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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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複雑な構造

「あっ、修。どうだった?」


そう問うて来る栞奈に向かって首を振ると、篠崎を、そのまま近くのベットに横たえる。

多分、ここは水斗のベットだろうけど本人がいない訳だし、

別に文句を言われることもないだろうと、ここに寝かせることにしたのだ。


「・・・・篠崎さん」


「後は、聖夜がなんとかすると言っていた。

あいつはひねくれたことを言う奴だけど、嘘をつくような奴じゃない。

だから、きっとどうにかしてくれるだろう」


「そっか・・・・。あっ、そうだ。修達はご飯どうするの?

私達は結構前に食べたけど、修達はまだ食べてないんでしょ?だから・・・・」


「聖夜が食べると言ってたけど、下で食べるらしいんだ。

だから、悪いが、運ぶものに入れてくれないか?」


「うん、わかった」


栞奈は、文句一つ言わずに料理を運んできてくれた。

そんな栞奈に、なぜだか急に礼を言いたくなった。


「悪いな、いつもわがままばかり言っていて・・・・」

「きゅっ、急にどうしたの!?私、何か変なことでもした?」


なんだか変に気を遣わせてしまったようで、「なんでもない」とだけ言うと、

そのまま地下に下りて来た。

多分、俺がこんな気持ちになったのは、水斗のせいだと思う。


さっきまであんなに元気に馬鹿やっていたのに、今は静かに目を閉じている。

そんな奴を近くで見ていたから、きっと、栞奈にも礼を言おうと思えたんだろう。

命あるもの、いつ、どうなるかわからないからな・・・・。


少々暗い気持ちになって聖夜達がいる場所まで歩いて行く。

中に入ると、まず一番最初に目に入ったのは、

大きなディスプレイに映った、二人の水斗だった。


いや、この表現じゃわかりにくいかもしれない。

でも、水斗と同じ顔をした奴が二人いる。

一人は、今の水斗と同じ服を着ている奴。もう一人はエンジェルの服を着ている水斗だ。


部屋の中に入って一番最初に目に入った光景がこれだった為、

当然のごとく、俺は意味がわからなかった。


「これは、なんだ?」


俺が問いかけると、真剣にディスプレイを眺めていた亜稀と聖夜が振り返り、

この状況を説明してくれた。


「これは、瑞人の記憶の中を映しているディスプレイだ。

さっきは花恋が映ってたのと同じものだ」


「なんで、水斗が二人いるんだ?」

「瑞人は、水斗と同じだろ?そう言うことだ」

「・・・・そうか」


「それより、画面を見ていた方がいい。

もしかしたら、ここで、瑞人の目覚めを妨げている出来事が見えるかもしれない」


「・・・・」


聖夜の言葉に無言でうなずくと、俺も画面を見つめる。


《認めない。・・・・俺は、そんなの、絶対に認めない!》


《・・・・認めたくない気持ちはわかる。

僕だって、君を傷つけたくて嘘をついているんじゃない。

それは、君にだってわかるだろ?》


《わからない!俺は、何も知らない!》


《いや、知ってたはずだよ。

身に覚えの無い出来事が起こっていたり、覚えていたことを忘れてしまったり。

どこかおかしい。そう思ってた。

もしかしたらって、僕の存在に気づいてたんじゃないかな?》


《そんなこと、あるはずがない!

俺は・・・・俺は、エンジェルに憧れてた!慕ってた!

会って話した訳じゃないけど、凄く尊敬してて、凄いなって思ってて・・・・。


・ ・・・それなのに、その、尊敬してた相手って言うのは、俺自身だったのかよ。

俺自身の違う人格に、俺は、憧れを抱いてたのかよ!!》


瑞人が怒鳴った途端、ディスプレイの画面が乱れる。しかし、直ぐに戻った。


《・・・・僕だって、本当は言いたくなかった。

君を傷つけるようなことはしたくなかった。

でも、いつかは言わなくちゃならないってわかってた。

そんな時、君は再び眠りについた。僕は、この時しかないと思ったんだ。


なぜなら、僕と君が会話をすることが出来るのは、意識的な眠りについている時のみ。

意識世界の中でしか、僕と君が出会える場所はない。だから、話すことにした。

そうでなかったら、再び意識的な眠りにつくまで、話すことが出来ないから・・・・》


エンジェルがそこまで話した時、聖夜が焦りの声を出した。


「たっ、大変だ!

瑞人の精神状態が乱れて、リラックス状態に戻ることが出来ていない!!」


「そりゃそうだろう。

あんな話し、急に聞かされて、精神を乱さない奴がいる訳がない」


「どうにかして、エンジェルを黙らすことは出来ないのか?」


「出来ない!エンジェルは瑞人のもう一つの人格。

僕達が黙らせようとして黙らせることが出来るようなものじゃない!」


「くそっ・・・・」


篠崎に言った言葉を思い返して舌打ちをする。

あいつは、聖夜や俺の言葉を信じて眠ることが出来たのだ。

それなのに、その心を裏切るようなことはしたくない。


「どうにか出来ないのか!」


「ここまで精神が乱れていると、Zで回復を図ることは不可能だろう。

こうなったら、直接声を通すしか・・・・」


聖夜がそうつぶやいた時、今までずっとらみ合っていた水斗達に動きがあった。


《今すぐに納得しようとしなくてもいい。

でも、遅かれ早かれ、この事実は伝えるべきだと思ったんだ。

・ ・・・僕はもう消えるよ。君の目覚めの邪魔をしているようだからね》


エンジェルはそう言うと、消えた。魔法を使ったみたいに、急にいなくなった。

しかし、瑞人の心は未だ不安定な状態らしく、メーターがせわしなく動いている。


「これ、どう言う意味なんだ?」


「このメーターは、感情の大きさや、感情の種類までも測れるものだ。

一番上にある振り切れてるメーターは、感情の乱れの大きさ。

その下は、ストレスをどのくらい感じているか。こちらも振り切れているから、最悪だ。

そして、更に下にあるメーター。

左と右に振り子のように動いているメーターは、左が悲しみ、右が怒りを表す。

この状態だと、悲しみと怒りを同時に感じている。よって、現在最悪な状態だ」


聖夜のわかりやすい説明のおかげで、

今の状態がいかに最悪なものなのかと言うことが、理解出来た。


瑞人の混乱は計り知れないものだろう。


実は、自分にもう一つの人格があり、

しかもそれは、自分の憧れていた人物・・・・怪盗エンジェルだったんだもんな。


となると、あいつがエンジェルに憧れていたと言うのは素でのことだったんだな。

花恋達に正体がバレないように演技をしているのかと思っていたのだが、

本当に、瑞人はエンジェルに憧れを抱いていたらしい。


・ ・・・ダメだ。まだまだわからないことが多過ぎる。

そんな訳のわからないことをちゃんと説明してもらう為にも、

瑞人には目を覚ましてもらわないと困る。


「・・・・こうなったら、一か八かにかけるしかないか」

「まだ手はあるのか!?」


「あると言ったらある。

でも、未だ成功例の少ないことだから、成功するとは限らない。

それでも、可能性と言ったらゼロじゃない」


「・・・・それなら、やった方がいいんじゃないか?

やらないよりは、やった方が成功する確率は上がるだろう」


「・・・・わかった。それじゃあ修、一端上に戻って、花恋の様子を見てきて欲しい。

亜稀は、僕の手伝いをして欲しい」


「わかった」


二人同時にうなずくと、俺は地上に。聖夜達は、研究所の更に奥へと歩いて行った。


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