仲間ができた時の安心感は凄いです
「全くもう、一体どうなってるって言うのよ!」
瑞人の意識の中に怪盗エンジェルが出て来るし、そのエンジェルはいつの間にか消えてるし。
なんだかもうわからないことだらけ。だから、そう怒ってみた。
私がこうやって悩んでいる間にも時間は過ぎてしまう。それに・・・・。
ため息をついて、聖夜君に話しかけてみる。
(聖夜君、聞こえる?)
《ああ、聞こえるぞ。どうした?》
(さっき、聖夜君達が見えない中で、私は、怪盗エンジェルに案内されて、
瑞人のある記憶の中に入ったらしいの)
《・・・・そうか。わかった。やってみる》
(えっ、何がわかったの?
私、どうして瑞人の意識の中に怪盗エンジェルが出てくるのかがわからなくて
聞こうとしてたんだけど・・・・)
私がそう聞いても、聖夜君は何も答えてくれなくて、私はため息をついた。
さっきみたいに怒っても、ため息をついても何にもならないことはわかってるけど、
あんな状態で話しをやめられたら、物凄く気になる。
聖夜君は、私がエンジェルの話しをしたら、急にわかったと言って話さなくなった。
それに、やってみるとも言っていた。
やってみるってことは、聖夜君が、故意に操作出来るってことなのかな?
・・・・うーん、そんな訳はないだろうけど、
さっきまでの出来事のうち、一つは、聖夜君が起こした出来事があるはずよね。
「そうそう、正解」
急に後ろから声がして、振り返ると、
忽然と消えてしまっていたエンジェルが、何食わぬ顔でそこに立っていた。
「ちょっ、ちょっと!あんた、今までどこに行ってたのよ!
さっき私が困ってるって言ったら助けてくれるって言ってたのに、急にいなくなっちゃって・・・・」
「ごめんごめん、ちょっと邪魔が入ってね。今度はいなくならないように気をつけるからさ」
「・・・・ばか!!」
なぜだかわからないけど、物凄く安心した。でも、それと同時に物凄い怒りがこみ上げて来る。
でも、それの原因はわかってる。きっと心細かったんだと思うんだ。
「ほらほら、ツンツンしないでデレなさい!」
「うるさい!ツンツンなんてしてないわよ!これが、私の通常運転なんだから!!」
「そう言えばそうだったね。この前に会った時もそうだったっけ?
あっ、そうだ。おまじないは上手くいった?」
そうエンジェルに聞かれて、私は、慌てて後ろを向いた。一気に顔が赤くなるのがわかる。
誘われたのは事実。でも、結局ほとんど一緒にいられなかった。
「失敗よ!あんたのおまじないも、まだまだね」
「あれ?あのおまじないには、かなりの自信があったんだけどな~」
「そんなことよりも!早く!・・・・助けて」
「わかった!もう細かいことは気にしないことにしたんだね。
そっちの方がいいと思うよ、色んな意味で」
「・・・・それって、どう言う意味よ?」
「気にしないんじゃ?」
「・・・・わかったわよ」
私がそう言うと、エンジェルはうなずいて、私の手を掴んだ。そして、そのまま走り出す。
「どこに行くの!?」
「それは、僕にもわからないよ。とりあえず、入れるところから中に入って行くんだ」
「えっ、それ・・・・」
「ほら、あそこを見てみて」
私が言いかけた時、エンジェルが正面を指差す。
私もつられてその方向に視線を向けると、向こう側が眩しい。
それを見て、またさっきみたいに変な場所に飛ばされるのかなって思った。
「あそこは、テストで赤点をとった時の記憶だね。その時の君の言動、覚えてる?」
「・・・・わからないわ」
「君、随分ひどいことを言ったらしい。だから、言い直さなきゃ」
「・・・・」
全く覚えてない。瑞人が赤点を取ることはほとんど毎回だから、どの時のことなのかわからない。
それに・・・・私は、思ってもみないことを口走ることが多い。
恥ずかしいからなのかどうなのかわからないけど、
とにかく、「それは言いすぎだろう」と自分でもわかるほど酷いことを言っちゃうこともある。
だから、そう言う意味でもわからなかった。
「思い出せないのか・・・・。じゃあ、行こう。中に入って思い出してくれるといいけど」
そんなエンジェルのぼやきを聞きながら、瑞人の記憶とやらの中に入って行く。
一番最初に目に入ったのは、思い切りうなだれて机に伏せている瑞人だった。
その姿を見て思い出す。2年前・・・・私たちが中学二年生の時のことだって。
「どうしたの?」
《・・・・今日、赤点とっちまった》
「へぇ、なんで?」
《なっ、なんでって・・・・俺、一夜漬けして頑張ったのに・・・・》
「一夜漬けって・・・・そんなの・・・・」
私が言いかけた時、後ろで黙ってみていたエンジェルが小声で話しかけて来る。
「そんなに責めちゃダメ。一生懸命頑張ったんだよ、彼は」
「そんなこと言ったって、普段から頑張ってれば・・・・」
「許してあげて!」
「・・・・」
《何、一人でぶつぶつ言ってるんだ?》
「えっ、えっと・・・・がっ、頑張ったんなら、それでいいじゃない!今度頑張ればいいんだから!
今回の結果を重く見るなら、次回につなげる糧にしなさい!」
何とかそう言うと、瑞人は大きくうなずいた後、私の手をとった。
その時、私の後ろにいるエンジェルに気づいちゃうんじゃないかなって思ったんだけど、
全く気づいてないみたいでホッとする。どうやら、エンジェルの姿は、瑞人には見えないらしい。
「俺、頑張る!次は絶対100点とるから!そしたら、一緒にプール行こうな!」
そう言う瑞人に向かって私は怒った。
直ぐにプールだの海だの、体の露出が多いところにつれていこうとするんだ。
・・・・まぁ、目的は、私じゃなくて、ほかの女の子達だと思うんだけどね。そこがまた、許せない。
「もう、そればっかり・・・・」
「まあまあ、それも彼のいいところじゃない?」
「・・・・なんでそうやって瑞人をかばうような発言ばっかりするのよ」
私がじとっとした目で睨みつけると、エンジェルは少し慌てた様子で首を振って、
「僕のことはいいから。深い意味なんてないよ」と明らかに怪しい言葉を残して、再び歩き出す。
なんだか不思議なことに、エンジェルと一緒にいると、安心出来る。
どうしてかわからないけど、理由もなく怒ったり慌てたりしなくなる。
それだけが、物凄く不思議だった。