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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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勘違いと思い込みと天然と・・・・

「やった!あがり!」

「えーっ、栞奈さん、もうあがっちゃったの?」

「うん!」


「カードゲーム得意なの?」

「うーん、どうだろ。昔から負けたことはなかったかな。カード運だけはよかったみたい」

「へぇーっ、凄いね」


そんな会話が女の子達の間で繰り広げられている。それがとても嬉しかった。

トランプをやって機嫌がよくなったおかげか、栞奈ちゃんの様子も普段どおりに戻った。


すると、石村さんのお友達さんも、

本当は栞奈ちゃんが怖い子じゃないってわかったみたいで、

普通の友達のように接せれるようになった。それがとても嬉しい。


「ね?僕の言ったとおりでしょ?」


隣に座っている亜修羅にボソッと話しかけてみるけれど、返事がない。

どうやら、こちらは相当ご立腹のようだ。


「怒ってるの?」

「怒ってない」

「じゃあ、どうしてそんなに不機嫌な顔してるの?」

「そりゃ、負け続きだからじゃないか?」


「・・・・俺は、カード運がないんだ。だから、嫌だったんだ」


「でもさ、栞奈ちゃんの悪い印象、取り除けてよかったんじゃない?」

「・・・・まぁ」

「それは誰のおかげ?」

「お前のおかげとは絶対に言わないからな」


僕の言いたいことが直ぐにわかったようで、食い気味に言った。

そんな亜修羅のことが憎たらしくて、後ろに手を回すと、背中をつねった。


「おい!何するんだ!」

「え?何にもしてないよ?」


とぼけてみると、亜修羅は、自分の隣にいる神羅の方を睨んだ。

どうやら、神羅がつねったと思ってしまったらしい。


「お前か」

「は!?俺、何にもやってないですって!」

「嘘つくな!」

「宗介だろ!」

「うっ、ええ?」


「ほらほら、喧嘩しないで。

せっかくみんなでワイワイ楽しくトランプやってるんだから」


「こいつが悪いんだ!それに俺はトランプが嫌いだ。カードゲームが大嫌いなんだ!」

「おっ、落ち着いてください!もう夜遅いですよ?」

「・・・・」


桜っちの言葉に亜修羅は黙り込むと、深いため息をついた後、座り直した。


その時、亜修羅の大声が聞こえてしまったのか、

階段を下りて来る足音が聞こえて来た。


「どっ、どうしたの?何かあった?」

「ううん、大丈夫!修がお騒がせしちゃってすみません。石村さんも、やる?」

「でも、まだプレイの途中じゃないの?」

「大丈夫!もう一度配りなおせば、修もごねることはないと思うから」


「おい、俺はごねた覚えは一度もないぞ」

「いじけたじゃん」


「いじけていたとしても、ごねてはいない」

「認めちゃうんですか・・・・」

「ほら、石村さん、おいで!」

「あっ、うん、それじゃあ・・・・」


石村さんをみんなの輪の中に入れて、再びトランプを配り始めようとした時、

玄関の方でガチャガチャと言う音が聞こえた後、おじいさんとおばあさんが顔を出した。

それを確認した僕らは、一斉に「おじゃましてます」と頭を下げた。


一瞬、亜修羅もやってるかなと不安になって横を向くと、

ちゃんと頭を下げてたからホッとする。

人間界に来て早三ヶ月。ようやく礼儀と言うものを覚えたらしい。


「おい・・・・」


僕の心の声が聞こえたのか、亜修羅の視線を感じる。

だから僕はごまかしの笑顔を浮かべると、ゆっくり目を逸らした。


「お友達が来ていたのかね、ゆっくりどうぞ」

「あっ、でも、もう遅い時間なので、私達そろそろ帰ります。

だから、どうぞお構いなく」


お友達さんがそう言うと立ち上がったので、僕らも、これを期に家へ帰ることにした。


「おじゃましました~!」

「いえいえ、何のお構いも出来なくてすみませんねぇ」


「そんなことありません!

僕達、晩御飯をご馳走してもらっちゃったので・・・・それだけで十分です」


「そうかい、それはよかった・・・・」


「はい。わざわざ見送ってくださってありがとうございます。

それじゃあ、おじゃましました」


わざわざ玄関までお見送りに来てくれた、

おじいちゃんとおばあちゃんにお礼を言うと、家を出る。


石村さんのお友達さんは、石村さんと少し会話をした後、

おじいちゃん達にお礼を言ってから、みんなで家を出て来た。


もう夜も遅いので、「女の子だけで大丈夫なの?」と聞いたら、

「大丈夫!」と返事が返って来た。


「でも・・・・」


チラッと亜修羅の方を見てみる。すると、目が合った。

僕がニコッと微笑むと、首をブンブン振ってそっぽを向いた。ダメか・・・・。


本当は、僕が送ってあげたい気持ちはある。ただ、問題が一つある。

それは、外見的な意味で男の子ってわからないから、

僕が一緒にいても、変な人に話しかけられる可能性が高いってこと。

もしものことがあった時に守ってあげることは出来るけど、

見た目が女の子みたいだから、話しかけられることはあると思う。


前に、僕が一人で歩いてた時、変な人に絡まれたことがあったから。

もちろん、女の子と勘違いされて。

その時は上手くおっぱらったけど、また絡まれるのは面倒だ。

だから僕は、亜修羅に頼んでるんだ。


「それじゃあ・・・・僕が送りましょうか?」

「え?そんな、悪いからいいよ」


「でも、やっぱり女性だけでは不安ですし・・・・。

治安が悪いことはないですが、やっぱり夜も遅いので・・・・」


桜っちがそう申し出た時、亜修羅がため息をついた。


「わかった。俺が送ってやるから。お前らは、さっさと竜のところへ帰れ」

「おおっ、わかってくれたかい、修!」

「確かにそうだと思ったからな」

「いっ、いいの?」

「ああ。行くぞ。出来るだけ早く帰るんだからな」


亜修羅はそう言うと、

アタフタしているお友達さんと栞奈ちゃんを置いて、歩き出してしまった。


僕らは、女の子達が亜修羅のところに走っていくのを見届けた後、

反対側の方向へと歩を進める。


「・・・・なんか、あの様子、女を沢山連れた社長みたいだな?」

「確かに!」

「・・・・うーん」

「あれ?どうしたの?」

「修さんに負担をかけてしまったかなと思いまして・・・・」


「大丈夫だよ!あっ、ねえねえ。

桜っちはさ、夜中に一人で歩いてる時、変な人に絡まれたことある?」


「あっ、はい。昨日、怖い人に絡まれました」

「いや、そう言うんじゃなくて、女の子と間違えられるとか・・・・」

「・・・・ないと思いますけど?」

「えーっ」


驚愕の事実に開いた口がふさがらなくなる。桜っちも、僕と同じようなタイプの子だ。

だからてっきり、女の子と間違えられて、

話しかけられたこともあると思ってたんだけど・・・・。


「凛の方が女っぽいってことだな!」

「そうなんだ!まぁ、落ち込みはしないけど!慣れてるからね!」

「そっ、そうですね!プラスに考えましょう!」


僕らの考えの何かがおかしかったのか神羅が笑うけれど、

僕らはそれについて言及しなかった。


「そう言えばさ、僕達の家、どうなったかな?」

「見てみるか?」

「家の様子も見えるの?」

「ああ」

「じゃあ、お願い!」

「りょーかい。・・・・ん?もう完成してるな」


「え?って言うことは、明日にでも帰るのかな?

亜修羅のことだから、明日にでも帰るって言いそうだもんね」


「そうですね・・・・。

となると、竜さんの家で過ごせる時間は、後わずかってことですね・・・・」


「えーっ!?やだよー!僕、もっと竜君のところにいたい!あそこ、天国だもん!

亜修羅が厳しい変わりに甘やかしてくれるから、天国なんだもん!」


「んなこと言っても、あんまりわがまま言うのはよくないんじゃないか?」

「うーん・・・・。無念!悲しい・・・・」

「そうですね、なんだか寂しいですね・・・・」

「・・・・そうだよなぁ」


しんみりとした空気になって、そのまましばらくの間沈黙が続く。

遠くで車の走る音が聞こえるだけで、それ以外は、ほとんど音が聞こえない。


「・・・・そういやよ、魔界の国宝の片割れ、どうなんったんだよ?」

「え?」

「ほら、凛や明日夏はもらってたじゃんか。魔界の国宝の片割れ」


「ああ、あれね!天華乱爪。

あれね、僕が人間時、もしくは犬神の姿の時には現れない武器なんだよね。

逆に、エンジェルの時は、冥道霊閃が現れないんだけども」


「明日夏のは?」

「はい・・・・。実は、一度も月下遊蘭の姿を見たことがないんです・・・・」

「ええっ!?一体どんな入手の仕方をしたの?」


「えーっと、気がついたら不思議な世界に飛ばされていて・・・・

月下遊蘭と名乗る人と会話をした後、最終的にはその人と戦って、

勝つことは出来たので、認めてもらえたんですけど・・・・。

元の世界に戻っても武器を持っている訳でもなく、

僕の手元にある武器は、雷光銃だけなんですよね・・・・」


「ええっ!?もしかして、その月下遊蘭を名乗った人って、偽者なんじゃない?」


「うーん、どうなんでしょうか・・・・。

武器の形も見なければ、『月下遊蘭』と言う名前も初めて聞きましたし・・・・。

よくわからないんです」


「僕の場合、冥道霊閃は普段の姿でも、意識すれば・・・・ほら」


手に意識を集中させると、今まで姿を消していた冥道霊閃の姿が現れる。

桜っちの方に促してみると、同じように雷光銃は出て来た。

でも、月下遊蘭は何度やっても現れない。


「嫌われてるんでしょうか・・・・?」


「うーん、僕、冥道霊閃と天華乱爪ともに仲良くないけど、操ることは出来るよ?

だから、好きとか嫌いとかは関係ないと思うんだけど・・・・。

亜修羅はどうなんだろう?」


「族長は、国宝の片割れじゃなく、技を受け取ったみたいなんだ」

「ええっ!?なんか、ずるくない?」

「んー、俺は、刀がもらえない代償として技を受け取れたと踏んでる」

「・・・・そんなもんなのかな?」

「だと思うぜ」


「・・・・そう言えば、僕だけ雷光銃と会話してないですよね?」


「あっ、そう言えばそうかもね!

試練って言う試練もなく扱えてるよね、うらやましいね!」


「僕、これから毎日、雷光銃と月下遊蘭に話しかけてみたいと思います!」

「きゅっ、急にどうしたのさ?」


「嫌われちゃってるのかと思って!

だから、毎日話しかければ、きっと姿を現してくれると信じてますから!」


桜っちはそう言うと、小走りで僕らから少しだけ離れると、

雷光銃を自分の顔の高さまで持ち上げて、何かをぶつぶつと話している。


その光景に、僕らは思わず吹き出してしまった。だって、なんだか不思議なんだもん。

でも、桜っちは、そんな僕らの様子には気づいてないようで、

一生懸命雷光銃に話しかけていた。


そんな姿を見ていたら、なんだか寂しい気持ちがなくなって来た。


「あれが、わざとじゃなくて本気だから面白いよね」

「そうだな。天然ってやつか?」

「そうかもね」


神羅の言葉に笑いながらうなずくと、暗く晴れた空を見上げた。


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