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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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誰にも言えない秘密はみんなにあると言うこと

「懐かしいなぁ・・・・」


アルバムをめくりながら無意識のうちにつぶやいていた。


あれから私は、二階の自分の部屋に戻ると、

勉強机にある引き出しの三番目からアルバムを取り出して、

ベットに寝転がりながら見ている状態だ。


下で伊織君のことを考えていたら、きっとバレちゃうだろうなと考えたから、

ここまで逃げて来たって訳だ。

でも、ここまで逃げれば、さすがに心を読まれちゃうことはないよね?


三番目の引き出しと言うと、今日の昼に美香達に覗かれようとして慌てて隠した場所。

あそこには、アルバムが入ってたんだ。・・・・それも、ただのアルバムではない。


「・・・・こんなの、絶対に誰にも見せられないよ・・・・」


ポソッとつぶやいて、仰向けに寝転がる。

アルバムと言うのだから、もちろん、写真をしまってある。

でも、その写真は私じゃない。私は、自分のアルバムを持ってないから。


写真を撮ることが好きだから、

風景や友達の写真は撮ってアルバムにしまってあるけど、

このアルバムはまた別のもの。


うん、ここまで言っちゃえばわかるかもしれないけど

・ ・・・恥ずかしいから、どうしても私の口から言えません!察してください!


アルバムに入っている写真一枚一枚に、私の言葉が添えられてる。

その言葉を読む度に、その写真のシーンが思い浮かぶようだった。


「・・・・あれ?これ、なんの時だっけ?」


それは、「・・・・許してください」とだけ書かれていて、

写真には遠くの方で絵を描いてる伊織君が写った写真だった。


伊織君の服装は制服だから、

きっと学校での出来事だったんだろうけど・・・・何の時だっけ?


周りの景色は校庭とは違う場所らしくて、

並木道の真ん中に座って何かを描いているように見えた。

写真の日付を確認してみると、9月17日だから、

伊織君が転校して来て、そんなに経ってない時だと思う。


この頃は、一生懸命に話しかけても答えてくれないから、

こうやって遠くから撮る写真が多かった。

あれ?なんで写真撮れてるんだろ?

だって、学校の行事だったら、カメラとか持って行っちゃいけないはずじゃ・・・・。


そこまで考えた時、ようやく思い出した。その時の出来事、会話、その全てを。


その時は、年に一度ある写生会の日だったんだ。

休日に集まったんだけど、制服で行かなくちゃいけないって言われてた。

だから、伊織君は制服を着てるんだ。


そして、私がカメラを持っていた理由。

それは、もし時間以内に絵が描き終わらなかった場合、

持ち帰って絵を描けるようにカメラの持ち込みが許されたんだ。


もちろん、伊織君に聞いた「写真とっていい?」って。

そしたら、「ダメだ」って即答されちゃった。

でも、どうしても写真を取りたかった私は、粘った。思い切り粘った。

絵なんかほっぽり出して、ずっと伊織君にお願いしてた。

そしたら、最終的には折れてくれたんだ。


だけど、相当機嫌を損ねちゃったみたいで、

それから何日間かは話しかけても答えてすらくれなくなった。

だから多分、写真の隣の言葉が、「・・・・許してください」とあったんだと思う。


まさか、こんなところで謝ってたなんて・・・・すっかり忘れていた。


思い出したらなんだか懐かしくなって来て、更にページをめくり続ける。

最初の頃の写真は、全て遠目から撮ったり、横顔だけだったり。

とにかく、写ってるだけ奇跡的だなって思えるほどギリギリで写ってた。

それでも私はとても嬉しかった。


11月に入ると、段々と正面の写真や遠くからの写真じゃない数が増えて来て、

私はとても嬉しくなる。写真を見るだけでも明らかに仲良くなっていることがわかる。

そして、一番嬉しかったのが、12月10日の朝の写真。

そこのコメントには、「幸せ絶好調!」と書いてあって、そのコメントを見るだけで、

私の顔にも笑みが浮かぶ。


この日は、初めて私と伊織君がツーショットを出来た日なんだ!

どんないきさつでそんなことになったのかって言うと・・・・。


その日はたまたま用事があって、外に出かけてたんだ。

そうしたら、こちらも一人で歩いていた伊織君を見つけて、私は声をかけた。

その場所は、あの思い出の場所。私が伊織君と初めて出会った横断歩道だった。


声をかけたら、なんだか嫌な顔をされたけど、写真を撮りたいと言ったら、

諦めモードで「どうせ断っても撮るんだろ?」と言って撮影に応じてくれたから、

私はここで、更にわがままを言ってみた。

「一緒に私も入っちゃダメかな?」って。


そしたら、しばらくの無言の後「・・・・しかたない」って渋々応じてくれた。

それでも、私は物凄く嬉しかった!


だって、渋々でも一緒に写真に写ることを許してくれたんだもん!まさに、幸せ絶好調!


あの時に、買い物を頼んでくれたおばあちゃんに対して、

最大限の敬意、そして、感謝を伝えた。

あまりにも私が感謝をし続けるから、おばあちゃんを逆に困らせちゃうほど。

確かに、お礼を言い過ぎたことはある。・・・・でも、それだけ嬉しかったんだもん。


アルバムから写真を取り出すと、ため息をついた。幸せのため息ってやつだ。

思い出すだけで、心が満たされるんだから、私って幸せ者だよね、うん!


大切にその写真をしまうと、空白のページをパラパラとめくる。

その日以来、写真は撮ってない。


カメラを持ち歩いてないこともそうだけど、

写真を撮らなくても、伊織君と仲良く出来てることが嬉しくて、

写真は撮らなくてもいいかな?って思い始めたんだ。


伊織君は、なぜか写真を撮ることに抵抗を感じるみたいで、

最初の頃なんか、絶対に快諾してくれなかった。

しつこく、本当にしつこくお願いを続けて、ようやく快諾をもらえたんだもん。


今から考えると、あの時の私って、相当空回りしてたと思う。

初めて出来た好きな人だったから、どうやってアピールしたらいいのかわからなくて、

随分と空回りをしていたと思う。今思い出すだけで、恥ずかしく思えるぐらい・・・・。


あの頃の私は、本当にめんどくさかったと思う。

暇があれば付きまとって、まるで、金魚のフンみたいだった。

それなのに、伊織君は仲良くしてくれる。

だから私は、伊織君って実は心が広い人なんじゃないかなって思った。


あんなにしつこく言ってても、最終的には私の言葉をちゃんと聞いて、

向き合ってくれるようになったんだから・・・・。


うんうんとうなずくと、アルバムをしまって、お菓子の包み紙を取り出す。

これも、伊織君にもらったものなんだ。

何でも、友達にもらったけど、甘いものが苦手だからって・・・・。


確かに、このお菓子は一口チョコレートだから、

甘いものが苦手な伊織君にとっては宿敵に当たる存在だろう。

・ ・・・とは言え、伊織君からチョコレートをもらえることがとても嬉しくて、

こうして包み紙をとっておいてある訳だ。


「・・・・おかしいのかな?」


深いため息をついた。

美香達がこの引き出しの中身を見たら、なんて言うのかが気になる。

それに、怖かった。

もしかしたら、ストーカーみたいだと思われてヒかれるかなって考えたりしたら、

見られるのが怖かったんだ。恥ずかしいのももちろんある。

でも、そう思われて、せっかく出来た友達をなくしたくなかったんだ・・・・。


その時、ふと昔のことを思い出して、私は首を振ると、昔の記憶をかき消す。

人生、山あり谷ありってね。

いいことばかりじゃないけど、谷を経験するから山が幸せに思えるんだ。


自分に言い聞かせると、枕に顔をうずめた。


・ ・・・伊織君との出会いは、山になればいいと思う。谷にはなって欲しくない。

いつもそう思ってた。

最悪は、自分の気持ちを受け止めてもらえなくたっていい。

友達のままでもいいから、どうか一緒にいて欲しいって。いつも寝る前に考えるんだ。


そうして毎日を過ごしてた。

それは、仲良くなれた今も変わらなくて、むしろ、不安は募る一方だ。


「・・・・ああ、ダメ!バカバカ!」


自分の顔を三度枕に押し付けると、暗いことばかり考えてしまう自分に喝を入れる。

今はダメだ。


「・・・・よし、忘れよう」


すばやく起き上がると、パンと両手を叩く。よしっ、これで忘れた!

気持ちを切り替えると、

暴れまわって乱れてしまった布団を綺麗に戻すと、自分の部屋を出た。


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