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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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空の旅へ

「はぁ・・・・疲れた」


ボソッとつぶやくと、フラフラとした足取りでベットに倒れこむ。

ドッと疲れが出て来て、まぶたが重くなる。

いつもならパジャマに着替えてから寝るんだけど、今日はもういいかな・・・・。


いろんなことがあった一日だった。

感情が沢山波打って、

体はそこまで動かしてないはずなのに、とても疲れたんだ・・・・。


腕を頭に乗せた時、硬いものがぶつかって目を開ける。

そこにあったのは、昨日エンジェルがくれたピンク色のブレスレットだった。


「あっ・・・・」


それを見て、わたしは目が覚めた。そして、自分の机の方に歩いて行く。

昨日の夜にエンジェルから渡された水色のブレスレットは、結局渡せてないんだ。


「・・・・これがなくても、少しは進展したもの」


ブレスレットを目の高さまで持ち上げてみる。

その時、窓の向こう側に何かがいることに気づいて、目を凝らす。


今は真夜中で暗いのに、電気をつけてない状態なんだ。

いくら窓の辺りは月の光で明るいと言っても、距離が遠かったから、

何がいるのかわからない。


少しの間、その何かをじっと見ていると、

コツコツと窓を叩く音が聞こえて、その何かが動く。

気になって近づいてみると、白い鳩だった。

その口には紙のようなものをくわえていて、こちらをずっと見ていた。


それでも私は、窓を開けることが出来なかった。

この様子からして、なんだか私に用があるみたいなんだけど、

もし窓を開けて部屋の中に入って来たりしたら・・・・。


私は別に鳥嫌いって訳じゃない。ただ、少しは嫌だと思わない?

鳥が入って来てバタバタと暴れまわるの。嫌でしょ?


だから私は、窓を開けなかった。

しかし、その白い鳩はジーッと私を窓越しから眺めていて、

「開けろ」と言われているようだった。


私は、ずっと開けるつもりはなかった。

だけど、その鳩は、私が窓を開けるまで、絶対にどこへも行かない気のようなので、

最終的には私が折れた。だって、何分待っても動かないんだもの。

もちろん、窓越しに、「・・・・絶対に入って来ないでよ?」って言葉を伝えてね。


私が窓を開けると、その鳩はその場を動かないまま紙を落とした。

私が拾うと、その鳩はようやくどこかへ飛んで行き、私はホッとひと息をつく。


何が書かれているのかわからないけれど、とりあえずは開いてみた。

すると、ただ一言。「空を見上げて」と書いてあった。

これを見て、私は誰がこれを送って来たのかわかった。


窓のふちに体を引っ掛け、落ちないようにしながらめいっぱい体を乗り出すと、

私の家の屋根に、エンジェルが座ってるのを見つけた。

エンジェルも私の様子に気づいたようで、

以前のように宙を歩いて来ると、私の目の前に立った。


「何の用よ?」

「おまじないの効果はあったかなと思って」

「・・・・あったけど、最悪よ」


目を伏せてつぶやくと、影が私の方に伸びた。

不思議に思って視線を上げると、エンジェルが手を差し伸べていた。


「嫌よ。散歩なんて」

「僕のことはそんなに嫌いかい?」

「そっ、そうじゃないけど・・・・また、転びそうになるのは嫌よ」


「大丈夫。今日はそんなに緊張してないから、君がいることを忘れたりはしないさ。

だからほら、行こう」


エンジェルに手を差し伸べられて、私はしぶしぶその手をとると、外に出た。


「緊張なんてしてる様子なかったじゃない」


「そんなことないよ。こんなに可愛い君と手をつないでるんだ。

今だって凄くドキドキしてるよ」


「うそ!」

「なんでそう思うの?」

「だって、うそ臭いもの。それよりも、どうするのよ?屋根に乗るの?」


「いや、今回は、空の旅をと思ってさ」

「・・・・ふーん」


そっぽを向いて答えるけれど、内心私はドキドキしてた。だって・・・・。

そこまで考えた時、瑞人の意識の中での出来事を思い出して、

そのことについて問いただしてみようと思う。


「瑞人の意識の中でのこと、ちゃんと教えなさいよ!」

「え?」

「とぼけないの!話してたじゃない。『後で教える』って。今は後よ!」


「ああ~あれね。うん、また今度でいいんじゃない?」

「ダメよ!絶対にダメ!」

「まあまあ、そんなに怒らないで。怒った顔も可愛いけどさ」


そう言われて、怒っていた感情が一気に薄れ、ドンドン顔が熱くなるのを感じた。

エンジェルは、いっつもこんなことばっかり言ってるんだ。・・・・もう。


「そっ、そんなことない!もう!」

「照れてるな~」

「当たり前じゃないのよ!」

「そっか、ごめん。もう言わないよ」


「・・・・そんなことより、どう言うことなのか教えて。私はずっとうずうずしてたの」


「うーん、それを言ったら、再び瑞人君が眠っちゃうかもよ?」

「そんなわけないでしょ!」

「まあね」

「・・・・はぁ」


ため息をついて視線を下に下ろす。

けれど、直ぐに上げた。自分が今、宙を歩いていたことを忘れてたんだ。


「怒らせちゃった?」

「別に・・・・」

「怒ってるよね・・・・」

「怒ってない」


私はそれだけ言うと、他に何を聞かれても答えるつもりはなかった。


「よしっ、秘密の場所に連れて行ってあげよう」

「・・・・」

「それを見たら、きっと君の機嫌もよくなるからさ、ね?」

「・・・・わかったわよ」


私がしぶしぶうなずくと、エンジェルは嬉しそうにうなずいて方向転換をした。

その横顔が、やっぱりどこか似ていて、私は自然とドキドキしてしまった。


「ん?どうしたの?」

「ううん、なんでもないわ。ほら、早く連れて行きなさいよ」

「はいはい、わがままなお姫様」

「わがままはどっちよ!」

「これは失礼」


ふざけた様子で軽くお辞儀をするエンジェルの様子を見て、

私はため息をつこうとしたけれど、やめた。

その代わりに、手を思い切りギュっと握ってやった。

もちろん痛がってたけど、そんなの無視。

だって、エンジェルが悪いんだもん。しょうがないじゃない。


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