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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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大事なこと

「それじゃあ、ここに寝かせて」


亜稀の指差す手術台らしきところに水斗を寝かせると、俺はそのまま一歩後ろに下がる。

水斗を寝かせたのは、ベットと言うには少々固く、

手術台と言うには、少々機械が多い不思議なものだった。


普通の手術台ならライトのある位置には、

まるで美容院にあるパーマをかける機械みたいなものがある。

まさか、この状況でパーマをかけるって言うんじゃないだろうな・・・・。


そんな風に疑っている俺には目もくれず、

亜稀は、俺の考えていたその不思議な機械を水斗の頭に取り付けた。

その姿は、まさにパーマをする時と大して変わらず、あまり緊張感のない姿だ。


このピリピリとした空気には似合わないその格好に、

俺は不謹慎ながらも少し可笑しいと思って笑いそうになるが、

亜稀はいたって真剣で、水斗に被せた機械のコードを伸ばし、近くにあったやっぱり変な機械に繋ぐ。

それは、聖夜の家にあるものと似たようなもので、

もしかしたら聖夜が作ったものなのかと首をかしげる。


色々気になることはあるが、今話しかけても亜稀は、絶対に答えてくれないだろうなとわかっている為、俺は、亜稀の動きが止まるまでその答えを聞くのを待つ。


亜稀は、ひとしきり機械を触ると、ふぅとため息をついて俺の方を振り返った。


「とりあえず、これで大丈夫だと思う」

「・・・・そうか。ならよかった」


俺がそう言って出て行こうとすると、なぜか、亜稀が呼び止めて来た。


「聞かなくていいのか?」


「・・・・まぁ、聞きたくないと言ったら嘘になる。

でも、何だか普通の病気って感じじゃなさそうだしな。

外部の人間である俺に話していいような内容じゃない気がする」


「もう、俺が堕天使だって知ってる訳だ。十分、部外者じゃない」

「・・・・じゃあ、教えて欲しい」


俺の言葉に亜稀はなぜか満足そうにうなずくと、さっさと地上への階段を上って行ってしまった。

残された俺は、不思議な機械に繋がれた水斗のことをじっと見る。


普通の気絶程度なら、救急車は呼ばない。それに、至急連れて来いと言うこともないだろう。

しかし、水斗のこの症状が、難病か何かだった場合、普通なら家よりも先に救急車だ。

この矛盾した出来事であるからこそ、俺は、あんな反応をしたのだ。


通常、救急であれば、大体病院に連れて行くのが正しいだろう。

まぁ、例外として貧困で悩んでいたりしては別だが、

こいつのうちは、金持ちって訳ではなさそうだが、貧乏でもないはずだ。

となると、病院に連れて行くはずだ。しかし、病院に連れていかない。

と言うことは、病院に行ってはいけないような何かがあるんだと思う。

それか、単に病院に行っても無駄・・・・いや、もしその場合だったら、

家で色々やっても無駄だからな。やっぱり、前者の方か。


「どうでもいいけど、早く目覚ませよ」


気絶をしているから聞こえないはずではあるけれど、なぜか声をかけていた。

いつもなら、そうする奴に「聞こえない」だのなんだの言う側の人間のはずなのだが・・・・。


何だか余計なことばかり考えてしまう自分に首を振ると、リビングに戻った。


「話は長いのか?」

「長いって言ったら長い」

「・・・・まぁ、それでもいいか」


「瑞人が目覚めるまでには終わるはずだから」

「・・・・それって、何分後だよ」

「早くても一時間後」


そんな亜稀の返しに、俺はただため息をついた。

これは、こいつなりのジョークなのか、それとも本気なのかわからないが、

どちらにせよ、さっきよりも余裕が感じられる。


「・・・・出来るだけ完結に、わかり易く話してくれ」


俺がそう言ってリビングの椅子に座ると、

亜稀は無言でうなずいて、なぜか部屋中の扉や窓を閉め始めた。


「そんなに外部には聞かれたくない話なのか?」

「まぁ、警察、そして、花恋には絶対に」

「警察はともかく、どうして篠崎も・・・・」

「それは、瑞人の意思だ。警察はわかるけど、花恋のことは俺もよくわからない」

「・・・・そうか。それじゃあ、準備が出来たら話してくれ」


俺が言うと、亜稀は窓と扉の最終チェックを終え、ソファーに座ると、ゆっくりと話し出した。


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