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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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一つの重大な秘密

「あれ?鍵が開いてる・・・・」


「多分、急いで家の中に入ったから、鍵を閉め忘れちゃってるんじゃないかな?

とりあえず、入りましょ」


「うっ、うん。そうだね」


栞奈さんと一緒に瑞人の家の中に入ると、鍵を閉めて靴を脱ぐ。

その時、暗くて見えづらいけど、客人の靴置き場に靴が置いてあるのが見えて、伊織君だとわかった。


「伊織君、もう来てるみたい。ほら、リビングの明かりが見えるでしょ?」

「そうだね。話し声が聞こえる・・・・」

「とりあえず、リビングに行こう」


私の言葉に栞奈さんはうなずくと、私達はリビングの扉の方へと歩いて行く。

普段、ここが閉まってるところを見たことがないから、何だか不思議な気持ちだ。

そのせいか、自然と自分の気配を殺して歩いてしまう。


これじゃあまるで、泥棒だなと思いながらリビングの扉に手をかけようとした時、栞奈さんに止められた。


「何だか大事な話をしてるみたいだよ?」

「そうなの?」


「うん。今ね、修の声が聞こえたんだけど、『そんなに外部には聞かれたくない話なのか?』って」


「そう?」


栞奈さんの言葉が気になって、ドアに耳をつけて静かにしていると、

「まぁ、警察、そして、花恋には絶対に」と言う亜稀さんの声が聞こえて、私は眉をひそめた。


警察と聞くと、何か悪い事をしたんじゃないかと思う。

例えば、万引きとか・・・・いや、あいつはいくら馬鹿って言っても、

そこまで馬鹿なことはしないと思うけど・・・・じゃぁ、なんで警察には聞かれたくない話なんか・・・・。


それになにより、私に聞かせたくない話しって何よ!あんた、そんなに変なことしてるわけ!?

と、問いたい。まぁ、本人がいないのに、怒っても無意味なことはわかってる。

でも、何だか物凄く気になる。警察と私が並べられてるんだもん。普通、気になるじゃない。


こうなってくると、悪いことと思いながらも、立ち聞きをしようと決める。

どうでもいい話ならいいけど、もし重大なことでも隠してるんなら・・・・って思ったのだ。


「警察はともかく、どうして篠崎も・・・・」

「それは、瑞人の意思だ。警察はわかるけど、花恋のことは、俺もよくわからない」


亜稀さんの言葉に、私は一瞬耳を疑った。そして、小さな声で、隣にいる栞奈さんに聞いてみる。


「あのさ、さっき、『私に知られたくないって言うのは、瑞人の意思だ』って言ってた?」

「うん。確かに言ってたよ。でも、なんで篠崎さんと警察には知られたくないんだろうね」

「・・・・気になるわ」


ここまで来たら、もう絶対に聞いてやろうと言う気持ちでいた。

だって、あいつの意思で私に聞かせたくないって言うと、

大体私が怒りそうなことばっかりなんだもん。だから、また悪いことでも隠してるんじゃないかって。

そう思ったんだ。


「・・・・そうか。それじゃあ、準備が出来たら話してくれ」


伊織君のそんな声が聞こえた後、しばらくフローリングを歩いている足音が聞こえたけど、

それがやがてなくなり、亜稀さんの声が聞こえ始めた。


「あいつは昔から、ショックを受けると気絶すると言う部分があった」

「それは、みんな誰しもがあることじゃないか?」

「そうだ。しかし、瑞人の場合は、度合いが違うんだ」

「度合い?」


「そう。瑞人は、普通の人よりも心の作りが弱い。

だから、普通の人よりもショックを受けやすく、ショックを受けた時のダメージが大きい。

ショックは、人に精神的なダメージを与えて、そのダメージが大きいと、

記憶を喪失させたり、言葉を話せなくしたりと、色んな悪影響を及ぼす。

と言っても、そこまでの影響が出るには、相当なショックが必要となるだろう。

しかし瑞人の場合、心の作りが弱いから、直ぐにその位置までのダメージを受けるんだ」


「だから気絶するのか?」

「まぁ、そうなんだけど、他の人と違って、気絶することに意味があるんだ」

「・・・・なるほど」


「普通は、ショックを受けたから気絶なんだけど、

瑞人の場合、受けたショックが許容範囲以上になった場合、

その後言葉が話せなくなったりなどの後遺症が残らないように、

脳が自ら気絶するようになってるんだ」


「・・・・と言うことは、あいつの気絶は自然に起きたものではなく、水斗自らが指示を出しての気絶だったのか?」


「そう言うこと。まぁ、正しくは、瑞人の脳が、自分の体を守る為に本能的に動いたと言うような形だ」


「そうなのか・・・・」


亜稀さんの説明を聞いて、私は昔を思い出す。

確かに、あいつは昔からショックを受けると気絶することがあった。

それは知ってたけど、まさか、その気絶は自分で引き起こしてるものだったなんて言うのは知らなかったから驚きだ。


確かにこれは、結構不思議なことだから、他の人には言いたくないってことはわかるけど、

どうして私と警察官が絶対なのかは、まだ予想がつかなかった。


「しかし、もしそうなら、至急ってほど急がなくてもよかったんじゃないか?」


「いや、急ぐ必要はあった。あいつも心が弱いとは言え、直ぐに気絶をする訳じゃない。

相当なショックを受けると気絶をする。

そして、ここからがめんどくさいところなんだけども、

瑞人の気絶は、脳が指示を出して行われている訳だ。

その為、脳がショックを感じ続けたままだと、脳は瑞人を目覚めさせない」


「ショックって言うのは、精神的なもののことだよな?」


「・・・・そうだ。物理的なショックは全く関係ない。気絶している間は、五感が全く働かなくなる。

ということは、音も、感覚も全く感じない。だから、物理的なものや声などにも反応しないんだ」


「そうか・・・・」


伊織君のその声の後、しばらくの沈黙が続いた。

その間は、玄関にある時計の針の音と、自分の心臓の音しか聞こえなくて、とても不安に思えて来る。

自分の心臓の音があまりにも大きくて、みんなに聞こえちゃうんじゃないかって思ったほどだ。

だから、次に伊織君が話しだした時には、今まで感じた中でもかなり上位に入るほどの安心感を得た。


「あの機械はなんだったんだ?」


「あれは、ある人に特注で作ってもらった特別なものだからあまり詳しくは言えないが、

あれは、心を安定状態に戻し、やすらぎを与えるものだ。

瑞人の脳は、心が安定状態になると、目覚めさせても大丈夫だと判断し、

目を覚ますように指示をする。


それじゃあ、次にどうして急がなきゃならないかと言うことを説明しよう。

ショックで気絶している状態が長引くと、脳は段々判断基準を見失う。

その基準と言うのは、心が安定している時のことを指すのだけれど、それを脳が忘れてしまうのだ。

そうなると、脳はこの状態が正常だと判断し、そのまま永久に目覚めなくなって、動かなくなる」


「・・・・動かなくなるって・・・・死ぬってことか?」


「いや。生きてる。心臓とかと言う意味では。

ただ、意識がないから話すことが出来なければ、何も感じることがない。

全く動かなくなり、植物状態と似たような状態になる。それが永久に続く。目覚める事がないまま」


その言葉を聞いて、私は思わず小さな声が漏れた。小さい頃に聞かされた、全く動かなくなること・・・・。

それはやっぱり、永遠に動かなくなるってことだったんだ・・・・。


そう思うと、瑞人がどうなったのかが物凄く心配で、心臓がドキドキして来る。

口から外に飛び出しちゃいそうなほどドキドキしてて、何だか気分が悪くなって来そうだ。


「それは、気絶してから何分以内だ?」


「気絶してから1時間以内にあの装置で精神安定を測らないと、

そうなる確率は50パーセントに跳ね上がる」


「それまでは?」


「それまでは、大体目覚める。

しかし、受けたダメージが大きいと、処置が早くても、最悪な状況に陥る事がある。

俺もよくわからないけど、ある実験結果によると、

瑞人が気絶してから5時間以内に目覚めなかった場合は、そのまま永久に目覚めなくなるらしい」


その言葉を聞いて、私は慌てて後ろにある時計を振り返る。確か、あの時は3時50分だった。

それで今は・・・・。


よく目を凝らしてみるけれど、玄関は明かりがついていないし、ずっと光の差していたリビングを見ていたせいか、全然時計が読めない。

それがとてももどかしくて、私は、ケータイの時計を確認する。

すると、もう4時40分になっていた。

3時50分が気絶した時間だとすると、間に合わなくなるのは、8時50分。

今は4時40分だから、残り3時間20分・・・・。


「篠崎さん・・・・」

「私、どうしよう・・・・」


小声でそう呟くと、涙が出て来そうになる。それに、物凄く苦しい。

でも、声を出すことが許されない為、唇を噛んで出てきそうな色々なものを堪える。


「そうは言っても、気絶してからここまで来るのに、かかったとしても30分ぐらいだろう。

それなら、目覚めなくなる確率はまずないだろう。

しかし、もう直ぐ装置をセットしてから一時間が経つ。

もうそろそろ目覚めてもおかしくない時間なんだが・・・・」


そう言って、亜稀さんが立ち上がったのがわかる。

その後伊織君も立ち上がって、何かを話しているけれど、

さっきの話し声よりも遥かに小さな話し声で、全く聞こえない。


瑞人のことが気になってるのと、何を話しているのかが気になったから、

自然と耳をドアに押し付けていた。

すると、足音がこちらに近づいて来るのが聞こえて、私達は一気に慌てる。


「どうしよう?」

「多分、玄関に近い側に座っていたのは亜修羅で、ずっと私達の存在に気づいてたのかも・・・・」

「ええ!?そんな・・・・」


私達がそんな会話をしていた時、今まで閉ざされていたドアが開いて、

何だか真剣な顔をした亜稀さんが見えた。


「聞いてたのか?」

「・・・・」


かなりの威圧感に、私達は首を縦に振ることしか出来なかった。

そんな亜稀さんの表情は見たことがなかったからだ。

でも、怒ってないみたいで、直ぐにため息をつくと、ドアを開けてくれた。


「聞かれてしまったのなら仕方ない。悪気はなかったんだと思う。

ただ、心配をかけたくなかっただけだと思うから」


「・・・・わかりました」


亜稀さんの言葉にうなずくと、亜稀さんもうなずいて、ついて来いと言うように手招きをした。

私と栞奈さんが不思議に思いながらその後をついて行くと、瑞人の部屋にたどり着いた。

しかし、そこに瑞人はいなくて、私は不安にかられる。


「あの、瑞人は・・・・」


私がそう言った途端、亜稀さんが私達に後ろを向くように言ったかと思ったら、栞奈さんに目をふさがれた。


「なっ、何!?」

「ごっ、ごめんね篠崎さん、修に無理やり動かされて・・・・私も今前見えない・・・・」

「俺も悪気はない。でも、見せられない」

「ちょっ、どういうこと!」


私がそう怒った時、ようやく目の前が見えるようになって一安心したかと思ったら、

目の前に見覚えのない階段が現れて、私は思わず目を疑う。

目を瞑っている間に、違う人の家にワープしてきちゃったんじゃないかと思うけど、

部屋の様子は目を塞がれる前とほとんど変わっていなかった。ただ一つ、突然現れた階段を除いては。


「これは??」

「気にしなくていい。魔法だ。行こう」


何だか亜稀さんらしくない言葉だなと思いながらも、とりあえずは後をついて行く。

瑞人の部屋にいないってことは、他の部屋にいると言うことで、

この意味のわからない地下室に瑞人がいるのかなと思ったんだ。


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