誰にも言えない秘密はみんなにあると言うこと
「懐かしいなぁ・・・・」
アルバムをめくりながら無意識のうちにつぶやいていた。
あれから私は、二階の自分の部屋に戻ると、
勉強机にある引き出しの三番目からアルバムを取り出して、
ベットに寝転がりながら見ている状態だ。
下で伊織君のことを考えていたら、きっとバレちゃうだろうなと考えたから、
ここまで逃げて来たって訳だ。
でも、ここまで逃げれば、さすがに心を読まれちゃうことはないよね?
三番目の引き出しと言うと、今日の昼に美香達に覗かれようとして慌てて隠した場所。
あそこには、アルバムが入ってたんだ。・・・・それも、ただのアルバムではない。
「・・・・こんなの、絶対に誰にも見せられないよ・・・・」
ポソッとつぶやいて、仰向けに寝転がる。
アルバムと言うのだから、もちろん、写真をしまってある。
でも、その写真は私じゃない。私は、自分のアルバムを持ってないから。
写真を撮ることが好きだから、
風景や友達の写真は撮ってアルバムにしまってあるけど、
このアルバムはまた別のもの。
うん、ここまで言っちゃえばわかるかもしれないけど
・ ・・・恥ずかしいから、どうしても私の口から言えません!察してください!
アルバムに入っている写真一枚一枚に、私の言葉が添えられてる。
その言葉を読む度に、その写真のシーンが思い浮かぶようだった。
「・・・・あれ?これ、なんの時だっけ?」
それは、「・・・・許してください」とだけ書かれていて、
写真には遠くの方で絵を描いてる伊織君が写った写真だった。
伊織君の服装は制服だから、
きっと学校での出来事だったんだろうけど・・・・何の時だっけ?
周りの景色は校庭とは違う場所らしくて、
並木道の真ん中に座って何かを描いているように見えた。
写真の日付を確認してみると、9月17日だから、
伊織君が転校して来て、そんなに経ってない時だと思う。
この頃は、一生懸命に話しかけても答えてくれないから、
こうやって遠くから撮る写真が多かった。
あれ?なんで写真撮れてるんだろ?
だって、学校の行事だったら、カメラとか持って行っちゃいけないはずじゃ・・・・。
そこまで考えた時、ようやく思い出した。その時の出来事、会話、その全てを。
その時は、年に一度ある写生会の日だったんだ。
休日に集まったんだけど、制服で行かなくちゃいけないって言われてた。
だから、伊織君は制服を着てるんだ。
そして、私がカメラを持っていた理由。
それは、もし時間以内に絵が描き終わらなかった場合、
持ち帰って絵を描けるようにカメラの持ち込みが許されたんだ。
もちろん、伊織君に聞いた「写真とっていい?」って。
そしたら、「ダメだ」って即答されちゃった。
でも、どうしても写真を取りたかった私は、粘った。思い切り粘った。
絵なんかほっぽり出して、ずっと伊織君にお願いしてた。
そしたら、最終的には折れてくれたんだ。
だけど、相当機嫌を損ねちゃったみたいで、
それから何日間かは話しかけても答えてすらくれなくなった。
だから多分、写真の隣の言葉が、「・・・・許してください」とあったんだと思う。
まさか、こんなところで謝ってたなんて・・・・すっかり忘れていた。
思い出したらなんだか懐かしくなって来て、更にページをめくり続ける。
最初の頃の写真は、全て遠目から撮ったり、横顔だけだったり。
とにかく、写ってるだけ奇跡的だなって思えるほどギリギリで写ってた。
それでも私はとても嬉しかった。
11月に入ると、段々と正面の写真や遠くからの写真じゃない数が増えて来て、
私はとても嬉しくなる。写真を見るだけでも明らかに仲良くなっていることがわかる。
そして、一番嬉しかったのが、12月10日の朝の写真。
そこのコメントには、「幸せ絶好調!」と書いてあって、そのコメントを見るだけで、
私の顔にも笑みが浮かぶ。
この日は、初めて私と伊織君がツーショットを出来た日なんだ!
どんないきさつでそんなことになったのかって言うと・・・・。
その日はたまたま用事があって、外に出かけてたんだ。
そうしたら、こちらも一人で歩いていた伊織君を見つけて、私は声をかけた。
その場所は、あの思い出の場所。私が伊織君と初めて出会った横断歩道だった。
声をかけたら、なんだか嫌な顔をされたけど、写真を撮りたいと言ったら、
諦めモードで「どうせ断っても撮るんだろ?」と言って撮影に応じてくれたから、
私はここで、更にわがままを言ってみた。
「一緒に私も入っちゃダメかな?」って。
そしたら、しばらくの無言の後「・・・・しかたない」って渋々応じてくれた。
それでも、私は物凄く嬉しかった!
だって、渋々でも一緒に写真に写ることを許してくれたんだもん!まさに、幸せ絶好調!
あの時に、買い物を頼んでくれたおばあちゃんに対して、
最大限の敬意、そして、感謝を伝えた。
あまりにも私が感謝をし続けるから、おばあちゃんを逆に困らせちゃうほど。
確かに、お礼を言い過ぎたことはある。・・・・でも、それだけ嬉しかったんだもん。
アルバムから写真を取り出すと、ため息をついた。幸せのため息ってやつだ。
思い出すだけで、心が満たされるんだから、私って幸せ者だよね、うん!
大切にその写真をしまうと、空白のページをパラパラとめくる。
その日以来、写真は撮ってない。
カメラを持ち歩いてないこともそうだけど、
写真を撮らなくても、伊織君と仲良く出来てることが嬉しくて、
写真は撮らなくてもいいかな?って思い始めたんだ。
伊織君は、なぜか写真を撮ることに抵抗を感じるみたいで、
最初の頃なんか、絶対に快諾してくれなかった。
しつこく、本当にしつこくお願いを続けて、ようやく快諾をもらえたんだもん。
今から考えると、あの時の私って、相当空回りしてたと思う。
初めて出来た好きな人だったから、どうやってアピールしたらいいのかわからなくて、
随分と空回りをしていたと思う。今思い出すだけで、恥ずかしく思えるぐらい・・・・。
あの頃の私は、本当にめんどくさかったと思う。
暇があれば付きまとって、まるで、金魚のフンみたいだった。
それなのに、伊織君は仲良くしてくれる。
だから私は、伊織君って実は心が広い人なんじゃないかなって思った。
あんなにしつこく言ってても、最終的には私の言葉をちゃんと聞いて、
向き合ってくれるようになったんだから・・・・。
うんうんとうなずくと、アルバムをしまって、お菓子の包み紙を取り出す。
これも、伊織君にもらったものなんだ。
何でも、友達にもらったけど、甘いものが苦手だからって・・・・。
確かに、このお菓子は一口チョコレートだから、
甘いものが苦手な伊織君にとっては宿敵に当たる存在だろう。
・ ・・・とは言え、伊織君からチョコレートをもらえることがとても嬉しくて、
こうして包み紙をとっておいてある訳だ。
「・・・・おかしいのかな?」
深いため息をついた。
美香達がこの引き出しの中身を見たら、なんて言うのかが気になる。
それに、怖かった。
もしかしたら、ストーカーみたいだと思われてヒかれるかなって考えたりしたら、
見られるのが怖かったんだ。恥ずかしいのももちろんある。
でも、そう思われて、せっかく出来た友達をなくしたくなかったんだ・・・・。
その時、ふと昔のことを思い出して、私は首を振ると、昔の記憶をかき消す。
人生、山あり谷ありってね。
いいことばかりじゃないけど、谷を経験するから山が幸せに思えるんだ。
自分に言い聞かせると、枕に顔をうずめた。
・ ・・・伊織君との出会いは、山になればいいと思う。谷にはなって欲しくない。
いつもそう思ってた。
最悪は、自分の気持ちを受け止めてもらえなくたっていい。
友達のままでもいいから、どうか一緒にいて欲しいって。いつも寝る前に考えるんだ。
そうして毎日を過ごしてた。
それは、仲良くなれた今も変わらなくて、むしろ、不安は募る一方だ。
「・・・・ああ、ダメ!バカバカ!」
自分の顔を三度枕に押し付けると、暗いことばかり考えてしまう自分に喝を入れる。
今はダメだ。
「・・・・よし、忘れよう」
すばやく起き上がると、パンと両手を叩く。よしっ、これで忘れた!
気持ちを切り替えると、
暴れまわって乱れてしまった布団を綺麗に戻すと、自分の部屋を出た。