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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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休憩タイム デパート最高!!

階段を上った先に見えたのは、大きなショーウィンドゥだった。と言うか、そこ以外に沢山のショーウィンドゥが並んでる。都会の奴らは、ショーウィンドゥが好きなのかと思う程だ。


「ああ、ここはつまんないな」

「じゃあ、三階に行くか?」

「あったり前じゃん♪」


階段を上った瞬間にそう呟いたかと思ったら、また階段をダーッと駆け出す。引っ張ってもらってるから楽なのだが、凛は疲れないだろうか。


三階に到着。確か、三階は婦人服売り場。二階よりも(二階は紳士服売り場)縁がないだろうと思って、上に行くのかと思ったら中に入って行く。


「おい、バカ!ここは婦人服売り場だぞ?」

「いいの」


何がいいのかわからないけれど、取りあえずついて行く。


こいつ、いつも女ものを着てたのかと思っていたら、凛の目的地が違うことがわかった。


「僕、ここに行きたかったんだ」

「何だよ、朝からこんなのを食ったら腹壊すぞ?」

「大丈夫、胃は丈夫だもん」

「じゃあ、買って来いよ」


財布を渡してその場にとどまった俺を見て、凛が引っ張る。


「亜修羅も来るの!」

「俺は朝からそんな甘い物は食いたくない!」

「だから、買わなくてもいいから」

「じゃあ、何で俺がついて行く必要がある?」


「だって、買い方わからないんだもん」

「桜木がいるだろう」

「桜っちだって、ほとんど知らないって言ってるよ」

「嘘だろう・・・・」


そうは言ったけど、凛は嘘ついているようには見えない。凛はともかく、桜木も経験がないって・・・・今までどうやって生きて来たんだよ。凛なら何とか生き延びていられそうだけど、あいつは普通の人間なんだし。


「そう言うことだからさ、よろしく!」


気を抜いたところを引っ張って行かれる。六時に出て来て、六時十分発の電車に乗ったのに、店内にある時計は九時を回っていた。随分時間が経ったようだ。


そう思うと、俺達が住んでいるのがどれだけ田舎なのかと言うことがわかるな。


凛が来たのは、婦人服売り場の一番奥にあるアイスクリームが目的だったらしい。


俺だったら絶対腹を壊すと思うのだが・・・・。


店員は、俺達を見て少しいぶかしんだが(今は学校の時間だからな)、すぐに接客を始めた。


「なにするんだよ?」

「・・・・」

「おい」


「・・・・」

「お連れのみな様は、あちらにいますけど・・・・」


店員に言われて振り返る。二人は後ろにはいず、店の奥にある大きな看板を見上げていた。


子供だな、あいつらは本当に。


「おい、なにするんだ?」

「何でもいいよ!桜っちも僕と同じ!」

「いや、悪いからいいですよ」


俺は、凛の言葉を聞いて、桜木の言葉を聞く前に、取りあえず頼んだ。あいつらの好みなんか知るか。あいつらが自分で決めないのが悪い。


「お待たせしました。五百六十円です」


電車に乗った時にかなりくずれたから、何とか大量のおつりをもらうことはなかった。しかし、また、店員に不思議な目で見られた。と言うか、驚きの目か。


金を払うと、さっさと受け取り、二人を引きずり出してから、やっと話した。


「何見てたんだよ?」

「おっきなアイスだよ!コーンの上にアイスが五個乗ってた!!」

「そうか、でもそれはソフトクリームだ。五段になんかしたらくずれるぞ」


「このデパートの中にあるんだって。だから、後で行こうよ」

「まだ食うのか?」

「後でって言ってるでしょ!」


後でと言ったって、俺にとっては驚愕だ。どうしてそんなに甘い物を食べられるのか不思議なくらいだ。気持ち悪くならないのか?


「さぁ、行こう♪」

「まだ食ってるだろう?」

「時間がもったいない。それに、ここに立ってるのは邪魔だしね」


「落としたって知らないぞ」

「平気平気♪ちゃんと歩くから」


凛はズンズンと歩いて行く。仕方がないからついて行くが、危なっかしいんだよな、思い切り。


売り物の服にアイスクリームをつけそうになったりする。


金を払うのは俺だと言うことを自覚してもらいたい。


四階は、子供服とゲームを売っている階だった。それを見て、凛がはしゃぐ。きっとゲーム目当てだろうな。


「おい、そんなにはしゃぐな。落とすぞ」

「じゃあ、亜修羅が持っててよ。ちょっと遊んで来る。桜っちもね」


凛と桜木の分のアイスを無理矢理持たされる。桜木は、半ば強引に引っ張られて行ったが、実際にゲームをしているのを見ていると、まんざらでもなさそうだ。


あまりにも二人が楽しそうだったから、少し気になって覗いてみた。そこには、おどろおどろしい建物に、ゾンビが徘徊している。まるで、バイ○ハザードみたいだな、これ。


「おい、そんな気色悪い生き物をぶち抜いて、面白いのか?」

「出来ると楽しいよ。何と言うか、快感♪」


ゴキブリは怖いくせに、こんな生々しいゾンビをぶち抜くことは快感らしい。


凛のことを気に入っている読者のみなさん、凛はこう言う恐ろしい奴だ。それだけは言っておこう。


「亜修羅、今変なこと言ったでしょ?僕は、ゾンビをぶち抜くことが楽しいって言ってる訳じゃないよ。ただ、倒せた時が快感って言うんだよ。ほら、ラスボスを倒した時の快感と同じようなものだよ」


後ろを向いて考えていたのに、凛に考えを見透かされた。画面に集中しているはずなのに・・・・。なぜ?


「僕は、ちょっと怖いんですけど・・・・」

「そう言いながらやってるな」

「そうですね、僕はちょっと怖いのでやめさせてもらいます」


桜木は、真っ青な顔で、俺からアイスクリームを受け取る。そんな顔で食っても、余計気分が悪くなるだけだぞ。


「じゃあ、僕もやめたっと。あっ、あっちにもある!」


凛が走って行った方向にあったのは、モンスターを倒して行くと言うような奴だ。所謂、ロールプレイングゲームだな。


「おい、凛!もうそろそろやめろ。時間がなくなるぞ。ここで遊んでたら、ゲーセン行けないぞ」

「それはまずい!」


何がまずいのか・・・・。とことん凛の思考は理解しがたいが、取りあえず、ゲームをやめてくれたことはよかった。


しかし、五階に行く前に凛が何かを発見した。その目線の先にあるのは、また食い物屋。どんだけ食い意地が張ってるんだ。


「僕、お腹空いたから、あそこに入ろう?」

「そうですね、さすがにお腹も空きますね」

「まぁ、確かにな」

「じゃあ、行こうよ」


自分も腹が空いてるから、今度はすんなりと凛に同意した。


そこは、ファーストフード店で、朝だからか、客はほとんどいない。朝食とも昼食とも言えない時間帯なら、当たり前か。


店に入り、注文をしてから品を受け取り、近くの椅子に座る。


「おい、その高い壁はなんだ?」


俺の目の前に立ちはだかる壁を指差す。


隣の桜木は、すでに包みを開けて、ハンバーガーにかじりついているから、全く気づいていないようだ。


「壁・・・・ですか?」


俺の言葉に、初めて前を見る桜木。そして、目の前の壁に仰天する。


すると、その壁が崩れて凛の顔が見えた。


「壁じゃないよ、美味しそうなハンバーガーだよ!」

「お前、何個頼んだんだよ」

「二十個」

「二十個!?」


普通に言う凛に、驚きを隠し切れない桜木。


俺は、驚きを通り越して呆れていた。こいつ、絶対太るぞ。


「お前、体重いくつだ?」

「四十」

「嘘つくな、五十はあるだろう」

「そんなにないもん!」


「あの・・・・多分、凛君はそんなにないと思うんですけど・・・・」

「そうだよ、じゃあ、亜修羅はどうなのさ!」

「おっ、俺は・・・・秘密だ」

「何でさ」

「うるさい!」


凛に教える必要はない。個人情報は絶対に他人に言うなと言われてるし(これは少し違うが)、それに何より、自らの体重を把握していないから、いくら聞かれたって、答えられる訳がない。


「そう言えば修さんは知らなかったですよね、凛君の食べる量。僕は学校でいつも見てるんですけど驚きますから、初めて見る修さんはかなり驚いたと思います」

「まぁ、そうだね。大体の人は驚くけどさ、これくらい食べないとお腹がたまらないんだよね」


話す時すらも、口を動かしモグモグと食べ続ける凛。凄い食欲だ。育ち盛りと言ったって、これは食い過ぎだと思うぞ。同い年の桜木は一個だけだし。


「じゃあ、行こう」


最後にコーラを飲み終わると、席を立つ凛。俺は食べ終わっていたけど、桜木は何だかもたついている。


「桜っち、頑張れ」

「はい・・・・」


・・・・もしかして、こいつは小食なのか?凛は大食い。桜木は小食・・・・まともなのは俺だけか。


桜木は、何とかと言った様子でハンバーガーを飲み込むと、ため息をついた。


「よっし、次行こうか♪」


あんなにも食った後なのに、すばやく動ける凛を凄いと思うが、言うことはしない。


「待ってください、あんまり早く動けません!」

「早く!早く!」

「待て!」


走って出て行く凛を、俺達は慌てて追いかけた。


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