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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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心強い味方

目の前が真っ暗で何も見えない。それに、体がとても重かった。


意識が朦朧としていて、何が起こったのか理解出来ないまま、

とりあえずは目を開こうと努力する。


目を開いたところに見えたのは、

いつものように白い天井じゃなくて、木製の・・・・天井?


変だなと思って首をかしげると、辺りを見渡す。

ここは、二段ベットの下の段らしく、左側には誰かの勉強机らしきものが見える。

その上はとてもちらかっていて、ため息をついた。


瑞人と似たような机だな・・・・

世の中には、あんなに部屋を汚く出来る天才がここにもいたんだって、

そんなようなことを考えた時、私はハッとなって飛び起きる。


そうだ!私は、瑞人のことを助ける為に瑞人の意識に入った。

でも、私は、あいつを助け出すことが出来なくて・・・・。


思い出した途端、再び悔しくなって、涙が出て来る。

しかし、直ぐにそれを拭うと、狭い二段ベットから出て来てリビングの方へと向かう。


地下にいこうとしたけど、さっきみたような階段がどこにもなかったから、

誰かに聞いて開けてもらわないといけないんだ。


体調は、睡眠をとる前とはほとんど変わらず、体がとてもだるくて頭も痛い。

まるで、風邪をひいて熱でも出した時のような症状だ。


瑞人の部屋からリビングまでの距離は5、6歩程度なのに、

リビングがとても遠く感じる。

歩いても歩いても近づかない目的地に、そのまま倒れてしまいそうだ。


急に目の前が真っ暗になって、体のバランスが保てなくなる。

目の前が真っ暗になったのは、目を閉じたからではない。

意識が朦朧としている状態の私でもわかった。


「おい、大丈夫か!」


そんな声が遠くで聞こえて、私は受け止められる。

ようやく目の前が見えるようになった今は、

誰が私のことを支えてくれているのかわかった。


「・・・・あれから何分経ったの?」

「お前をここに連れて来てから、丁度1時間近く経過した」


そんな伊織君の言葉を聞いて、全身が冷たくなるのを感じた。

おかげで、朦朧としていた頭も少しだけ冴えて来て、体の感覚も少しだけ戻って来た。


「もう大丈夫、ありがとう。意識が戻って来たわ」

「そうか。それじゃあ・・・・」

「瑞人はどうなったの!?」


伊織君の言葉にかぶせるような形で問う。

すると、伊織君は静かに首を振ると、急に後ろを向けと手で促して来た。


「地下にいこうと思うけど、お前には見せられないから向こうを向いとけ。

聖夜がお前を呼んでたんだ」


「わかった」


いつもなら、意地でも言うことは聞かない。

隠し事をされると物凄く気になるタイプの人間だからね。

でも、今はそんなことを言ってられる状況じゃないから、私はすぐさま後ろを向いた。


どうして、そこまで地下への階段を出現させる術を見せたがらないのかが不思議だ。

確かに、あんなに不思議な機械がいっぱいの場所に、

普通の人が勝手に出入りしたら困るとは思うけど・・・・。


「篠崎、行くぞ」


考え事をしている最中に腕を引っ張られて、私は危うく転びそうになった。

でも、直ぐに体勢を立て直すと、階段を駆け下りる。


「篠崎を連れて来たぞ」


「うん。悪いな、さっきは休んでいろと言ったのに、

また直ぐ呼び出してしまって・・・・」


「ううん。全然平気。そんなことより、瑞人が助かってくれればいいから」


私が言うと、聖夜君はため息をつき、私を椅子へと促す。

椅子の前には机のようなものがあるんだけど、

そこには、マイクのようなものがついていた。

普通のマイクとは違って、なんだかスピーカーのようにも見える。


「これは、意識の中に入ることないまま瑞人と話すことが出来る装置であるが、

まだ実験途中で成功率はかなり低い。

その為、必ずしも声を届けることは出来ないが、

可能性があるならと言うことで使ってみようと思った。

確立で言うと、5パーセントあるかないかだ。それでもいいか?」


「当たり前よ。まだ手があるだけ神様に感謝をするわ。

確立が低くても、きっと繋げてみせる」


「・・・・そうか。花恋ならそう言うと思ってた。

これが僕の中での最終手段で、この先に装置はないと思ってくれ」


「・・・・わかった。あのさ、二人きりになるってことは・・・・出来ないの?」


私がそう聞くと、聖夜君は顔をしかめたけれど、

伊織君に何かを耳打ちされて、仕方なさそうに首を立てに振った。


「左側にあるメーターに反応があったらそのまま続ける。

もし、10分経ってもメーターに異常が見られない場合は、僕達を呼びに来てくれ。

僕は、外でどうにか出来ないかもう一度考えてみる」


「うん、ありがとう。・・・・わがまま言ってごめんね」


「別にいい。

僕達の声が目覚めの妨げになったら困るし、それに何より、恋人の・・・・」


聖夜君がそこまで言った時、

今まで無表情だった伊織君が慌てた顔をして聖夜君の口を塞ぎ、

そのまま部屋を出て行った。


その際、聖夜君の口を塞いでいない方の手でこぶしを握ってくれてたから、

私はそれに答えるようにうなずいた。

言葉には出さなくても、応援してくれてるってことがわかったから・・・・。


「俺や源五郎じいちゃんにとって、最後の頼みは花恋、君だ。

どうか、瑞人の目覚めを手伝って欲しい」


そんな亜稀さんの言葉に、私は無意識のうちにうなずいていた。


絶対に瑞人に声が繋がるかどうかわからない。

そのはずなのに、なぜか、とても自信に満ち溢れていて、大丈夫なような気がした。


「大丈夫です。絶対に」


私が落ち着いた口調で言うと、亜稀さんはゆっくりうなずいてから、何かを投げて来た。

それは、お菓子の箱のようなもので、不思議に思いながらも受け取る。


「さっき瑞人の机を整理してたら出て来た。大切にしてたみたいだぞ」


それだけ言うと、亜稀さんも部屋から出て行った。

それを確認すると、白くて小さな箱を眺める。

中に何が入ってるのか全くわからない。


とりあえずはその箱を机に置くと、

目の前にある不思議な形をしたマイクの前に座り直し、深呼吸をした。


これが、私に残された最後のチャンス。

私は、このチャンスを無意味に使うつもりはなかった。

絶対に、自分の声を届けてみせる。その一心で口を開いた。


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