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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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緊急のことらしいです

「よし」


何とか近くにあった児童公園まで水斗を運び終えると、次に、意識確認をする。

水斗が倒れた場所は道路のど真ん中だったため、一端児童公園に連れてきた方がいいと思ったのだ。


「聞こえるか?」


そう声をかけて頬を何度か叩いてみるが、全く反応が無い。どうやら、完全に気絶しているらしい。一応脈はあったから、救急車を呼ぶまでもないと思う。

ただ、急に倒れた辺りを考えて、やっぱり救急車を呼んだ方がいいのかと迷ったが、

救急車よりも、俺が全力で走った方が明らかに速いことを思いだし、水斗を背負う。


その時、一枚の紙が地面に落ちて、それを拾ってみる。

それは、「緊急連絡先」と書かれカードのようなもので、そこに電話番号と携帯番号が書いてあった。

それを隅々まで見て行くと、水斗の名前が書いてあった為、これはこいつのだと確信する。

そう言えば、このようなカードを生徒手帳に入れておけと配られたのを思い出した。多分、あのカードだろう。


どうしてそのカードを私服である水斗が持っているのかわからないが、

とりあえず今は緊急のため、そこにかかれた電話番号に電話をしてみる。


何回かのコールの後、聞き覚えのある声が聞こえた。これは確か、水斗の兄、亜稀の声だ。


「はい、有澤です」

「緊急の連絡だ。水斗が倒れた。どうしたらいい?」


俺がそう聞くと、電話越しに、小さく息を吸う音が聞こえた後、直ぐに慌てた様子の声が返って来た。


「どちら様かわかりませんが、至急、カードに書かれている住所に運んで来ていただけませんか?」


「わかった。十分で移動が完了する」

「あっ、絶対に救急車は呼ばないでくださいね」

「わかった」


どうして亜稀が救急車を呼ぶなと言ったのかわからないが、一番最初に救急車を呼んでなくてよかったと思う。というか、俺以外の人間なら、大抵は救急車を呼んでると思うんだけどな。


「よかったな、俺じゃない奴がお前を発見してたら、お前は今頃病院行きだぞ」


気絶している水斗にそう声をかけると、至急と言うことで、水斗を背負ったまま木を上り、そのまま近くにある家の屋根に飛び乗ると、久しぶりに妖狐の姿に戻る。さすがに、人間の姿のまま屋根の上を飛び回るのはキツいと判断したのだ。


まぁ、どっち道屋根の上を走っていく訳だから、どうせ誰にも見られないからいいだろうと思った結果だった。


しかし、それなりのリスクはある。屋根の上とは言ったって、要は上を見上げてしまったら俺の姿は見えるからな。ただ、地上では信号や人通りが多くて思うように走れないのだ。だから、俺達妖怪は、緊急の時は屋根の上を走る。こうすれば、道も何もない訳だから、行き止まりどうこうなんて関係ない。最短距離で行ける訳だ。よって、通常なら30分かかるところを、5分程度でいけることだってある。その分リスクは出るが、この際そんなことは言ってられないだろう。


嫌な予感とかがする訳ではないのだが、なぜか、急がなきゃいけないと思っていた。

いつもなら、こいつのために妖怪の姿になって本気を出すこともないだろうにな。


そんなことを考えながらも、宣言したとおりの十分後に水斗の家に到着した。地面に下りる前に人間の姿に変わると、屋根から飛び降りる。一応、人間の体で飛び降りれる高さの範囲は把握している。水斗の家は二階建てだから、普通に飛び降りても大丈夫だと判断したのだ。


しかし、大丈夫だとは言え、それなりの衝撃が体にかかる。それは、俺に背負われている水斗も同じはずだ。その為、運んでいる間に目を覚ますんじゃないかと思っていたのだが、水斗は相も変わらず気絶したままだ。


それを見て、自然とため息をつく。もしかしたらこいつの症状は、俺が思っているよりも重いものなのかもしれないと思ったからだ。


インターホンを押して、そのまま静止する。至急来てくれと言っていたから、てっきり早く出て来るものだと思っていたが、亜稀は中々出て来ず、しびれを切らして、左にある窓から家の中に侵入してやろうと方向を変えた時、ようやくバタバタと言う音と共に、亜稀が扉を開けた。


「至急って言ってた割には、出るのが遅かったな」

「・・・・どこかで会った顔だ」

「昨日、聖夜と一緒にいた。お前の正体を知ってる奴」


「ああ、そうか。知り合いか。それなら都合がいい。急いで地下へ来てくれ。扉は開けてあるから!」


亜稀はそう言うと、俺の言葉も聞かずに部屋の奥に入って行ってしまった為、俺もその後を追うことにした。


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