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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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ただの老人ではございません

「なんで、私達はともかく、亜稀さんまで地下に行けないんだろうね。

そもそも、あの子は何なの?凄く生意気な子だった!」


「あいつはいつもああだからな。相手が年上だろうが年下だろうが関係ないみたいだ。

俺にもあんな感じだった」


「ええっ!?それは凄いね!それじゃあ、昔の修とそっくりじゃん!」

「そうだな」


私達がそんな会話をしている間、亜稀さんはずっと黙って、どこか一点を見つめている。

私は、今さっき会ったばっかりだからどんな人だかわからないけど、

多分、心配してるんだろうって言うのはわかる。それに、もしかしたら悔しいのかもしれない。

こんなふうに外で待たされるなんて・・・・。


「あっ、あの・・・・亜稀さん?」

「何か?」

「あっ、えっと・・・・有澤君なら、篠崎さんがどうにかしてくれますよ、きっと」

「・・・・本当は、迷惑をかけたくなかったんだけどな。俺じゃダメって言うなら、仕方がない」

「・・・・」


亜稀さんは、雰囲気がどことなく亜修羅に似ていて、なんだか話しかけづらい雰囲気がある。

ただ、性格はとても優しそうだからいいけど、亜修羅は・・・・。


そう思って、チラッと亜修羅の方を見ると、たまたま目が合ってしまい、私は慌てて目を逸らす。

感じ取られちゃったかもしれない、そう思った。


でも、亜修羅は何も感じてなかったみたいで、小さくため息をついた後、亜稀さんに話しかけた。


「警察には、水斗がエンジェルだってバレてないんだろ?」


「そうだ。だけど、近づいては来てるはずだ。警察だって馬鹿じゃない。

ちょっとでもしっぽを出せば、すぐさま捕まるからな」


「お前の方はバレてないのか?」


「・・・・俺は、わからない。水斗と違って、荒っぽく動いてるからな。

バレるのは時間の問題かもしれない」


二人の会話の内容が全く理解出来ない。

そう思うと、私って、やっぱり除け者にされてるのかなって感じちゃう。

寂しいような悲しいような、二つともと言えるような、そんな感じがする。


「・・・・まぁ、上手くやるさ。師匠ですら捕まりそうになったんだからな」

「そう言えば、じいさんはどこに行ったんだよ。確か、じいさんがいたはずだが・・・・」


「師匠には、さっき連絡してみた。でも、連絡がつかないから、多分、どこかに行ってるんだと思う。

一応留守電に入れておいたから、早く気づけばもうそろそろ帰って来る頃だ思うけど・・・・」


亜稀さんがそう言った時、玄関のドアが思い切りドンドンと叩かれているのが聞こえて、

私達はびっくりする。


「多分、師匠だ。あの人は、インターホンってものを知らないからな」


亜稀さんの言葉に少しだけ笑ってしまうけど、直ぐにその笑顔を引っ込める。

笑っちゃダメだ。今は、有澤君の命が助かるか助からないかの瀬戸際なんだ。

絶対に、笑っちゃダメだ・・・・。


何とか自分に言い聞かせて前を向く。

そこには、なぜか大きな紙袋を三つぐらい持ったおじいさんがいて、私達の姿を見て目を見開く。


「おおっ、友達か!」

「そうです。こちらの方が、水斗を運んで来てくれたんです」

「おおっ、それはそれは・・・・どうもありがとう。亜稀から事情は聞いたかな?」

「まあな。急に倒れたからびっくりしたが、救急車を呼ばないでよかった」

「本当にありがとう・・・・。それで、水斗はどこにいるのか?」


「水斗は地下にいます。でも、聖夜に来るなと言われていて、地下には行けない状態です。

だから、俺たちは何も状況が把握できないまま、地上に残されています」


そんな亜稀さんの言葉におじいさんは険しい顔になってうなずくと、

「ちょっと待っておれ」と言って、地下への階段のある部屋の方に歩いて行ってしまった。


「勝手に行って大丈夫なのか?」

「・・・・大丈夫。師匠は聖夜よりも強いから、きっと許可をとってこれると思う」

「・・・・そうか」


なんだかあまり信じてなさそうな亜修羅を見て、私も同調してしまう。


まだ、そんなに話した訳じゃないけど、あの子は絶対に人の話を聞かない人だと思う。

雰囲気でわかったんだ。

だから、多分、無理だろうなと思いながら待っていると、

おじいさんがこちらの部屋にやって来て、大きく丸を作った。これは・・・・。


「来てもいいそうだな」

「そうだ。わしが脅してやったら、渋々許可を下ろしたんでな」

「だそうだ」

「・・・・じいさん、案外凄い奴なんだな」

「そうだとも。わしは、単なる爺じゃないぞ」

「そうだな、あんたは凄い爺さんだ」


亜修羅の言葉になんだか嬉しそうなおじいさんを見て、私はうんうんとうなずいた。

その気持ち、よーくわかるからだ。


めったに褒めない人が自分のことを褒めてくれると、物凄く嬉しいよね?


そう思いながら、みんなと一緒に地下への階段を下りた。


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