う?

・ ・・・・・・はい、答えに行ってみよー!


振り返ったその顔は不機嫌。そして、その髪は金髪ではなく、銀髪だった。


「別に、関係ねぇだろ」

「うっ、うん、なんか、ごめん・・・・」


なぜだか物凄く殺気だっている琥珀君に向かって僕は苦笑いを浮かべると、

ゆっくりと近づいて、少し離れた場所に並ぶように座る。


これでも僕は気を遣った方なんだけど、その距離では満足していただけなかったようで、

更に距離を離した。

それを見て、僕は小さくため息。


今までも目は冴えてた。でも、この重い空気に触れたことで、

更に目が冴えて来て、眠るどころではなくなってきた。


かと言って、話しかけることも出来ない。

亜修羅とおんなじような空気を出してるんだ。

「話しかけてくるな!」って。


亜修羅の空気なら慣れてるからぶち壊せるけど、琥珀君は最近出会った子だから、

そう言う訳にもいかない。

どうしたものかと考え込んでいると、声が聞こえた。


「お前、化け物みてぇに強ぇよな。なんでだ?」

「・・・・僕?」

「当たり前だよ、お前しかここにいねぇだろ」

「うっ、うん、そうだけど・・・・」


少しだけ傷ついた。

確かに、僕の力は化け物と言われても正しいレベルに達してる。

自分で自分が怖くなることもあるし、自分が化け物だって思うことも多々ある。

・ ・・・でもね、自分が思ったり言ったりするのと、

人が思ったり言ったりするのとでは、話しが全然違うじゃん?


だから僕は、「化け物と言われても仕方ない」と言ってたけど、

実際にそう言われるとショックだなと感じたんだ。


「水樹が言っただろ、俺の妖力値。雑魚よりも弱い。あんなの・・・・」

「あっ、あのさ、僕のこれは、生まれつきなんだ」

「・・・・生まれつき?」


「うん。どこかで特殊な訓練を受けたとかじゃなくて、

普通に何事もなく成長した結果がこれ」


「・・・・信じられねぇな」

「うん、それは僕も思う」


「それなら、本当のこと教えろよ」

「ええっ?!だから、何も隠してないって!」

「・・・・」


僕の言葉で更に不機嫌になってしまったのか、琥珀君は今まで以上に距離を離した。

それを確認すると、僕の心は、少しだけ痛んだ。


「・・・・俺は、水樹を友達と思ってるし、守りたいとも思ってる。

でも、あいつよりも俺は弱ぇんだ。

水樹は完璧、お前らも完璧。でも、俺は不完全だから」


「・・・・どう言うこと?」

「当然と言えば、当然のことなんだ。くそっ」


琥珀君はそれだけ言うと、どこかへ行ってしまった。

残された僕は、何が何だかちんぷんかんぷんで、訳もわからず首をかしげる。


琥珀君は、急に不機嫌になって、どこかへ行ってしまった。

その時間は、ものの数秒の出来事だから、理解する間もなかった。

ただ一つ言えることは、琥珀君がなんだか悲しそうで、怒ってたってこと。


もしかしたら、僕が何か変なことを言っちゃったかなと思って

さっきの会話を思い出してみる。

でも、特に悪いようなことを言ってない気がして、僕はため息をついた。


こうなったら、誰かを道連れにして考えるしかない!

そう思い立つと、さっそく僕は家の中に戻った。

もちろん、他の人は起こさないように、慎重にね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ