夢の中で夢を見るっていう夢、見ませんか?
(なっ、何!?)
ドスンと落ちた感覚がして、慌てて辺りを見渡す。
しかし、周りは相も変わらず真っ暗闇で、私はそろそろ気が参って来た。
まだ瑞人の意識の中に入ってからそんなに経ってないはずだけど、なんだか疲れてしまったんだ。
それもこれも、あんなものを目にしたせいだ。
全くもう、あの時とっ捕まえて、説教でもしてやればよかったわよ。
ため息をついて立ち上がる。これからどうしたらいいのかわからない。
あれから何度も呼びかけてみたけど、もう瑞人の声は聞こえない。答えてくれないんだ。
だから、私はどうしようもない。何も出来ないんだ・・・・。
「困ってるの?」
突然後ろから聞こえた声にびっくりして振り返る。
そこには、なぜか、怪盗エンジェルがいた。
あいつはエンジェルが物凄く好きだけど、
まさか、エンジェルが意識の中にまで現れるなんて思わなかった。
「・・・・エンジェル?」
ちゃんと呼びかけた。今のは、念じたんじゃない。ちゃんとした言葉だ。
今までは、一生懸命話そうとしても話せなかったのに、今は、普段のように、普通に話せる。
そんな当たり前のことが、今の私にとってはかなり嬉しいことだった。
「そう。困ってるだろうからって、ここに入って来たんだ」
「ええっ!?だって、これは、聖夜君の・・・・」
私が慌てていると、エンジェルは面白そうに笑った。
それがなんだかムカついて、私はフイッと後ろを向いた。
「別に、困ってなんかないわ」
「そんなにツンツンしないでさ、素直になったらどう?」
「・・・・」
「それで、困ってるの?」
「・・・・」
「困ってるって言わなきゃ、僕は助けられないんだよな~。いくらエンジェルと言ったってね」
「・・・・わかったわよ。困ってる。すっごく困ってるわ。今すぐ助けが必要なくらいにね」
私が観念して言うと、エンジェルはうんうんとうなずいてから、手を振り上げた。
すると、今まで真っ暗だった周りの景色が一気に明るくなったかと思ったら、再び違う場所にいた。
さっきはビーチだったけど、今度は公園だ。公園の中に、瑞人が一人でボーッとしている姿が見える。
今度は女の子達といる訳でもないから邪魔しちゃいけないかなって影から覗いていると、
いつの間にか隣にいたエンジェルに、背中を軽く押される。
「なっ、何よ!」
「ほら、行ってきなよ」
「何しに行くのよ?」
「話しかけに行くんだ」
「なんでよ?」
「これは瑞人の記憶なんだけど、この時、君は約束をすっぽかしただろ?だから、今会いに行くんだ」
「意味がわからないんだけど。そもそも、なんであんたがそんなこと知ってるの?」
「それは言えない。でも、僕は嘘を言わないよ。
信じたくないなら別にいいけど、急いでるんじゃないの?」
「・・・・」
痛いところを突かれて、私は渋々瑞人の方に近寄る。
どうしてエンジェルが、私よりも瑞人の記憶に詳しいのかとか、
どうして瑞人や私達のことを知ってるのかとか、
そもそも、どうしてエンジェルはここに来ることが出来たのかとか、色々聞きたいことはあった。
でも、今は急いでるから、今直ぐじゃなくてもいいかなって思って、
とりあえずはエンジェルの言葉に従うことにする。
私が近づいて行くと、瑞人はバッと立ち上がって走り寄って来た。
「おいおい、何分待ったと思ってるんだ?1時間だぜ?1時間!今まで何やってたんだよ!?」
「えっ、えっと・・・・」
エンジェルは、この世界を、瑞人の記憶だと言っていた。
しかし、私と約束をした時だと言ってたから、私も覚えていて当たり前のはずなんだけど・・・・。
これは、いつのことだったのかな?
「ねっ、寝坊して・・・・」
「なんだよ、じゃあ、教えてくれりゃよかったのに・・・・心配したじゃんか」
「ごっ、ごめんね」
私が素直に謝ると、瑞人は目を見開いて驚いた後、
「あっ、まぁ、うん・・・・別にいいけど」と言った。
こんな会話をした覚えは全くない。だから、余計に首をかしげるばかりだ。
《そりゃそうだよ。だってこの時、君は彼との約束をすっぽかしちゃったんだから》
頭にエンジェルの声が響いて来て、私はうなずく。
そう言えば、さっきもそんなことを言っていたような気がするけど・・・・。
《そうそう。人の話はちゃんと聞かないとダメだよ》
「うるさいわね!」
「ん??俺、なんも言ってねーぞ?」
「あっ、えっと、こっちの話だから・・・・」
「んじゃまぁ、いいか。そんじゃ、行こうぜ!」
「あっ、うっ、うん・・・・」
どこに行くのかわからないまま、瑞人の後について行く・・・・と言うところで、目が覚めた。
ううん、目が覚めたって表現はおかしいね。まだ、瑞人の意識の中にいることはわかってるんだ。
それで、エンジェルに案内されて、瑞人の記憶とやらに行って、
すっぽかすはずの待ち合わせ場所に行った。
それで、瑞人の後について行ったはずなんだけど・・・・。
辺りを見渡しても瑞人の姿はないし、エンジェルの姿さえ見当たらない。
でも、ちゃんとはっきりと覚えてる。今さっきまでの会話を。
何だか催眠術にかけられたような感覚で、ボーッとしてる。
《花恋、大丈夫か?》
不意に、聖夜君の声が頭に響いて来て、ようやくボーッとしていたのを振り払うことが出来た。
(大丈夫って言うか・・・・私、ずっとボーッとしてたの?)
《わからない。
僕達は、こっちの世界でお前の見ている景色を見ていたんだけど、
急に画面が揺れ出して、そのまま砂嵐になった。
しばらくの間悪戦苦闘していたら、急に元通りに戻って、今の花恋が映し出されていたんだ》
(そうなんだ・・・・)
それを聞いて、一層不安になる。
もしかしたらあれは催眠かなにかで、しばらくの間、ボーッとしてたんじゃないかって。
(残り何分なの?)
《残り20分。十分経過したな》
(・・・・わかった。ありがとう)
私はそれだけ伝えると、ため息をついた。