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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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友達です

「それじゃあ、次の質問」

「・・・・え?まだあるのかい?」

「そうだ。まだ気になることは沢山ある。聖夜も気になっていたからな」

「いや・・・・さ、あの、もう時間も遅いしさ、また今度で・・・・」


「ダメだ。このままじゃ、気になって眠れそうにない。

それに、お前は俺に多大なる迷惑をかけたんだ。

これぐらいの質問には笑顔で答える義務がある」


「・・・・はぁ」


最もな理論で水斗をねじ伏せると、俺は再び質問に入る。


半ば強引だと思う人物も中にはいるだろう。だが、俺は嘘を言った覚えは無い。

気になることがあったりすると眠れなくなったりするのも事実だ。

だから、嘘はついてないんだ。


「・・・・おーい、それは無関係だよ」

「うるさい」

「・・・・こんなに反発的な人でもきっと催眠術をかければ・・・・」

「俺は絶対に催眠術なんかかからない。そもそも、怪盗に催眠術なんて必要か?」

「師匠が一応覚えておけって言うんだ。だけど、まだ一度も使った経験はないかな?」

「ふーん。限りなくどうでもいい」

「ちょっ・・・・」


水斗はそれだけ言うと、深いため息をついた。

そして、ふと何かを思い出したようにこちらを振り返る。


「そう言えばさ、メールをやり取りしてた女の子、どうなったの?」

「知らん。それどころじゃなかっただろ?だから、あれからケータイは開いてない」

「確認した方がいいよ!傷ついてるかもしれないじゃないか!」

「別に、もういい。メールは二度としないって決めたんだ」


「・・・・そんなこと言ったって、今後メールを打つ機会は沢山あるだろうし・・・・

それに、友達はどうしたの?ほら、テレビ電話の子達だよ」


水斗に言われて、俺は再び凛達のことを思い出した。

栞奈と会話をしていた時にはどうでもいいと言うような会話を交わしたが、

今、どこにいるんだろうな・・・・竜の家か?


「気になるなら電話した方がいいよ」

「・・・・そうだな」


俺はうなずくと竜に電話をかけた。

すると、第一声に聞こえたのは、子供の大きな声で、とっさにケータイを耳から離す。


しばらくの間子供の騒ぎ声が聞こえたが、

しばらくすると竜の声が遠くで聞こえて来て、やがて普通に聞こえるようになった。


「驚かせちゃったみたいで悪いな」

「これ、お前の携帯番号なんだろ?」

「ああ、そうだけど・・・・勝手に電話に出ちゃうんだよな」

「・・・・話が読めないぞ?なんで子供の声が聞こえるんだよ?小学校みたいだぞ?」

「ん?ああ、まぁ・・・・ちゃんと訳はあるけど、まぁ気にすんなよ」


「・・・・物凄くうるさくて疲れるんだけどな」

「まあまあ。宗介達のこと聞きてぇんだろ?あいつらなら、まだ帰って来てねぇぞ?」

「・・・・そうか」

「電話かけようか?」

「いや、俺がかける」


「ん。多分、修達が帰って来る頃にはこいつらも寝静まってる頃だろうからよ、

ゆっくり休めるぜ」


「それならよかった。それじゃあ」


電話を切ると、深いため息をついた。

俺達の家はまだ直ってないと思うから、あそこに帰ってることはない。

だから、竜のところに帰ってると思ったんだが・・・・。


それなら、どこにいるって言うんだ?


「いなかったのかい?」

「まあな。でもまぁ、あいつらのことだからブラブラほっつき歩いてるんだろ」

「なんだったら、僕がダウジングでも・・・・」

「そう言う類は嫌いだ。最悪は聖夜に頼む」

「・・・・へいへい」


そんなことを話していると、家のドアの方が騒がしくなったかと思ったら、

聖夜と源五郎が顔を出した。


「相変わらず仲が悪そうだな」


「あっ、聖夜君!聞いてくれよ!僕はね、疲れちゃったからもう眠りたいんだ。

普通の睡眠って意味でね。それなのにツンデレ君が寝かせてくれないんだ!」


「うん。修の判断は正しい。僕も聞きたいことがある」


聖夜はそう言うと、隣に立っていた源五郎に目で合図をすると、

俺達の座っている椅子に腰かけた。


「・・・・え?」


「それじゃあ質問。水斗と瑞人は別人格と言うことだが、

一般的に二重人格と言われる人は好みや趣味とかまで変わるらしい。

そのあたりはどうなんだ?」


「うーん、僕の場合は多分一緒だと思うよ?

そう言う意味では、彼は僕から生み出された分裂体みたいなものだからね。

ゼロから作り出された訳じゃない。

僕の要素を引き継いだ形だから、好みと趣味は違わないと思う」


「ふーん、なるほど。それじゃあ次だ。

普通の二重人格は互いの存在を知らないはずなのに、どうしてお前は知ってるんだ?」


「・・・・説明したかもしれないけど、もう一度。彼は僕が生み出した存在だからね」


「普通の二重人格は、嫌な記憶を自分の記憶ではないと思い込むことで

生まれると聞いたことがあるが・・・・それとは違うのか?」


「いや、それは・・・・うーん」

「はっきりしろ!」


ドンと机を叩きながら聖夜が立ち上がると、水斗は困った顔をしたまま黙り込んだ。

その様子を見て、源五郎がゆっくりと口を開いた。


「・・・・怪盗になることが辛かったのか?」

「いっ、いえ、そんなことは・・・・」

「しかし、怪盗になる為の修行が苦痛であったから・・・・と言うことは考えられないか?」

「・・・・」


源五郎の言葉に水斗は顔を伏せ、俺達は何も言えなくなる。

さっきまで責めるように言葉を重ねて来た聖夜でさえも、

空気を読んで黙っているようだ。


「・・・・苦痛であるなら、亜稀に変わってもらおう」

「そんな必要はないです」

「・・・・無理はしていないのか?」


「はい。僕は、怪盗としての活動に誇りを持っています。

修行が辛くないと言ったら嘘になるし、

幼馴染にも本当のことを言えない苦しさってものもありますが、

それを承知でも、僕は怪盗を続けたいんです。

兄さんの代行としてじゃない。自分の意思で、僕はやりたいんです」


水斗の目は今までに見たこともないほど真剣なもので、

その目は、閉じられた源五郎の目を見据えていた。


しばらくの沈黙が流れる。

俺と聖夜は、苦しい沈黙が早く壊れて欲しいと願いながら二人の様子を見ていた。


すると、ようやく源五郎が目を開けたかと思ったら、ゆっくりと立ち上がった。


「その言葉の真剣さ、しかと受け取った。

わしは、お前の負担になっているんじゃないかと疑ったんじゃが、

そうではないと聞けてよかった」


「はい!

・ ・・・それに、そもそも、僕のこれが普通の二重人格とかとは違うこともありますから」


「・・・・原因はわからないのか?」


「まあね。僕自身も気づかないうちに瑞人は生まれていて、

そして、この状況が完成していた。

だから、本当の原因とかはわからないんだ」


「・・・・よし、それなら僕が力を貸そう!」

「え?」


「僕も、お前の人格変化は気になるし、それに、他にも色々謎があるから、

お前が拒否してでも原因をつかみたいんだ」


「それはいい。是非頼もう」


その声は、俺達の中の誰かが発したものではなかった。

不思議に思って周りを見わたすと、水斗の部屋から亜稀が顔を出した。


「兄さん、勝手なこと言うなよ」

「勝手じゃない。そっちの方が都合がいいと思ったんだ」


「喧嘩をしなくても、僕は調べるつもりだからな。

そう言う訳で、水斗をこれから僕の家へ連れて行こうと思うんだけど・・・・

修はどうするんだ?」


「は?」


あまりにもずっと話す機会がなかった為、話しを聞いていなかったのだ。

そんな俺の様子を見て、聖夜がため息をついた。


「僕は、研究をする為に水斗を家に連れて行くつもりなんだ。

本当は修も連れて行きたいけど、時間ももう遅い訳だし、

竜のところに帰るのなら止めようとはしないってことだ」


「・・・・もう遅いって、まだ10時も回ってないぞ?」

「最低でも後5時間はかかる!」

「・・・・俺は帰る。篠崎の家に栞奈がいるから連れて帰らないといけないからな」


半ば、聖夜の言葉を遮るような形で断りを入れると、

聖夜は少しだけ残念そうな顔をしたが、直ぐに首を振ってため息をついた。


「そう言われるのはわかっていた。だから、今度呼ばせてもらうからな!」

「なんでだよ?」


「僕はまだ約束を守ってもらってないし、それに、ゲームがしたいんだ!

とにかく、約束を守ってもらわなきゃダメなんだ!」


なぜだかわからないけれど、

俺が首を立てに振らないといつまでも強引な理論を続けそうな為、折れることにした。

どうしてここまで聖夜に好かれてるのかわからないけど、

あまりにも必死だったから、折れてしまったのだ。


「わかった。でも、俺だって忙しい身だから

いつでもって訳じゃないけど、暇な時だけは相手してやる」


「そうか!あっ、いや・・・・うっ、うむ。わかった。それじゃあこれ」


そう言って差し出されたのは、

手のひらよりも少し大きめなぐらいの黒くて四角い機械みたいなものを渡された。


「なんだこれは?」


「僕の発明品の一つだ。それを肌身離さず持っていてくれ。

それに、僕もそれはいつも持ってるから、簡易のケータイみたいなものだ」


「・・・・そうなのか」


「うん。ミニゲームとして、生物を飼う機能もある。

生物を飼えば、起動する度に出迎えてくれたり

話し相手になってくれるから、楽しいと思うぞ」


「・・・・毎度思うことなんだが、そんな機能、必要なのか?」


「別にいいじゃないか!とにかく、なくすんじゃないぞ!

それは、とても貴重で高等な技術が凝縮して出来た高性能の通信機器だ。

他の誰かが拾ってバレたら大変だ」


「・・・・わかった」


「これは、相手がどこにいても伝わるからな。海外だろうが圏外だろうが平気だ。

それに、電池も永久的に切れない。自分で発電するようになってるからな。

もし、僕の助けが必要になったらクラウディを使ってくれ。

僕のケータイにも繋がるようになってるから、絶対に出られるはずだから」


聖夜の言葉に俺がゆっくりとうなずくと、聖夜は満足そうにうなずき、

上機嫌で水斗を連れて行ってしまった。


「・・・・どうやら、物凄く聖夜に好かれてるようじゃな」

「そうなのか?」

「そうだと思う。俺や源五郎さんはそんなの持ってないからな」

「・・・・」


「そう言えば、帰るんじゃなかったのか?」

「あっ、ああ。そうだな」


「今日は、本当にありがとう。この結果は君のおかげだと思う」

「・・・・どっ、どうしたんだよ、突然?」

「弟を助けられたから、礼を言ったんだ」

「あっ、ああ」


まさか、亜稀からあんなことを言われるなんて思ってもいなくて、

多少は驚いたものの、素直にその言葉を受け入れる。


「もしよかったら、これからもあいつと仲良くしてやって欲しい。

あいつの正体を知ってる人間は少ない。

その中で友達と言う部類の人間は誰一人いないんだ。だから・・・・」


「・・・・まぁ、あいつが拒まない限り、あいつのことは忘れないつもりだ。

友達・・・・かはわからないけどな」


俺が笑いながらそう言ってやると、亜稀も少しだけ笑った。

それを確認すると、俺は源五郎に向かって手をあげた後、水斗の家を出た。


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