楽しく遊べれば、みんな仲間!
「よし、いいぞ」
「はぁ~」
ようやく開放され、前に倒れこむ。
修達と別れた後、僕は約束どおり、聖夜君の家に連れて行かれた。
すると、先客がいて、二人がかりで色々と調べられた。
その間、少しの休憩時間も設けてもらえなかったので、正直、とても疲れている。
「何かわかったか?」
「うーむ、俺にもよくわからんのじゃ。心理専門じゃないんでの。
でも、脳波を調べると、なんか変なことはわかった」
「変?」
「そうそう。通常なら、ここがこの数値を超えることはないんじゃ。
でも、あいつの脳波はいつもこの線を越えておって、なんか変なんじゃ」
「ふむ」
二人はとても楽しそうにはなしているけど、僕は楽しくない。
さっきから色んな機械で実験をさせられて、とても疲れてる。
「あのさ、変って言うのはどう言うこと?僕がおかしいってこと?」
「そうじゃないんじゃ。ただ、普通の人間と少し作りが違うんじゃ」
「みたいだな」
「いい意味で?」
「ふむ。まぁ、哉代や僕、竜も普通の人とは違うつくりだから、そこまでレアじゃない」
「そうなんだ・・・・」
「まぁ、もう少し調べる必要がある。だから、ここで少し待っててくれ」
「暇だったら、えーじゃんと交流すればよろし」
二人はそう言うと、僕の言葉も聞かずに出て行った。
そう言えば、まだあの不思議な言語を話す人の名前を知らない。
聖夜君に連れられて聖夜君の家に来ると、あの人が先に来ていた。
様子からして聖夜君が呼び出した人らしいんだけど、
僕に自己紹介もしなければ、僕の名前を聞いてくることもない。
だから、お互いに名前を知らない状態なのだ。
だから、えーじゃんって言うのが誰なのかも当然聞かされておらず、
僕は辺りを見わたした。
今は、聖夜君の実験室にいる。だから、周りには沢山の薬品や、機械がある。
でも、そのどれもが名前をつけられるようなものではなさそうだ。
「・・・・うーん」
「どうしたの?調子悪いの?」
急に話し声が聞こえて来た。
その声は、小学生ぐらいの男の子の声だったけど、ここに聖夜君はいない。
それに、聖夜君がクラスメートをここに連れてくるとは思えない。となると・・・・。
声の聞こえた方向を振り返ってみる。すると、犬がいた。でも、犬が話すはずがない。
かと言って、それ以外に話すものはないはずだ。
僕がじっと犬の方を見ていると、その犬は不思議そうに首をかしげた。
沈黙が続く。すると、その犬が口を開いた。
「僕だよ」
「・・・・君が話してるの?」
「そうそう。みんな驚くけど、僕はね、話せるんだ」
「・・・・凄いね」
「うん。あのね、マスターが僕を天才に作ってくれたんだ」
「えっ!?・・・・もしかして、本物の犬じゃないの?」
「そうだよ。気づかなかった?」
当たり前のように問い返して来る犬君に対して僕は全力で首を振る。
いやいや、無理だと思うよ。
なんせ、毛並みといい目、鼻といい、全てが本物みたいだからね。
「でも、僕は作られた犬だよ。人造犬。水斗さんはさ、怪盗やってるんでしょ?」
「なっ、なんで知ってるんだい?僕の名前も・・・・」
「聖夜君から聞いたよ!
僕ね、もともとスパイ活動をしている聖夜君の役に立つために作られたんだ。
でも、今はスパイ業は休業中らしいから、ここにいるの」
「もしかして、凄いことが出来るの?」
「うん。出来る物質と出来ない物質はあるけど、透視が出来る。
それから、人の顔の筋肉の動きを見て、嘘をついてるかいないのかもわかる。
それから・・・・」
「ね、もしよかったら僕の仲間にならないかい!」
「え?仲間?」
「そうだよ、僕の仕事に・・・・」
「ダメだぞ!」
鋭い声が僕の言葉を遮って、一瞬にして姿勢を正す。
「えーじゃんは僕のペットだ。だからダメだ!」
「えっ、僕はペットじゃないよ、相棒でしょ!」
「うん。相棒」
「ペットって言われるのは嫌やもんな、えーじゃん」
「そうだそうだ!」
「あのさ、もう帰っていいのかな?僕、やることあるから・・・・」
そう言って立ち上がろうとした時、聖夜君に腕を掴まれて、逃げることを阻まれる。
「まだやることがあるんだ」
「まだあるのかい!?」
「大丈夫。辛いことじゃないから。行くぞ!」
「行くって、どこに?もう十一時過ぎてるんだよ?」
「僕の部屋だ!」
「ええ~っ」
正直に言って僕は疲れていた。家に帰って休みたいし、それに、やることもある。
でも、それは許されないみたいだ。
聖夜君に連れられてどこかの部屋に入る。
そこにはとても大きなテレビがあって、そこに表示されているのは、ゲーム画面らしい。
「今からこのゲームをプレイする!」
「ええっ!?ゲームするの?」
「そうじゃ。俺が開発したゲームじゃ。楽しいぞ」
そう言うと、なんだか不思議なバンドを右腕と右足につけられる。
「これは?」
「このゲームは、コントローラーが自分じゃ」
「それって・・・・例えば、僕が腕を振り上げたら、
ゲームのキャラクターも腕を振り上げるってこと?」
「そうじゃ。その中に組み込まれてるチップが動作を確認すると、
テレビにその情報を送り込んで、そっくりそのままに動くようになるってことじゃな」
「それじゃあ・・・・このバンドがついている部分しか反応しないんじゃ?」
「そのチップは高性能だから、微細な揺れも感知し、
どこが動いたのかわかるようになっとる。ジャンプも感知可能じゃ」
「へぇ、凄いね」
試しに、バンドをつけていない方の手でパンチをしてみる。
すると、画面の中の主人公も、僕と同じ動作をした。
今度は足。キックをしてみると、キックをした。
「どうじゃ?」
「おおっ、凄い!凄く高性能だね!
さっき、パンチをする際に右手も動いちゃったのに、
ちゃんとパンチをした左手しか反応してないところも凄いね」
僕がそう言うと、聖夜君と変わった口調の人はお互いにグータッチをして喜んだ。
「そう言えば僕、まだあなたの名前を聞いてないんですけど・・・・」
「んなやぼったいことええやん。楽しめれば仲間じゃ!」
「哉代はめんどくさがりだからな。
こんなこと言ってるけど、本当はめんどくさいだけなんだ」
「・・・・えーじゃん。別に」
「ん?マスター、呼んだ?」
「ちゃうよ。今のは普通の言葉じゃ」
「な~んだ!ねえねえマスター、僕もやるから接続してよ!」
「あ~はいはい」
「よしっ。みんなで対戦しよう!」
「ちょっ、待ってよ、僕、このゲームのルールを知らないよ?」
「直にわかるだろうから教えない。じゃ、開始!」
「えええっ!?」
僕が何を言っても、その後は聞き入れてもらえなかった。
昔からそう言うところはあったけど、今回ばかりは酷いと思う。
とは言ったものの、最終的には僕も楽しめてた訳だから、
よかったって言えば、そういうことになるんだろうけどね。